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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第六章
103/121

あれから三日【村田さん一話~四話】


 なんで。


 そんなの決まってます。

 今この女を元敵だからとか、クロ様のメイド達と大差無い実力である癖にだとかそんなくだらない意地やプライドではクロ様を蘇生できないと分かりきっているからである。

 悔しいが今の私ではクロ様の中で流れる時間を停止するぐらいであり蘇生することはできないと思い知らされた。

 意地やプライドで蘇生できるのであればとっくにそうしている。


「まだですかっ」

「今やってるわよっ!何で蘇生できないのよっ!?」


 だというのにクロ様は一向に蘇生する気配すら見せず美しいそのお顔は冷たいままである。


「これは困った事になっているな」

「コーネリア……聖王…様……?」

「何であなたまで……まさかっ!?」

「まさか勇者ミズキが蘇生の、しかもこれほどの魔術を使えるとは思いもしなかったぞ。それとそこの水魔族、心配するな私もこの馬鹿な御主人様を助けに来たに過ぎない。そうピリピリするな。どうせ闘ったところで私はここにいるメイドにすら勝てまい。勇気と無謀を履き違えたりはしないよ」


 ミズキにより蘇生魔術をかけてもらっているにも拘らず一向に蘇生する気配を見せないクロ様にミズキも私も焦りを見せ始めた時、デモンズゲートで聖教国初の女性である王、コーネリア・ジャドソンが現れた。

 そんなコーネリアを見てクロ様にトドメを刺し眷属という名の奴隷から開放するために来たのかと思ってしまう。

 奴隷は主人に直接攻撃できないがクロ様を包んでいる氷華はその限りではない。

 しかし、私の憶測と異なりコーネリアはクロ様を助けに来たのだという。


「なんだ?私がご主人様を助けに来たのがそんなに珍しいって言うのかい?」

「え、ええ」


 どうやら私は顔に今考えている事が出てしまっていたようである。

 それほどまでに今の私は余裕がないということなのだが、一度クロ様の国とクロ様を潰しに来た相手であるしミズキの様にクロ様の近くで生活をしていたわけでもないのである。

 疑ってしまってもおかしくないだろう。


「安心しなさい。大天使様であるセラ様を使役できるお方をただの魔族であると私も思っておりません」


 自身満々にそう告げるコーネリアは私の顔をみてサムズアップしてくる。

 その顔には「知らないとでも思っていましたか」と太文字で書かれていた。

 その事からコーネリアもクロ様の魅力を知って───


「しかもあれ程までに敬愛されているという事は神様そのものだと直ぐに分かる事です」


───いなかった。

 むしろ良く分からない勘違いをしていたが訂正するのも面倒くさいのでそのまま勘違いさせておく。

「その神様の僕となれる幸せをこんな簡単に手放すわけが無いし、神様のピンチを助けてこその僕というものだろう?そして神の寵愛を……」

「御託は良いですから早くクロ様を蘇生させなさい」


 そしてこの頭のおかしいコーネリアが頭のおかしい事をほざき始めたのでその言葉を遮り早くするよう催促する。

 普段の私であれば一発重たい物をその腹部に攻撃して、その口を止めさせている所なのだが藁をもすがる気持ちなので何とか耐えきる事が出来た。


「分かっているよ。では私の愛をクロ様に受け止めて頂こうかしら」


 分かっているのかいないのか分からないのだがコーネリアはゆったりとした動作で魔術を発動させる。

 しかし、それでもクロ様の体力が回復する事は無かった。

 最早クロ様を蘇生する事は出来ないのか?そんな不安が脳裏を過ぎってしまうのだが、そんなわけが無いと必死で振り払う。


「何で……蘇生しないのよ……」

「分からないわよそんなの……今までこんな事無かったのに……やはり人間と神様は違うのか……?」


 しかしミズキもコーネリアも蘇生でき無いという現実が否が応でも私達を焦らせる。

 クロ様は神様では無い。

 その証拠に過去クロ様と一緒に旅をした私の宝物の様な記憶。

 その中で時折クロ様はたまにクロ様と同等の実力を持つとされるお仲間により簡単に蘇生させてもらっていたし、クロ様が所持しているアイテムでも確かに蘇生をしていた。


 でも、だったらどうしてクロ様は蘇生しないのっ!?


 そう心の中で叫ぶも何の解決方法も思いついてこないのが、どうにかなりそうなくらい無力な自分に腹がたつ。


「揃いも揃って何遊んでるのよ?あんた達。氷華で閉じ込めてる最中は時間も凍っているでしょうに」

「アーシェ・ヘルミオネ……?こ、こっちだって必死にやってるわよっ!!でも何をやっても蘇生しない………時間も凍ってる?」


 そんな時、クロ様の元へ新たな人物、アーシェ・ヘルミオネがやってくると共に挑発してくる。

 その挑発に言い返そうとした時、はたとアーシェの言葉に引っかかる物に気付く。


 何で私はクロ様を氷華に閉じ込めているのか?それは時間をも凍らせる、止める事が出来るからである。


 それは同時に蘇生魔法を使ったとしても………。


「やっと気付いたようね。クロお兄ちゃんの時間が止まってるんだから魔術をかけられてもそこから何か変化するわけないじゃ無い。当然その魔術も同時に止まってしまうんだから。ほら、私がダメージバリアを念のため三枚クロお兄ちゃんに貼ってあげるからその氷華を解きなさいな」


 そして私はアーシェに促され慎重に氷華を解いて行く。

 私の魔力から優しく解放された美しい花は一瞬その姿を保つもピシリという音が鳴った次の瞬間粉々に砕け散って行く。


「クロ様!!」


 そしてその花が砕け散り、中からクロ様が解放され倒れこむ身体を私は優しく、しかし力強く抱きしめる様に受け止める。

 それと同時にクロ様の身体は時間が動き出し、ミズキとコーネリアがかけてくれた蘇生魔術により青白く輝き出す。


「どうやら蘇生魔術は成功したみたいね」

「そうみたいね……」


 その事に安堵したのは一瞬。

 即座に気持ちを切り替えて私は震えそうな両の手を強い意志で押さえ込み、クロ様の身体胸の上へかざすと水魔術段位三【癒しの水】を発動させクロ様の体力を回復させる事に集中する。



 しかし、確かに体力が回復しているクロ様は目覚める事はなかった。



◇◆◆◇



「あれから三日か……」


 クロが死に、そして蘇生されてから早三日が経った丑水時。

 あたりは月の淡い光と複数の寝息が辺りを包む。


 初めはその事にできの悪い冗談だと思ったのだが、実際こうして今も目覚めないクロの姿を見ると本当であったと信じる他ない。

 当然この三日、婚約者達やセラ達はクロのそばを片時も離れないのだが、何故かアーシェやミズキ、コーネリアにクロのメイドまでもが最低限の事以外はクロから離れようとしないのである。


 気持ちは分かる。

 気持ちは分かるのだがはっきり言って邪魔でしかない。


 これではクロを介護どころか触る事すらままならないではないか。


「何怖い顔してるんですかメア」

「なっ!?どっから出てきてるのよミイアっ!!」


 そんな事を考えているとクロの掛け布団がモゾモゾと動き出したかと思うとミイアが出てきて私の顔を指摘し出す。

 最早そんな指摘なんかよりもミイアが出てきた場所が気になって仕方がない。

 私の目が間違いでは無ければ掛け布団はクロの下半身の方からモゾモゾと動き出していた様に見えたからである。


「だって、クロの下半身に興味あるんだから仕方がないでしょう?」

「し、仕方がないって……ふ、不純だぞっ!!そ、それに私達はクロを捨てた身でもあるんだ!!そんな私達が他の婚約者達と同等の立場であってはならないんだっ!!」


 これは最早私に一生絡みつく鎖である。

 償っても償いきれない。

 他の娘達が眩しく映れば映る程、羨ましく思えば思うほどその鎖は私を固くキツく何重にも縛って行く。


「だって、いつクロが死ぬか分からないし、私もいつ死ぬか分からないでしょう?もう後悔はしたくないから……」

 そう言うミイアの目は罪悪感と決意に満ちていた。

 その目を見て私は心からミイアの事を羨ましいと思ってしまう。

 いくら「明日はどうなるか分からない」と言われてもそれを即座に行動に移す事は私にはできないであろうと。

 実際、今現在こうやってクロの事を遠目でしか眺める事が出来なでいるのだから情けないと思ってしまう。

 あの日、ミイアと共にクロを探しに行くと決めた時はまさかクロを発見したにも拘らずこれ程までに罪悪感から後手後手に回ってしまうとは思ってもいなかった。

 毎回いつも肝心な時に逃げぐせがでてしまう、そんな自分が嫌で仕方ない。


「私は……そんなミイアが羨ましいし、こんな自分が恥ずかしい……」


 ホント情けない。

 クロを探していた時は「嫌われても良いから子作りしてやる」と意気込んでいたというのに。


「まったく、なんでクロの周りに集まってくる女性は毎回一歩踏み出す勇気が無い人が多いのか私には理解できないわね。」

「アーシェ・ヘルミオネさん……」


 クロと再会してからというものネガティブな思考に囚われウジウジとしている自分自身を客観的に見る事で更に落ち込み、そしてまたウジウジとネガティブな思考に陥っているとアーシェ・ヘルミオネさんがクロの真横からその豊満な胸を片腕で支えながら布団から出てくる。

 その姿をみて私も肌で直接クロの体温を感じたいと思ってしまうのは仕方のないことであろう。

 そしてそんな欲からくる感情を感じる度に「クロを捨てた女」という過去が、また私を苦しめる。


「なんて顔をしているのよ、……本当にクロの周りの女性は面倒くさいおぼこばかりじゃない。良いから来なさい。私がそんなに羨ましいならその服も脱いじゃいなさい、ほら早く!」

「な、何をするんですかっ!?や、止めてください、ふ、服を脱がさなっ、わ、分かったからさり気なく愛撫しようとしないでくださいっ!!」

「いいじゃない、減るもんじゃないでしょ?」

「減ります!!減りますから!!」

「そうよね、やはり初めて他人の手で触られる反応を見てもらうのはクロに見て欲しいものね」

「わーぁぁぁぁぁあああっ!!うるさいうるさいっこれ以上言わないでぇぇぇええっ!」


 そんな、マイナスオーラを撒き散らす負の化身となっている私をアーシェ・ヘルミオネさんが皆がいる明るい場所へと強引に引きずり込む。

 本当に私もあの光が当たる場所へ行ってもいいのかという不安に未だ囚われつつも、裸でクロの横へ恐る恐るといった風に入って行く。

 そして、あの時に似た緊張感と高揚感が私を襲ってくる。

 もう感じる事ができないと思っていた幸せな気持ちが素肌でクロに触れ合う度に私の胸へと入って来る。


「ごめんなさい…ごめんなさい……うぅ…」

 

ブックマーク1000をおかげさまで超える事が出来ました。

これも全て皆様のお陰でごさいます(´∀`)アリガト


と言うことで記念イラストを描こうと思っているのですが、ここでキャラクター投票をさせていただこうかと思っております(´∀`)ふふ

投票結果上位三キャラを描かせて頂こうかと(´∀`)


期間ですが、今回を含めて15回の更新終了時とさせていただきます。

尚この15回の更新中ですが私が学生の時初めて描いた漫画(圧倒的黒歴史)を載せて行きたいと思っております。お祭りですからね!身も削りますよー!

投票の方法ですが、メッセージボックスへ一人一キャラ投票してください。(誰も投票されなかった場合はわたくしの好みで選ばしていただきます(´∀`)ふふ)


なおこれとは別にブックマーク1000記念として今まで通り既にラフ画アップされているキャラを一キャラを塗って行きたいと思っております。


では、わたくしの圧倒的黒歴史第一回目をどうぞ。

(目の保証は一切いたしません)



挿絵(By みてみん)


①猫耳だよ!!村田さん


挿絵(By みてみん)




②契だよ村田さん


挿絵(By みてみん)




③猫耳blood


挿絵(By みてみん)




④かわいければなんでもいいや


挿絵(By みてみん)

(´∀`)ふふ

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