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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第六章
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ダークエルフの奴隷五百人

「美しい……」


 その美しさにハイエルフの王はお姉ちゃんがハイダークエルフだという事も忘れて思わずこぼしてしまう。

 それはこのハイエルフの王に限ったことでは無く、ハイエルフの騎士にハイエルフ糞強姦魔ギルドマスター、マールにエリとここにいるエルフたちがハイエルフの王と同じ様に言葉をこぼしてその美しさに呆け、中にはあまりの美しさに涙を流す者まで見える。


 そして次の瞬間城だけが綺麗に消失し、消失した城の光に包まれたお姉ちゃんが国民中に見せ付けるかの如く翼を広げ天空に佇んでいた。

 その光は遠く離れた場所からでも目視できる程であり、またその光景は想像を絶する美しさであった。



◇◆◆◇



 俺は今頭を抱えそうになっている。


 その原因は俺を目にした途端に揃ったようにズラリと頭を垂れ跪くハイダークエルフとダークエルフの女性達である。

 その中で一人、ハイダークエルフであろう女性が頭を上げると意を決したかの様な視線を俺に向け、そして口を開く。


「我々はクロ・フリート様の使役されているフィオ様とマリアンヌ様により助けて頂来ました。そしてあの時のフィオ様を見て我らダークエルフはクロ・フリート様に仕えると心に誓いました。一生かけて我々ダークエルフは時にクロ・フリート様矛となり時に盾となりこの身を捧げましょう。そしてクロ・フリート様は我々ダークエルフの主人となって頂きたく思います。どうか我々にお慈悲を」

「………フィフィー、マリアンヌ…説明をしてくれ」


 とりあえず犬猫ですら拾って来て飼うかどうかで揉める家族だっているのだ。

 むしろ命を扱うという点に置いて揉めないにしろ飼うにあたって話し合いは間違い無くするであろう。


 犬猫一匹でもこれなのだ。


 それがダークエルフの女性が五百人ともなれば話の大きさも理解できるだろう。

 しかも彼女達は奴隷にしてくれと言っているみたであり、その事が余計に頭を抱えそうになる要因となって俺を襲う。

 そんな五百人もの運命がかかった案件をおいそれと決めれるわけもなく帝国の、修復し始めた城へとダークエルフ達を連れて来た二人にどうしてこうなったのか詳しい説明を求めてしまうのは当然の結果と言えよう。


 そして彼女達の説明を聞いた内容と言うのが、ダークエルフはエルフの国で奴隷として数百年間過ごし、見下されて来たのだと言う。

 そんな時、エルフ自慢の白亜の城が突如として消え去り、そこには白銀に輝く美しい天使然としたフィフィーの姿があったのだと言う。


 その瞬間、城と同時に自分達の隷属状態も全員が解かれ、自由を得たのだという事に気付く。

 ダークエルフ達は神の如き神々しさを放っているフィフィーの元で仕えようと懇願しに行くのだが、そこでフィフィーもまた俺に仕えている事を話したのだという。


「何卒、我らを奴隷としてお傍に置かせてください。ご主人様の為に我らダークエルフは命を懸けて誠心誠意尽くす所存でございます」

「俺の為に命を懸ける必要もないし奴隷になる必要もない。せっかく自由の身になったのだから俺がどうとかではなくて自分の好きなように生きるがいいさ」


 その瞬間ダークエルフ達の顔が喜びに破顔していき、中には嬉しさのあまり泣き始める者まで現れだす。

 今まで数百年にわたり奴隷として扱われ、冷遇されてきたのである。

 彼女達の気持ちは十全に理解できる訳ではないが、それでも彼女達の喜ぶ姿に自分の想像よりも辛かったのであろうと俺は思う。


「で、ではっ、是非私達をご主人様の奴隷としてくださいっ!! それが私たちの望みです!!」

「………は?」


 どうしてこうなった。


 確かに俺はこのダークエルフ達に好きに生きるよう言った。

 そして彼女達は俺の奴隷になりたいといった。

 確かに、何もおかしな点は見られない。


 俺が悪いのか?


 まさかこんな事になるとは思ってもおらず頭を抱えたくなる。


「そう言えばお前達に男の姿が見られないのだが、どこか他の別の所に居るのか?」

「……今、我々の種族に男性は居ません。その代わり人間種であれば子を成す事が出来ます」


 そう言うダークエルフの瞳は「ですので是非貴方様の子種を下さい」と考えている心の声がダダ漏れている。

 奴隷から話題を変えようと試みた結果、余計に悪い方向へ向かって行っている気がするのだが、気のせいだろうか?


「【今】という表現をしていたが、本来ダークエルフに男性は居たのか?」

「はい。十名程おりましたが、白エルフに敗れ全員殺されましたので現在我々には男性が居ないのです。元々我々ダークエルフは男性が産まれにくい種族でして、ダークエルフ同士で子供を作った場合ですと百人に一人程の確率でしか男性が産まれて来ません。しかし、他種族であれば男性が産まれて来る確率が半分、五割にまで跳ね上がりますっ!」

「………」

「跳ね上がりますっ!!」

「お、おう……それは、すごいな?」


 現在ダークエルフの纏め役なのであろう目の前のハイダークエルフはとても大事な事なので二回言いましたと言わんばかりに「跳ね上がる」と繰り返す。


 異性の話をして戦争や内戦故のシリアスな展開に持って行こうとした結果、まさか他種族と子作りの話になるとは誰が理解できようか。

 しかし、ダークエルフは男性が産まれ難く、ゴブリンは雌が産まれ難い。

 その違いが生まれた理由は繁殖率であろう。

 繁殖率の高いゴブリンだと雄が多い方が高い繁殖率を生かせる。それに例え他種族に孕ませそれが産まれて来て殺されたとしても痛くない。

 逆に繁殖率の低いダークエルフは女性が多い方が身篭った胎児を守り、産まれてからも大事に育てる事が出来る。そして女性が多い方がその数だけ身籠もれるという事である。

 エルフは男性と女性が半々見たいであるが、お互いに繁殖力が低く一回の妊娠で身籠もれる胎児の数は人間と同じで一人である為三人産まなければ種の存続が出来ない現実が現在のエルフ無いしハイエルフの減少なのであろう。


 そして俺はそんな持論を頭で考え現実逃避をしつつ、奴隷にしたところで束縛しなければ奴隷では無いと自分に言い聞かせながらダークエルフ達を奴隷にしていくのであった。




◇◆◆◇




 王国の中心都市シュゲルマ、その中心部に位置する王城その中庭でコンラッドは木刀を手にし最早日課である素振りをしていた。

 もう幾度素振りしただろうか。

 それこそ素振りを始めたばかりの頃は一回一回律儀にその回数を数えていってたのだがそれが日課となるといつの間にか回数は数えなくなった。

 ただそこには木刀が空を切る音と様々な角度から繰り出される技による足音と酸素を求め荒く呼吸する音だけが聞こえて来る。

 しかし、どれ程型に合わせて素振りをしてもコンラッドの心は一向に収まる気配を見せない。

 その光景を見た者は青に選ばれた男の覇気もオーラも無いただがむしゃらに強くなろうとする未熟者の姿にしか見えないであろう。


 そんな光景がそこから更に小一時間程続いた後、コンラッドは目で追うのもやっとという程の動きで斬撃を繰り出していく。

それれはもはや常人のスピードは遥かに超え、一つの高みにたどり着いた者のみが許されるスピードであっただろう。

 それも最早過去のものであると彼は知っている。


「おいおいどうしたんだよ最近。お前らしくもない」


 そんな常人のスピードを遥かに超えて動いているコンラッドがいる中に一人の男性が入って来る。

 その瞬間中庭には木刀と木剣がぶつかり合う音が新たに響き出す。


「……」

「おいおい、無視かよ。これでも気にかけてやってんだぜ? おっと、今のは危なかったぜ」


 そんな彼をコンラッドはかけられた言葉は無視しつつも中庭に入ってきた事には木刀で返す。

 そのコンラッドのスピードを見切り受け切る彼もまた常人離れしていた。

 しかし、彼は高火力による怒涛の攻めが土俵でありコンラッドの戦闘スタイルは分が悪く防御するだけで精一杯であった。


「赤か」


 一通り撃ち合った後、コンラッドはまるで今気付いたかの様なそぶりで彼に与えられた色で呼ぶ。

 その目は同じ同僚に向ける目ではなく、屑を見る目をコンラッドは向ける。

 彼はある一部を除けば非常に出来た人格の持ち主であるのだが、その一部である【異性を殴らないと性的興奮を覚えない】という部分が彼の全てを台無しにした上で更に評価を下げまくっていた。

 彼に殺された女性の数は両の手の指では足りないであろう。


「俺にはドルクって名前があるんだから色で呼ぶなよ」

「お前如き趣味の持ち主は赤で十分だ。むしろその色ですら呼びたくもない」

「何が悪いってんだよ。まだ奴隷しかヤってねーよ」

「だからこそ尚更タチが悪くてヘドが出る」


 クロ・フリートとの戦いが終わった後ブラッド・デイモンは何かに怯える様に王国中枢部にある地下室へと閉じこもりあれから片手に収まる程度しか外に出て来ていない。

 今まで自分よりも強い者はいても殺せる者は一人もいなかった。

 故に自分よりいくら強くても時間をかければいずれ勝つ事が出来た。

 そんなブラッド・デイモンが初めて感じた死という感情は想像以上に彼の心をトラウマと言う楔で縛り付けた。

 その最たる理由に「段位三までの魔術を駆使して手も足も出せず様々な方法でもって負けた」と言うのが大きい。

 それは言い換えれば今まで見下して来た人間によってブラッド・デイモンを殺す事が可能であると言う何よりも分かりやすい結果であっただろう。

 それからというものブラッド・デイモンはコンラッドの言う事を素直に聞き、国の内部にいる獅子身中の虫たる反王国派及び腐った貴族などを一斉に排除を遂行する事となった。

 その際この王国の七色の一人、赤のドルク・ルドルフも当然粛清対象であった事は間違いない。


 しかしこの赤に至っては明確な犯罪の証拠が一切見当たらなかったのである。

 それこそが彼が性癖以外は人格者であるとコンラッドが評価する所以であろう。

 なまじ常識と自分の行いの先を見据える事が出来るだけに彼を粛清する事は難しい。

 この常識と先を見据える力と言うのはその差異はあれど殆どの人間が社会で生活するにあたって持って当たり前の能力とも言えよう。

 しかし中にはそれを持たない、又は持ってはいるが自分の欲望や感情に抗えない者もいる。

 卵を床に落としたらどうなるか考えられない者、割れると分かっていても辞められない者である。

 その者が基本的に犯罪者になるのだが中には卵は割りたいから割るがその先どうなるか見据える事が出来るからこそ床を拭く者、あらかじめ割って良い物を選ぶ者、又は割って良い時に割るものが出てくる。

 前者は簡単に罪を裁く事が出来るが後者は証拠を見つけなければそれが出来ない、又は裁く事すらできない。

 そしてこのドルク・ルドルフは裁く事が出来ない部類であった。


 実に胸糞悪い話である。


 しかも犯罪者奴隷という所も粗末に終えない。


「しかし、生き辛くなったな。一体どうしたっていきなり正義の味方になったって言うんだ?あの王様はよ」

「生きやすくなったの間違いでは無いのか」

「はっはっは、相変わらずおかしな事を言うやつだぜっ! 考えても見ろ。今のままじゃ良い子ちゃんを演じなきゃ即豚箱行きだ。それにそのうち奴隷制度も廃止されるんじゃねーのか?」

「何が言いたい? 犯罪者に厳しいのなら良い事では無いか」

「分かってねーな。完璧な人間なんてこの世には存在しない。みんな何かしら一度は悪い事をする生き物なんだよ」

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