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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第一章
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異世界◇

 人生なんて何がきっかけで転落するか分からない。

 かくいう俺滝沢祐介もまたその一人であり、とある理由で借金地獄になり嫁子供を闇金の手から助ける為に離婚、誰も知らない土地へ逃がし、今俺は身内に迷惑をかけない為に自分の生命保険を最後の希望として自殺する寸前である。


 今思えば酒タバコギャンブルをせず真面目に働き趣味と言えば家族の為にと仕事をすることと、約15年続けたVRMMO『ギルティブラッド』ぐらいである。

 そして彼は目を閉じると10階建てのビルの上から飛び降り35年間の人生に幕を下ろそうとしていた。

 ………

     ………

            「大丈夫なのか?」


 確かに飛び降りたはずなのに安否の確認をする声が聞こえてくる。


 しっくたか?


 即座に自殺失敗かという事が頭をよぎり、とてつもない疲労感が俺を襲う。


「残念ながら……大丈夫みたいだ」


 本当に残念だ。一度人生転落すると落ちる所まで落ちるというが、ここまでついてないもんなのかね……。


 いつまでも倒れてる訳もいかずとりあえず起き上がろうとして見渡した景色に軽く混乱してしまう。


「……どこだ………ここは?」


 目を開けば落ちたはずのビル群ではなく新緑が美しい森の中だった。


 確かに俺はビルの上から落ちたはずで、落下地点はそもそもコンクリートだ。

 もし仮に落下した衝撃で気絶したとして、わざわざ森がある場所まで運ぶ理由がない。ヤミ金の人間なら尚更助けるよりそのまま死んでくれたほうが保険金など入ってくるのでまず生かす事はないだろう。


「どこって、ここはノクタスの森だが…?」


 そんな事を考えていると目の前にいる少女が答えてくれるのだがノクタスと言われても分かるはずもなく疑問ばかりが増える。


 しかも少女が着ている服は中世ヨーロッパに出てきそうな麻でできたワンピース、髪は腰まで伸びた赤毛のロングヘアーで眼は透き通るようなブルーのくりっとした二重、なのに顔立ちはアジア系の美少女なのだが、…………西洋とアジアが混ざったハーフとはまた違う顔立ちに和感わを覚える。コスプレした日本人の美少女と言えばしっくりくる顔立ちだ。


「そんな事よりお兄さん、コウモリみたいな羽と山羊みたいな角が生えてるけど何の獣人? ここはまだ田舎の方だからあれだけど、都市に行くと獣人差別酷いから気を付けたほうがいいよ?」

「は? 角? 羽?」


 はっきり言って自分が現在おちいった現状の推測なんかどうでも良くなった。

 何故なら確かにコウモリみたいな羽と山羊みたいな角が身体に付いているからである。


「え? 何………………で」


 いろいろ身体を触るなどして確かめていると解った事がある。

 まず着ている服は自分が15年動かしていたゲームのアバターが着ていた課金衣装である事とと何より、少女の瞳に辛うじて写し出す俺の姿がまさにゲームのアバターそのものなのである。


「あのー…………そんなに見つめられるとだな…………犬も食わないじゃじゃ馬娘と名高い私でも照れるのだが?」

「あ、いやっ…………すまん。つい見いってしまった」


 いきなりモジモジしながら喋る彼女に言われて今自分がしていた行動を思い返し、確かにセクハラと言われても文句言えないかな?と反省し謝る。

 いくら彼女の瞳に映る自分の姿がゲームのアバターそのものだとしても見られてる方はそんなこと知らないのである。


非がこちらにあるなら謝るべきだ。


 そんな事を考えていると先ほどの自分の軽い謝罪を聞いてから顔を赤くし「この私に見いってしまうなんて事があるのか…………いや、彼は確かにそう言ったし嘘をついてるとも思えない…………いやいやしかしだな…………」と、わけがわからない言葉を呟きはじめている。


 先ほどから大丈夫か?と声をかけているのだが、自分の世界にトリップしているのか一向に戻ってくる気配がない。

仕方がないのでもう一度彼女の瞳を覗きこみ自分の姿を確認するのだが見れば見るほど角が生えた自分のアバターそっくりの美青年である。


 悪くない。元のパットしない顔より断然良い。


 それでもそのパットしない顔で大恋愛の果て結婚し、娘まで授かったのであるからその点は良くやったと褒めてあげたいところだ。


「っ…………ぁぅ…………っ!」


 そんな事を考えていると今度は顔を真っ赤にしながら口を金魚みたいにパクパクし、声にならない声を発している彼女がいた。


「やっと帰って来たか。まだ自己紹介してなかったよな?ここで会ったのも何かの縁だ。自己紹介しないか?俺の名前は…………」


 そこまで言うとこういう場合本名を名乗るべきかゲームのハンドルネームを名乗るべきか迷い、少し間を置く。


「そうだな…………クロ。クロ・フリートだ。クロと呼んでもらって構わない」


 相変わらず恥ずかしいハンドルネームだと少し恥ずかしがりながらも祐介ことクロ・フリートはゲームのハンドルネームのほうを名乗った。


「クロ・フリート…ね、覚えたわ。私はメア、メア・トリステンよ。私の事はメアと呼んでくれて構わない」


 まだ赤い顔を手でパタパタと扇ぎながらメアは自己紹介をする。


「ああ。よろしく、メア」


 お互い自己紹介が終わるとどちらかともなく握手をしてから小一時間、クロ・フリートことクロは延々と森の中を歩いていた。


「なあメア……あれから一時間は経つのだが一向に君の村に付く気配がない。せめて休憩しないか?」

「男で獣人なら私よりも体力あるんだろ? 何? 小一時間歩いただけで疲れたなんて言わないよな? ホントにもうすぐなんだから我慢して歩く歩く」


 そう言うとメアはサクサクと森の中にある細い道を歩いて行く。

 まるで元の世界にいる田舎に住む祖父や祖母と一緒にいる感覚みたいで懐かしくも思うと同時に、彼ら田舎に住む人達は都会で毎日時間に追われて生活する俺と時間の感覚が違うように思う。彼らの「あと少し」は数時間になる場合もあるが俺の「少し」は遅くても数十分である。

 はっきり行ってメアの「少し」をなめてたと後悔する。


「すまんメア、俺はもうだめだ……腹が減って力が入らない。倒れそうだ………いや、倒れる」

「え? え? ちょ…っ!? クロ!?」


 メアの驚いたような、そして心配したような顔と声を聞きながら俺は前のめりに倒れたのであった。




◇◆◆◇



 かすかに漂う食べ物の匂いを嗅ぎクロ・フリートは目を開ける。こんなにも空腹になることは日本で住んでいると貴重な体験なのかもしれない。

 この身体になってから食べられる物を何も口にしててないということは俺の身体に排泄する物質がないということなのだろう。腹が減るはずである。


「しかし、ここはどこだ?」


 今回目を覚ました場所はどうやら民家の一室らしく、ベットの上に寝かされていた。

 部屋は見た感じ質素で、よく見る異世界ファンタジー系の感じである。カラフルな色はなく薄茶色の壁や薄い赤のタンス、薄黄色のカーテンなどの全体的に薄い色が多く、もちろん現代機器どころか電気を扱うものが何一つ無い。

 そんなことを思いながら周囲を見渡すとドアが少し開かれていることに気づき、そこからこちらを覗いてくる一つの目と視線が合う。

 すると視線の主は声にならない声をあげ後ずさりしたかと思うとドタドタと廊下を走り去って行く。


 まあ、実際俺でも目の前に角と翼を生やした人物がいると興味は持つが関わりたくなと思うしな…。


 そんなことを思いながら苦笑いをする。


 チラっと見えた感じ6歳前後の可愛い女の子だったので尚更だろうと自分の娘と重なりほっこりするのだが、しかしここが地球なのか異世界なのか分からいのだが夢じゃない事は二度による意識の覚醒、そしてだんだん鮮明になってゆく五感により思い知らされてゆく。

夢にしてはリアルすぎるのだ。


 そして分からない事が一つ。


 目の前に広がる半透明のゲーム画面の見慣れたアイコンである。

 今時間は余っているというか有り余っているのですることと言えば目の前に浮かぶアイコンに触るくらいである。というわけでまずは慣れた手つきで目の前に広がるアイコンをタッチし、自分のステータスを見てみる。


 名前:クロ・フリート

 種族:ヴァンパイア(神祖)

 称号:魔王

 ランク:未定


 とだけ書かれていた。

 ゲームの表記みたいに強さについて細かいステータスが表示されていないのは自分が生きていて、生きている限り鍛錬すれば強くなり、強くなっても怠ければ弱くなり、そして老いるからなのか?そのへんいくら考えても解らないのでこんなところだろうとそれらしい理由を付けて納得する。まあその内解るだろう。


 次にアイテム欄を開いてみる。


 中にはゲーム中自分が所持していた各種アイテムとタブレットとスマホ、黒い牛革の長財布、スーツ一式……etc自殺する時に自分が身に付けていた所持品が表示される。

 その中からスマホを選択すると何もない空間からスマホが出てきたのでそれを手に取り電源をいれると聞き馴れた独特な電子音とともにスマホが起動し、その画面には待ち受けにしていた妻と娘の笑顔が浮かび上がる。

 そんな中、妻子の写る画面を眺めて色々な感情に浸っていると部屋のドアが豪快に開け放たれる。

 ノックは無い。


「目を覚ましたのか? なら今ちょうどご飯ができて起こしに来たところだからクロも一緒に食うだろ?なんてったって空腹で倒れたくらいだからな」


 入ってくるなりクロが倒れた理由を思いだし「ククク」と笑うメア。しかし目が笑ってない。

 そしてメアはクロに近づくとボリュームを落とした声で喋り始めた。


「一つ私と取引しないか?」

「取引? 何をだ? 俺が出来る事なら言ってくれ。行き倒れた俺を見捨てずに村まで運んでくれたんだ。取引という形じゃなくお礼としてできる事はしてあげたいと思ってたところだ」

「そ、そうか! 話が早くて助かるな。取引の内容だが、これからこの部屋をクロの部屋とし、この家に我が家族のように住んでもらってかまわない。その代わりこれから両親の所へ行くのだがクロはただ頷くだけで良い。な? 簡単じゃないか」


 なら取引成立だと言わんばかりにそこまで一気にまくし立てるメア。

倒れるまでの道中行く宛ても帰る場所も無いと言っていたのを覚えていてくれていたようだ。

 また貸しを作ったなと心の中で苦笑いをするもありがたい申し出である。

 野宿なんてまっぴらゴメンであるし、行く宛てどころかこの世界のことすら全く知らないのである。断る理由を探すほうが難しい。


「まあその程度なら全然構わない」

「なら行こう! 今すぐ行こう!」


 そういうとメアはクロの手首をガッチリつかむと引きずるようにクロを急かすのであった。


 そして引き擦られて連れて行かれた場所には不機嫌なのを隠そうともせず腕を組みどっしりと背もたれにもたれ座る長身で筋肉髭もじゃ親父とさその隣には人の良さそうな35歳前後に見える少しポッチャリした女性が座っており、テーブルを挟んでクロ・フリートを値踏みするかのように見ている。


 しかも自分が体験した事ある空気とそっくりなのだが何故か思い出せずにいるとメアがポッチャリした女性の反対側にある席に座ると自分の隣の席に座れと目で合図する。

 その表情は何故か青いタヌキから不思議な道具を借りてガキ大将の前に現れた眼鏡キャラを思い出す。


 メアに促され席に座ると場の空気が更に緊張感を増す。この辺りでこの独特の空気が今まで心の奥底に沈め固く蓋をした思い出の一つにそっくりなことに気が付いた。

 それは元の世界にいるだろう妻の両親に初めて挨拶に行った時と似た緊張感なのである。

 もう10年前になる懐かしい思い出に浸っているとメアが口を開く。


「連れてきたわよ糞親父。なぁーにが『お前みたいな犬も食わないじゃじゃ馬娘なんかを好んで結婚する奴なんかおらんわ! もし居るのなら儂の目の前に連れてくるんだな。まあ今まで17年間彼氏どころか色恋のいの字も無かったお前には無理な話だろうがなガハハハハハ。もし連れて来たんならこの見合い結婚の話は無かった事にしてやるってもんよ! ガハハハハハ』よ。私が本気になれば私と結婚したいって男性は引く手数多なんだからね!ホホホホホホ」


 鬼の首を取ってきたようなどや顔で目の前の筋肉モジャモジャ親父なのだろう物真似をし終えると高らかに笑い出す。

 その顔と態度は当事者でない俺ですら実に腹が立つ。一発殴ってやりたい程のドヤ顔だ。


「何が引く手数多じゃ! なら人間を連れてこい人間を! どうせこの男性も勢いだけで何も説明せず倒れてる所を半ば強引に連れて来たんじゃろうが!」

「ぐぅっ」


 あ、ぐうの音はだせるんだ。


 メアの父親であろう筋肉モジャモジャ親父のほぼ当たっている反論に額から汗が出始めるメア。この俺をこの場に連れて来ただけで勝てると思っていたに違いない。

 もしこれがゲームであり筋肉モジャモジャ親父が倒すべき敵であるなら「そんな装備で大丈夫か?」と言ってやりたくなる爪の甘さである。

 まあ言ったところで「大丈夫だ問題ない」と返して筋肉モジャモジャ親父に負けて帰るのがオチだろう。

 しかし、察するにこれは俺の生活もかかってくるのでメアの受け答えに「はい」だけ言う置物になれと言われていたのだが助け船を出す事にする。

 もし話がスムーズに行ったとしても婚約者になるだけだろう。


宿無しホームレスとヒモ婚約者ならヒモ婚約者を俺は選ぶ。

 見知らぬ土地で訳もわからず死ぬよりマシだからな。


「それは違いますお義父さん」


義父さんという言葉で筋肉モジャモジャ親父の顔から不快感が滲み出ているので口を一旦閉じる。ちなみに元の世界では「誰がお義父さんだ!」と門前払いだったことを考えるとまだ筋肉モジャモジャオヤジのほうがましである。

 そう考えるとまだマシなので相手が喋り始めるまえにこちらから話し出す。


「娘さんとは数年来の付き合いでして私が人間でない事に私自身自信が持てず娘さんには私と付き合っている事は内密にと口癖のようにいつも言っておりましたので娘さんは私との約束を守って下さったのでしょう」


 俺の話を聞いて納得いかないのがありありと顔に出ている筋肉モジャモジャ親父はメアの時と違い静かに反論しだす。


「………………その話が本当だとしよう。なら何故お前はメアを選ぶ?」

「何故、とは?」

「一度も貴族様が着るような高い衣服なんか見たこともない田舎者の俺ですらお前が着こなしている服が俺ら平民には一生働いても買えないくらい高価な一品だって事ぐらい分かる。そんな貴族様が何で平民のしかもこんなじゃじゃ馬娘何かを選ぶ? もし何人もいる妾の一人にしようってんなら…………」


 後の事は分かるよな?と目で訴えてくる筋肉モジャモジャ親父。目がマジだ。


 今着ている俺の服装は、頭に魔王の冠という装着すれば捻れた角が頭に生えたように見える帽子(MP50%アップのオートスキル付き)、黒に金の刺繍が見事な漆黒の羽衣という衣服(被ダメージ-50%ダウンのオートスキル付き)、漆黒のマントという装着すれば黒い悪魔のような翼がはえるマント(自分にかかるオートスキルの能力50%アップのオートスキル付き)、マナの泉というダイヤみたいな指輪(魔術系スキル消費-50%)もろもろ魔王降臨イベントガチャで課金して当てた課金アイテムである。


 俺からしても「何円課金したんだよ」と言いたくなる装備なの でメア同様麻でできた服を着ている筋肉モジャモジャ親父の言い分はもっともである。


「メアさんを複数の妾の一人に、また私が貴族だというのは私の命に誓ってありえません。それに人生の分岐点であり勝負どころでもあります。まずは服装からと力を入れさせて頂きました。」


 ここで一拍いれるクロ。その顔はもう落ちたも同然だと自信に満ちている。


「あっ、申し遅れました。私の名前はクロ・フリートと申します。御近づきの品をと思いまして地酒、日本酒のほうを用意いたしました。ささ一杯お飲みになってください」


 と何もない空間から日本酒の入った一升瓶を取り出した。


 自殺する前に酒も飲まない人生、最期ぐらいはと酒と煙草を冥土の土産に衝動買いしていたのを思い出したクロは酒と一緒に購入した硝子で出来たグラスを出すとトットットッと小気味良い音を奏でながら日本酒をついでいく。

 そして日本酒の登場に「ぐびり」と喉を鳴らす筋肉モジャモジャ親父。

 クロはまだ知らないがこの世界に住む人達の娯楽は限られ、代表的な娯楽が酒であり、この筋肉モジャモジャ親父の娯楽もまた酒であった。


「どうですか一杯」


 そういう言うとクロはコップに注いだ日本酒を筋肉モジャモジャ親父にスっと差し出す。

 思うにこういう場面で断られる時は初めから俺の話を聞こうともしないはずだ。むしろ筋肉モジャモジャ親父の渋っている態度はパフォーマンスで多分答えはもう決まっているだろう。もし俺が同じ状況下なら「娘はやらん」てきなパフォーマンスは夢でもある。……………まあ夢で終わったのだが。

だとしたらこの筋肉モジャモジャ親父は後ひと押しで落ちるだろう。

 そう思っていると筋肉モジャモジャ親父の横にいる母親らしき人物が口を開いた。


「お父さん、売れ残りの不良品みたいな娘を買ってくれるのよ? もし仮にお父さんが言うようにフェイクだったり妾の一人だったとしてももうこんな奇跡起きないわ。ここで一気に叩き売って言質でも何でも取るべきなんじゃないかしら?」

「ちょっお母さん!? 実の娘に対して酷くない!?」

「婚期過ぎ去りそうなじゃじゃ馬娘は言い方変えれば売れ残りの不良品でしょ? あんたが逃げた原因の見合い相手だってどんだけ苦労して見付けたと思ってるのよ」


 凄い言われようにたまらず抗議するメアだが母の目が寝言は寝て言えと語っている。

 そしてメアがこの女性に対して「お母さん」と言っていたのでやはり母親なのだろう。

確かに目元や鼻先などメアの顔と似てる箇所がある。


「そういうオメーも昔はとんだじゃじゃ馬だったろうにぃっ!? クフッ!」


筋肉モジャモジャ親父が「お前が言うなよ」と言うと筋肉モジャモジャ親父の腹をえぐる鋭い拳が横からめり込んでいた。

 そして俺は悟る。この世界でも男性より女性のほうが強い、と。

 タラリとクロの頬に汗が流れる。


「クロ・フリートさんだったかしら?」

「あっ、はい!」


ピシッと自然に姿勢をただすクロ。


「私はメアの母親でゼニア・トリステン、横でだらしなく意識が飛んでるのが父親でボストン・トリステンよ。貴方を婿として認めます。じゃじゃ馬で何かと迷惑をかけるでしょうが…………かけるかも……いやかけると断言できる娘ですが見捨てないであげてね?」


そしてゼニアはクロの耳元に口を持っていきクロにしか聞こえない声で「夫はああ言いましたが妾は何人も作っちゃいなさい。私が許可します。何より貴方を娘一人で縛るのは無理でしょうし、それが貴方のストレスの原因になるよりましですからね」


 ホホホと小さく笑うゼニアであった。


 この後確かに食事をご馳走してもらったのだが、食べた食事の味は記憶にない。

っ…………ぁぅ…………っ!※男性に免疫の無い女性が至近距離で見つめられて出る声にならない声



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