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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第六章
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里帰り◆【落書き・ゴールドシップ】

「帰って来てるけど何? アンタに関係ないでしょ」


 そう、こいつには関係ないのだ。

 むしろどの顔下げて来たのか。

 コイツは自分がした事を考えればまず来れる筈が無いのである。

 今こうしてここに来ていると言う事が、コイツがどうしようもない程に自分の事しか考えていない事が手に取るように分かる。


「いや、俺たち婚約者じゃないかっ!」


 そして言うに事欠いて未だにコイツは婚約とほざきやがる。

 久しぶりに怒り心頭になりそうなのをグッと堪える。

 ここで自分の感情を制御出来ずに喚いた所で何の解決にもならないし、何よりクロの隣に立ち恥ずかしく無い女性になりたいと思う。

 そう思えば自然と我慢も出来る。


「元! ですっ、も・と。もう貴方と私は他人ですのでどうかお引き取り下さい」

「なんでだっ!? 君は僕のことが好きだったんじゃないのかっ!?」

「確かに、昔は貴方と結婚しても良いかなと思った時もありました」

「だったら何故そんな事を言うんだっ!」


 確かに、この獣人とは一時であれ良いかなと思った事も確かにあった。

 しかし、コイツは裏で私の事を罵っていたのだ。


「汚らしい雑種、獣人にも人間にもなれない中途半端な存在。ハーフでも無いくせに獣人として生きようとするいやらしい存在」

「な、何を言っているんだ?」

「全て、貴方が私の居ない所で言った言葉ですよ」

「まさか、あんな言葉を信じているのかい? あれは本心じゃないさ。ほら俺の目を見てご覧よ。そんな事を言うような目には見えないだろ?」


 あの時影で言われていた言葉をそのまま口にする。

 しかしながら彼は、この黒い毛並みの狼形の獣人は私の言葉を聞いてもへらへらと取り繕うとする。


「そうですね、醜く汚れた欲望の塊が見えますね」

「………手荒な真似はしたくは無かったが、少し躾をしなきゃいけない様だな」

「そうやって言う事を聞かない女性には暴力を振るうと言う事も調べれば直ぐ手に入ったのですが、あれから何も変わっていないようですね」


 そう言うと私は目の前の獣人を見据えて溜息をつく。

 私のその反応に目の前の獣人は怒りの表情を隠そうともせず私に殴りかかってくる。

 確かに、並みの女性は腐ってもBランクの冒険者でもある彼には太刀打ち出来ないであろう。


 しかし、今の私からすれば雑魚もいい所である。


 はっきり言って身体の使い方がなっていない、力任せの一撃である。

 動きに無駄が多く同じパワー系のターニャと比べればあまりのも遅く隙がありすぎる為、逆にどの様に反撃又は交わして行こうか悩んでしまう程である。


 そして私は相手の馬鹿力をそのまま利用してこの馬鹿をひっくり返し返し背中かから落ちる様に地面へ叩きつける。


「ぐえっ!? ぐうぅぅぅ……くそっ、たまたまバランス崩したみたいだ……命拾いしたようだが次は無いぞっ!! おらグエェっ!?」


 しかしこの馬鹿は何が起きたのか分かっていない様で頭を振りながら立ち上がりもう一度殴りかかって来たので再度同じ様に相手の力を利用して背中かから地面に叩き落としてやる。


 受け身すら出来ていないこの馬鹿の印象が凄まじい勢いで右肩下がりである。


「ち、畜生……一体どうなってやがるってぇーんだよクソっ!」

「まだ理解できていないの? 単にアンタより強いって事でしょ。寧ろ私に転かされた事にすら気付いて居ないとか情けないを通り抜けて苛立ちすらするわね」

「そんな訳あるかボケぇっ!! この俺様がメス如き、それもどっちつかずの中途半端な奴より弱い訳がねぇだろ常識的に考えてっ!! ……あぁ? 何だよその目は?」

「蔑んでんのよ。余りにもアンタがどうしようもなくしょうもない人間だから」

「グエェっ!!?」


 そしてこの馬鹿はどうしようもなく自分自信を過大評価し過ぎている様で実際自分自身に起こっている出来事だと言うのに一向に信じようとせず、寧ろ逆に私の「蔑んでいる」という言葉に頭に血が上ってしまったのか再び馬鹿の一つ覚えの如く殴りかかって来たので同じように背中かから叩き落としてやる。


「まだ気づかないの? 私に手加減されているって事に。こんな馬鹿に男としての魅力も感じないし、女性を見下して馬鹿にする様な人は本当キライ。顔も見たくないから出て行ってくれる? 今すぐ」

「馬鹿にすんじゃねぇぇぇええっ!! グエェっ!?」


 本当にこの馬鹿は自分に都合の悪い事は理解しようとしないのかまたもや私に殴りかかって来たので今回はその力を利用して空いている玄関から外へ吹き飛ばしてやると私も同じく外へ歩き出す。


「外ならもう少し強めに反撃しても良いよね? 家が傷付かないし」

「死ねぇぇぇえっ!!【餓狼牙】」

「すぅー……ハッ!」


 この馬鹿は何をされたか未だ理解できていない様ではあるが自分が突き飛ばされた事は理解し、女性に突き飛ばされたという事が彼のプライドを傷つけたのかみるみる馬鹿の毛が逆立ちスキル【餓狼牙】を感情のままに放ってくる。


 しかし、その餓狼牙は余りにもお粗末なものであった。

 そのスキル【餓狼牙】を私は手刀で消し去る。

 確かにお粗末なスキルではあるのだが一般人からすれば腐ってもBランクの冒険者、しかも獣人が放つスキルはそれだけで脅威であり下手すれば死ぬ事だってあるのだ。


「あなた、今何をやったのか分かっているのでしょうね?」

「あ、いや……その…ちょっと」

「ちょっと何?」

「いやー……ははは」


 そしてこの馬鹿にとっては咄嗟に使ってしまうほどの得意技であったのだろう。

 その技がスキルも何も使用される事もなく片手で払い消された事実にやっと私の強さと自分の強さの差が分かったのであろう。

 私がこの馬鹿がやった事を問い詰めると先程までの勢いは消え去りヘラヘラと乾いた笑いで取り繕い始める。


「とりあえず私もあなたに餓狼牙を放っても貴方は文句は言わないよね?」

「お、俺が悪かったっ!! すまねぇっ!!」


 その、相手の性別や実力によって態度を変える奴だと知ってはいてもこうも掌を返されて溜まりに溜まっている怒りの堪忍袋へ更にドスンと怒りが追加される。

 当然その怒りの矛先は馬鹿へ向ける。

 その瞬間その馬鹿はプライドも何もかもをかなぐり捨てて土下座し頭を地面に擦り付けて慈悲を請い始め、その姿を目にし溜まりに溜まっていた怒りは霧散してしまう。


「あっそ。もうアンタには興味も失せたから私の前から消え去りなさ───」

「おとといきやがれですよこのクソゴミ虫っ!!」

「あぎゃっ!?」

「ぐべっ!?」

「えぇー……」


 もう顔も見たくないし声も聞きたくない為さっさとこの場から消え去ってくれないかとこの馬鹿を追い払おうとしたその時、おそらくターニャであろう声と何か人を思いっきり殴った様な音がしたかと思うと声のした方から牛の獣人が降って来ると見事にこの馬鹿へと直撃し、馬鹿共々目を回し気絶してしまう。


「あ、キンバリーじゃない。どうしたの?」

「やっぱりあの声はターニャだったのね……全く、何をやってんのよアンタは」

「いやだってこの馬鹿が余りにもしつこく求愛? というか一方的な脅迫? してきたからつい殴っちゃいました」


 件の男性を殴り飛ばした女性が私に声をかけるとにこやかに駆け寄って来る。

 やはりというかなんというか先程の声の主はターニャであり、また殴り飛ばしたのもやはりターニャであったようだ。


「殴っちゃいましたってアナタねぇ……」

「だってこのゴミ虫っ! 私の、クロ様の為の胸を揉もうとしたんですよっ!!」

「あーそりゃ殴られても仕方ないわ。ただのセクハラじゃんそれ」

「でしょーっ!!」

「それはそうと今日はどこで何をします?」

「うーん、そうね。何も決めて無いわ。とりあえず一度ギルドには行きたいんだけどそれ以外は全くもって未定ね。因みにターニャは行きたい場所とかある?」

「勝手知ったる地元ですからねー。クロとデートで行きたい場所は数え切れない程あるんですけどねー」

「それに関しては同感ね」


 元々今日は久し振りの地元という事でターニャと遊ぶ約束をしていたのである。

 と言っても遊び慣れた地元であり一緒に遊ぶ人も同じ地元というターニャであるため別段予定などは決めておらず適当にブラブラとするつもりである。

 もちろん相手がクロならばこの街のデートスポットを効率よく巡るためのスケジュールなりシュミレーションは睡眠時間を削ってでも何十回とやるだろう。


 そして先ほどの茶番など元から無かったかと言わんばかりである。

 せっかくのターニャとのお出かけをあいつらの事でイライラなどという感情で費やしたくないため早めに忘れるのが一番である。


 キンバリーと会話し歩きながらギルドへと向かう。

 ちなみに今は仕事をしていないが一応休職扱いである。


 このギルドという職業は特殊で知識があれば成れる訳でも無く冒険者としての経験が長くても実力が無ければ成れない職業である為かよっぽどの事がない限り除名される事は無い。

 滅多に除名されない為ギルド職員をセーフティーネットとして在籍して好きな事を仕事にするという者も多い。

 そして給料も当然高い為人気の職業の一つでもある。


 当然元ギルド職員とは言っても除名されている訳ではない為キンバリーは離れてから今まで仕事内容に変更箇所がないかの確認はしておくに越した事は無いだろう。


「たのもーっ」

「お久しぶりです」


 ちなみターニャの実家は宿屋兼食事処の為ギルド職員との繋がりがありターニャと顔見知りも多い。


「何だ何だ? 誰かと思ったら珍しい顔が二つもあるじゃぁねぇか」

「そうでしょうそうでしょう。これ程までに美人が二人も来るなんて珍しいっしょ」

「相変わらずだなオメーは」

「お陰様で」

「ターニャも元気だったか?」

「むしろ幸せ過ぎてどうにかなっちゃいそうでしたね」

「そうかそうか。そいつは良かったな」


 そして私達二人をいつもの雰囲気でギルドリーダーのベルクさんが出迎えてくれる。

 今年で七十歳というのにまだまだ元気いっぱいの姿を見て一応は一安心である。


 ちなみにリーダーと肩書きはあるがこのギルドのトップではなく上から三番目の役職であり、上にはギルドマスター、副ギルドマスターが存在しているが現場を指揮するのはギルドリーダーである。

 とは言ってもこのベルクさんは元ギルド長であり年齢を理由に六十五の時に自らギルドリーダーへと志願した過去を持つのだが。


だったら何故そんな事を言うんだっ!※自分の事しか考えられないからこその一言






ゴールドシップが可愛すぎて気付いたら描いてました。

ホント、可愛いですよね!ゴルシ!


挿絵(By みてみん)

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