第18話。シャイン(社員)の苦悩。
只今週一更新目指して頑張って居ます。
ですが月1に・・・。
最低でも月1以降にならない様執筆していこうと思います。
ご愛読ありがとうございます。
「これからどうしますか師匠?」
「正直惨敗だとしか言えない。お前となら当分は死線は見ないと思っていたが予定違いだな・・・。この分では依頼の魔物を殺すのは正直死んでも不可能だ」
「一旦帰還しますか?」
「帰還か・・・帰還して私達に何かあるのか?有るのは暴力と暴言に満ちた世界だけだぞ?ならいっそシャインさんの様に暮らした方が・・・」
「師匠いつにもなく弱気ですね。」
「あぁすまなかった。勝てないのなら勝てるまで勝負するだけの事だよな。何を私は言っている・・・ミルカこの場所から離れろ!」
「え?こんな気持ちの良い場所なのにグヘヘ〜えへ〜あはは〜」
私としたことが・・・。
以前この類の魔物の話を聞いたことがある。
ある者はネガティヴ思考に陥り、ある者はハイテンションに成り、ある者は薬漬けになった様に狂ったと。
恐らくこれは魔物の体内から放出されるフェロモンの様なものだと考えられる。
女性が男性を惹きつけるフェロモンのに近い
恐らくそれは我々人類にはかなりの毒を持っており過剰摂取する事により死に至る。
そしてどの死者の顔も苦痛の表情で最後を迎えると聞いた。
そして最悪なのがこのフェロモンに引きつられてくる魔物がいるという事と、そのフェロモンに惹きつけられた魔物の中には大地を粘着物質にする能力を持つ者がいるという事・・・。
そしてもうミルカはその対象になった。
だが私はの足元はまだ何も起きていない・・・。
逃げるべきか?いや弟子を見捨てて・・・。
だが助ける方法などあるのか?
足を切り捨てるか?
それでは今後の先頭に差し支えが・・・
ならシャインさんに・・・いや・・・ダメだそこまでの治療知識は無いだろう・・・。
クソッどうすれば良い!
見捨てる事も助ける事もできないこの私にどうしろと・・・
一緒に死ぬ事も出来ないこの愚か者の師匠を許してくれミルカ・・・。
私が・・・。
「大丈夫ですか?ギルバートさん?」
「あららこんなに顔をぐしゃぐしゃになさってどうされました?あらこれはまた厄介な魔物に魅入られましたね。本当貴方方は運がよろしい」
「助け・・・て・・・下さい」
「えぇ勿論。私に出来るのはあのミルカ様を助け出す所までです。後はめいいっぱい私の引いた光源線に沿って逃げて下さい。そしてお口はチャックで」
シャインは何か口にしようと口を開けるギルバートの口を優しく人差し指で抑えた。
微笑むシャインの笑顔には後光が差している様に見える程ギルバートはすがるしかできなかった・・・。
ギルバートは弟子を育てたつもりであった。
つもりでしかなかった。
数度潜った自分なら庇いながらこの世界を歩き回れると過信していた・・・
その結果がこれであり愚かである事に涙していた。
「では行きますよ。朱点烈道!」
シャインの右腕が大地にめり込むと、四方八方へ真っ黒でもやもやした実態の無い空気の様な腕が伸びた。
その禍々しい腕はミルカを捕まえるなり、後ろに投げてくる。
大きく円を描いて飛んできたミルカをギルバートがキャッチすると唾液を口からダラダラと垂らし、涙を流し、鼻水を垂れ流す始末。
もう既に人の言葉はしゃべる事ができないほどフェロモン中毒に陥っていた。
「治療は後にします!まだ間に合う。早く光に沿って走って行きなさい!」
「足がおぼつかないのなら足を叩きなさい!走れないほど恐怖を感じたなら、顔を殴りなさい!諦めてしまうのなら指を折りなさい!」
「そしたらそんな考えは消えます!早く走りなさい!もうすぐ魔物がやって来ますよ!」
ギルバートは言われるがまま足を殴り、己の頬をぶん殴り、自分の指をへし折った。
そうする事で少しでも罪悪感が薄れて体が動くのであれば容易いものであった。
ギルバートの体が軽くなったところで光の導きに沿って走った。
ミルカの症状が酷くなっていくのを心配しながら、走った。
どのぐらい走ったのかは分からない。
まだ着かないのかなんて思いもしなかった・・・。
ただひたすら、ひたすらに足を前に前に進むだけを考えて光を追っていったら、シャインの家に着いた・・・。
入るなりギルバートは倒れ、ミルカの症状が少しでも良くなるように腕を握りながら気を失った。
♪♪♪♪
「これは正直きついです!」
シャインは粘着物質に変わった大地に足を取られ思うように動けないところを、人型の魔物に思い切り腹を抉るように殴られた。
後方に飛ぶシャイン。
体制を立て直す余裕の無いほど早い速で飛んで行くシャインの背後に現れる新しい影。
背中に気を集中させ致命傷を防ごうとした瞬間、腹から臓器が抜かれる触感に襲われる。
ニヤリと笑う黒い影は、背中の意識が薄くなったところで膝を背骨にめり込ませ、背中の骨を折る。
シャインの肉体がくの字の折れ曲がったまま大地へと転がりながら減速していく。
「姫様・・・。申し訳ありません。クリー!出てこい・・・。我が遺産は姫様に献上しろ。これは遺書だ」
「了解グヘッェ」
「ごめん遅くなった。大丈夫アヌビス?」
「・・・申し訳ありません。しくじりました」
「あらら・・・あの子達はバグね。無理に門を開くからあんなのを呼び出すのよ。」
「バグですか・・・見た事は・・・」
「喋るの止めなさい。代わりにパンでも食べてなさい。フィーの手作りだから」
「はい・・・」
涙を零しながら、漂白剤くさい失敗作とは違う本来作るべきパンを食べさせるとフィーは、エプロン姿のまま戦闘へと望んだ
「フィーの下僕を可愛がってくれてありがと♪お礼はフィーのビンタ〜」
バグと呼ばれた2つの黒い物体は、直ぐにフィーの元へと飛んできた。
既に先ほどとは速度も殺気も数段違う。
フィーの恐ろしさに震えている証拠であった。
だがフィーが軽くジャンプした瞬間、短いスカートからイチゴ柄のパンツがふわりと見えた瞬間、2つの黒い影は動きを止めた。
「おしまいっ♪」
2つの黒い影が動きを止めた瞬間、即座にフィーはビンタを繰り出すと、影がまるで粉塵のように砕け散った。
(ぅゎょぅι゛ょっょぃ)
アヌビスは心の中でそう思うと、優しく撫でてくれるフィーの小さな手のひらと、屈んだ瞬間に見えたそのスカートの中の宝物は永遠に己の脳味噌から、消え去る事を許さないと固く心に誓った
「いい子、いい子。だから・・・死なないで」
「大丈夫です。私は死者の王アヌビスですから・・・」
そして優しく撫でられた事とパンを食べ終えた頃には、傷はいつの間にか完治をしておりアヌビスはまた任務に戻る事となった。
♪♪♪♪
「うぅ〜ん。パンつくろー」
「ぱふぱふ・・・ふわふわ・・・ぱんぱんぱん・・・」
変な歌を歌いながら裏世界から戻っていく姫様を見送りつつ、アヌビスは仮住いの家へと急いだ。