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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第六章
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この身体を好きにできるのだぞ?

「それでですねクロ様……あのですね……お願いがあるのですが……」


 普段はクールビューティーな雰囲気を出しているウィンディーネが今、甘えた声を出してまるでスーパーでお菓子をねだる時の娘の様な雰囲気を出して来る。

 そのギャップに思わず可愛いと思ってしまうのだがそこはグッと堪え、なんとか耐える。


「何だ? 俺が出来る範囲でなら、そのお願いを聞き入れるぞ?」

「そ、そうですかっ!? で、ではですね! アーシェ様と戦った時にメールではありますが「何でも一つ叶えてあげる」というのを今行使いたしますわっ!!」


 いつもなんだかんだで頑張ってくれているウィンディーネの為に願い事の一つや二つなど容易い事であると考え、ウィンディーネの願い事を出来る範囲で答えてやりたいという旨を伝えるとウィンディーネは顔をキラキラと輝かせながらズズいと迫って来る。

 その間ウィンディーネの胸の柔らかさを堪能する事は当然忘れない。

 と、共にウィンディーネがこれ程喜ぶ姿を見て流石にウィンディーネだけ願い事を聞き入れるのではなくセラやルシファーの願い事を聞き入れないとなと思う。


 しかしながら、ウィンディーネと交わしたあの約束もとい悪魔の取引を今ここで使われる事にある種の恐怖を感じるのもまた事実である。

 あの事実を俺の婚約者達ひいてはアーシェに知られる訳にはいかない。

そう、いかないのだ。


「で、では……クロ様との……クロ・フリート様と私ウィンディーネの血を受け継いだ子供を下さいましっ!!」

「………へ? こ、子供?」

「そうです! 二人の愛の結晶でもある子供ですっ!」

「ウィンディーネとお、俺の?」

「はいっ! 私とクロ様との間にです! 愛の結晶ですっ!!」


 ははは……何を言っているのかな?この娘は?


 これはあれかな? 一回だけと浮気を誘い、乗ってきたら今度はそれをネタに更に脅すという恐怖のわらしべ長者の方程式が今ここに完成されたという事であろうか?

 カウンタースペルで打ち消せるのだろうか?

 しかし、潤んだ瞳でこちらを見つめて来るウィンディーネを見ると色々どうでも良いや、据え膳食わぬは何とやらと悪魔の囁きが聴こえて来る。

 元々ゲームのキャラだけあって異性としての魅力は高い上にそんな態度をされればいかに朴念仁認定をされた事があるクロであろうとも今すぐにでも頂きたいと思えてしまう程今のウィンディーネは魅力的に見えてしまう。

 しかし、複数の妻達を抑えて家臣との間に子供を作るというのは人としてどうなのだろうか?

 あの時、キュートスの胸を欲望に負けて揉んでしまった時から俺はウィンディーネの毒牙に噛まれていたのであろう。

 体内に入った毒の量は致死量である。


「と、取り込み中の所すまない。私はこの街のギルドマスターのラビンソンという者です。今回は貴方のお陰でこの街は助かりました。なんとお詫びして良いのか……」

「いえ、構いませんよ。これから自分の国になるという帝国の防衛ですからね」


 しかしそんなウィンディーネの口撃をギルドマスターであるラビンソンが割って入った事で子作りの話から一気に国防の話まで持っていきその話をここぞとばかりに盛り上げていく。

 心の中でラビンソンを褒め称える程クロはウィンディーネの罠から抜け出せなくなる所だった。

視界の端ではウィンディーネが可愛らしく頬を膨らまして抗議の視線を向けて来るのが見えるのだがあえて見えないふりをする。


「なんだいなんだい? 随分と余裕あるじゃねえか。 これは久しぶりに期待できそうだねえ」


 それは一瞬であった。


 それが現れた時にはクロは一撃を受け森の奥を更に抜け荒野まで吹き飛ばされていた。


「しかしこうも簡単に吹き飛ばされるとは思わなかったからちと力を入れ過ぎたみたいだね」

「貴様……クロ様に攻撃を加えて私が黙って見ているとでも思っていますの?」


 そしてめんどくさそうに歩き始めたそれをウィンディーネが鬼の形相で止めると同時に【水弾】を無数に錬成し、最大出力にて目標に向け撃ち放つ。


「おや、其方はあやつのつがいなのかい? あたいはどっかの凝り固まった年増と違って強い雄がその遺伝子を残す為につがいの雌を何匹も作るのは当たり前だと思っている口でね……だから其方がその年増と同じ考えならば今ここで踏み潰してやるのだが久しぶりに上玉の可能性である雄を逃す訳には行かぬ。其方の相手はまた今度してやろう」


 しかしウィンディーネの放った魔術はそれが握っている真っ赤に輝く大剣に防がれ地面を濡らすだけに終わる。

 それは言いたいことを言うとクロの元へ駆けていく。

 そしてそれを追いかけようとした時ウィンディーネの前に一人の男性が現れ道を塞ぐ。


「……退きなさい」

「どかないよ。だって今回の俺の仕事は君の足止め。倒す事は厳しくても足止めくらいなら出来るからね」



◇◆◆◇



「痛っ……」


 あの一瞬、クロが油断したその時を狙いすましたかの様な一撃。

 その一撃はクロの防御系オートスキル三枚を容易く突き破り、更に無視できないダメージまで負わせていた。


「化け物かよ……ったく」


「化物だなんて随分と物言いじゃないか、ダーリン」

「誰がダーリンだ誰が」


 悪態をつきながらもクロは脇腹から来る激痛に顔を歪ませながら立ち上がる。

 この痛みは間違いなく肋骨が折れているだろう。

 その痛みにより顔には脂汗が滲み、呼吸音にも雑音ば混じる。

 はっきり言って立つだけでも、いや呼吸すら激痛が走りどうにかなりそうである。

 

 アニメや漫画で「肋骨の一本か二本は持ってかれたか」と言う主人公達はホントに肋骨折れてんのかね。

 痛すぎてやばいんだが。


 しかしその痛みも装備を魔王然としたフル装備に変更すると元から装備についているオートスキルであるリジェネにより徐々に和らいでいく。


「では伴侶などはどうだ? まあ、アタイに勝てたらだけどね。その呼び名は」

「初対面でいきなり横腹に蹴りを入れてくる奴を誰が娶るものか」

「ほう? この身体を好きにできるのだぞ?」

「………」


 どうだと言わんばかりに身体を見せつけ「んん? どうだい?」と問うて来る彼女は確かに魅力的であり思はずゴクリと唾を飲んでしまう。

 それを肯定と受け取ったとか「なら始めようか」と嬉しそうに口を歪め舌なめずりをする彼女。

 その容姿はオレンジ色に輝く長髪を見せつけるかの如くなびかせ、彼女が息をする度に胸に実った果実は揺れる。

 足は長く身長はクロより少し高いくらいか? しかし高すぎるわけでも無くそれが上手い具合に彼女の魅力を高めている。

 そしてそれらを見せつけるような生地の少ない、しかしいやらしくない程度の服を身に纏いそれはまるで一つの完成形であるかのようである。


 しかし彼女の頭には二本の真っ赤な角、背中には真っ赤な翼、尻には真っ赤な鱗がつややかな光を輝かせながらゆらりゆらりと左右に揺れていた。


 その姿からはまるでドラゴノイド、竜人、そう言った言葉が似合う。


「ではまず遅くなったが名乗らせてもらおうかね。アタイはラース・ランドールであり司る色は赤」


 そこまで言うとラースはクロを試すかの如く視線を浴びせ自分の種族を言う。


「アタイの種族は………エンシェントドラゴンだ」


 ラースの種族名を聞いたクロは目を見開く。

 当たり前だ。

 エンシェントドラゴンで思い浮かべる者はあのバハムート。

 はっきり言ってラースがバハムートレベルの強さであるのならばまず勝てる自信がない。

 以前バハムートと模擬戦じみた戦いをしたときはある意味でスフィアがいたから圧倒できただけである。

 彼の強みは回避不能に近い範囲攻撃にあるためスフィアがいてはおいそれと打てない状況では逆に範囲攻撃のタイミングも予想しやすくタイミングを掴みやすいというものである。


「自己紹介どうもありがとう」


 そして有りっ丈の皮肉を込めて感謝の言葉を言う。

 その言葉を素直に受け取ったのかラースは表情を綻ばせるのだが、ついで不機嫌そうに顔を歪める。


「感謝の言葉は素直に受け取る。アタイの名前をアタイが教えた者は今までで五人しかおらんのだからな。しかし、このアタイが自己紹介をしたと言うのにダーリンは自己紹介をしてはくれぬのか?」

「わざわざここまで俺を訪ねて来たと言う事は俺の名前を既に知っているのでは無いのか?」

「それはそうだが、こういう時名乗るのが礼儀であろう?」


 どうやらラースは俺が一向に自己紹介をしない事に不満を感じていたらしいのだが、その事を理解しつつはぐらかす。

 クロの返答にラースは少し拗ねた様に自己紹介を催促する。

 その表情は見方を変えれば可愛らしく思えるのだろうが、中身が化け物だと知っている今では素直に可愛いと感じ取る事は出来ない。

 その間、見た目では気付かれない箇所の装備品やそれらに付与できるスロットをリジェネ能力がある物に変更し、体力が全回復した事を確認すると装備を元に戻す。

 状況に応じて装備品やスロットを変更できる環境のチートさに感謝である。


「まあ良いだろう……俺の名前はクロ・フリート。種族名は……人間だ」

「種族名が人間だなんてふざけている……訳ではないようだな。ダーリンの目からは強い意志を感じ取れる。ふむ、そう言う何かきっかけがあったのだろう。そこら辺は布団の中で聞くとしようかね」


 そしてクロはハンドルネームと種族名を名乗る。

 確かにこのキャラの種族名はヴァンパイアなのだが、だからと言って人間を捨てた訳では無い。

 そして信じようが信じまいが俺がこの世界の住人では無いというフラグを立てたからにはそのフラグを折らなければならない。

 そのフラグを折らなければならない以上、退路は無い。


「では、お互い自己紹介も済んだことだし、始めようかね!!久し振りの旦那候補なんだ。アタイを満足させる結果にしてくれよ、ダーリン。スキル【竜尾の一振り】」


 そしてお互いの自己紹介が終わったと判断したラースはそれを戦闘開始の条件であると言わんばかりに戦闘開始の宣言をすると一気にクロに詰める。

 そしてラースは勢いをそのままにクロへとスキル【竜尾の一振り】を発動させ叩き込む。


「っ……モーション無視の軌道とかバグかよ……っ!?」


 そしてラースの放ったスキルはクロの知るモーションとは異なっておりフェイクかとも思ったのだが、フェイクにしてはモーションが違い過ぎる。

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