001 必然の邂逅
001
この世界は毎日、順調に狂っていく。
いつから狂い始めたのか、元々狂っているのか、何かに狂わされたのか――――。
テレビやネットを見れば目に映るのは、自分の知らないどこか遠くで起きた争いや事件事故で、毎日知らない誰かが命を落とし、知識のない一般市民からすれば何を言っているのか理解できない専門用語を並べ、国民そっちのけで政治を進める政治家たち。高度な技術で便利な世の中に変わっても、同じことを繰り返す人類は、本質的に何も変わっていないのではないかと思えてくる。
さらにここ数年は異常気象が続き、天気予報ですら見ていて気が重い。大きな自然災害も世界各地で起こっている。でも、それらは何故か一度に全部来たりしない。だけど無くなることもないし、むしろどんどん増えている。もしかしたら、今が人間に与えられた猶予期間なのかもしれない。
一歩外に出れば、まるで人のあら探しでもしているような人の目や、あることない
ことうわさして、醜聞を晒す人達。どんどんコンクリートだらけになっていく街に、何事もなかったかのように、さりげなくゴミを捨てていく人達。
便利になればなるほど、人間は劣化していく。自分でやるべきことが減り、そのかわりに欲だけは増えていく。
この見苦しい現実と、聞き苦しい現実。
世界を狂わせているのは人間だ。答えは明白だが、この世界は人間に支配されている。だけど俺もその人間の一人だ、なんてことは分かっている。だから何もしないしする気もない。
そしていつか慣れていくんだ、この世界に。
なのに、現実を受け入れるたびに、心臓が冷たく脈を打つ。
まるでそのすべてが、自分の罪であるかのように――――。
受け入れたくない汚い現実とは裏腹に、自身の十六回目の誕生日の朝、窓の向こうに見えた白銀の世界は憎らしいほど綺麗だった。
いっそのこと、これがこの世界の姿だったなら――――
そしてこの日、俺が感じていた根拠のない罪悪感の正体が明らかになる。