タイトル未定に追加予定
一瞬俺は目の前の光景を理解する事が出来なかった。
確かに俺の身体は炎となっておりほぼすべての物理や斬撃等は、水属性を付属されたり周辺を真空にされない限り効かないはずである。
であるにも関わらず目の前の魔族の女がその手に持つ刀を一振り、俺の身体へ振るうだけでそれが当たり前であるかの様にその女が振るった刀の軌道上にあった俺の腕はいとも簡単に切り落とされた。
「は?」
そんなはずは無い。
炎化した俺の身体があの細い刀一つ、それも力も何も入れていない軽い一振りで自分の腕が切り落とされる訳が無いと自分の頭は思うものの地面には確かに俺の腕が切り口から血を流しながら転がっておりおれの右腕があるはずの部分には肩より先、炎が無かった。
「何をそんなに驚いているのですか?まさか、このクロ様より頂いたこの刀が貴方程度の腐った炎を切れないとでも思っているのですか?あほらしい」
「そ、そんな事が起こるはずが………」
俺の問いかけを無視して「それに」と目の前の魔族の女は続ける。
「あなたのその言動や行動、そしてあえて私の斬撃を避けなかった事からあなたは普段から弱者を捕まえて嬲り、そしてわざと攻撃を喰らいそれが無駄であると見せつけているのでしょう?今度はその立場が逆になっただけではないのですか?まさか、今まで散々行ってきた事がいざ自分に降りかかって来たからと言って嫌だとは、言いませんよね?」
そういうと魔族の女は刀を軽く振るい、今度は俺の左腕を切り落とす。
なぜ俺の腕が切り落とされているのか理由など分かるはずもなく、そして今その理由が知れた所で両腕を切り落とされた今の俺に何ができると言うのだ。
立ち向かった所で俺の両腕同様に簡単に切り裂かれて終わりである。
今度は腕ではなく身体を。
そう脳内で予測した俺は考えるよりも早く逃げた。
ただただ目の前の魔族の女から遠くに離れたくてがむしゃらに逃げた。
その感情が恐怖だと知って魔族の、それもまだ幼さの残る女性が原因である為俺のプライドがそれを許さず内から怒りが込み上げてくる。
しかしそんな感情よりも恐怖の感情の方が圧倒的に勝り込み上げてくる怒りなど一瞬にして霧散していきプライドなどと言うもはや邪魔でしかない感情は捨て去るしかなかった。
「あら、良い顔になっているじゃない。あなたも見てみる?」
「ひぃっ!?」
俺は本気で逃げたはずだ。
なぜこの俺を見失わず追いかける事が出来るのか理解できないがもはや俺の脳は理解する事すらできない程に追い詰められていた。
なぜなら目の前の魔族の女性が出した手鏡み映る俺の表情は、まさに俺がいつも遊んでいる魔族達が見せる最高の表情、それと同じであったからである。
そして俺は逃げるのを辞めた。