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平凡な学園生活と非凡な同級生

 水、空、大地……

自然のあらゆるものと対話し、それらを操る(すべ)が存在する。

人々はそれを『魔法』と呼んだ――




 体が沈む……

どこまでも沈んでいく。ここはどこだろう?

暗く深い場所をどこまでも落ちていく。海の中だろうか?

海にしては息が苦しくない。溺れ死ぬ時はこんなに楽なのか……。

あぁ。 こうも楽ならばこのまま眼を閉じてしまおう。

ゆっくりと……





「夢か……。」


眼を開けると見慣れた天井が見えた。

二度寝をしようと布団を頭までかぶってから寝返りを打つ。途端、布団がすべてはがされた。


「起きろ! 遅刻するよ!」


けたたましい声が聞こえたが、無視する。僕は二度寝すると決めたのだ。


「いたっ!」


腰に激痛が走る。蹴飛ばされたらしい。どうやらこの暴力的な幼馴染は僕をどうしても起こしたいようだ。

思わず起きて声を上げる。


「いってーな! なにするんだよ!」


見上げればそこには悪びれた様子もなく、にやにやと笑っている幼馴染がいる。


安田(あんでん)みづは。家が近くて年齢も同じため、小さい頃からよく一緒に遊んでいた。よくいる「おせっかいな幼馴染」という奴だ。

小さい頃は男と間違えるくらい髪が短く、その見た目と活発な性格も相まって女子より男子とよく遊んでいた。

今は肩くらいまでのセミロングだ。制服のスカートだって短いし、それなりに女らしくはある。ただ、男勝りな性格は全く変わっていない。


「あんた今日の試験落とすと留年」

「んなこたねーよ。今回までは大丈夫だろ。次から本気出す」


二度寝を他人に邪魔されるとなぜこうも腹立たしいのだろうか。僕は布団に寝転んだ。


「お前の計算間違いだろ。」

「違うよ。前回の試験一点足らなくて落としてるじゃん。だから今日落とすとさよなら」


ひらひらと顔の前で手を振っている。こいつはなぜ僕より僕の成績に詳しいんだろう。寝起きの頭で一生懸命記憶をたどる。

――――――思い出した。嫌な記憶というのはすぐ忘れてしまうものだ。慌てて布団から飛び起きる。


「やっば!」

「ほらね」


みづはの投げた鞄を受け取り、二人で家から飛び出した。




 僕の名前は冬城(とうじょう)樹里(いつき)

(セント)ヒラリウス魔術学園(アカデミー)の二年生だ。

成績はというと一言で表せば「落ちこぼれ一歩手前」。「一歩手前」なのは僕に残っている小さいプライドのせいではない……と思いたい。

早い話が魔法使い見習いの「見習い」だ。今時、魔法使い(パイオニーサム)の称号を与えられているのは、学園(アカデミー)の中でも学長はじめ数人だけだ。他の教授や講師はほとんと見習い(ディシプロス)である。

僕が生まれるずっと前にはもっとたくさんの「自称」魔法使いがいたらしい。しかし、うさんくさい「自称」魔法使いたちが非魔法使いの人々に効果のない薬を高値で売りつけたり、意味の無いまじないをかけて荒稼ぎしたため免許制となった。

……というのが、学園の一年生が歴史(ヒストリア)で学ぶ内容だ。

いまどき、魔法使いが免許制なのは非魔法使いの子どもでも知っている。


僕たちが急いで教室に駆け込んだ直後、教授が入ってきて試験が始まった。そこで僕はもう一つの「嫌な記憶」を思い出してしまった。

試験勉強をしていなかったのだ。









 「終わった……」


試験の終わった教室で僕が頭を抱えていると、クラスメイトの男子生徒が声をかけてきた。

「お前なにやってんの?」

粟國(あぐに)(あたる)。いわゆる悪友というやつだ。

こんなに適当そうにみえて、試験の点数はしっかり取る憎き「秀才」くんである。


「見ればわかるだろ、自己採点」

「お前が自己採点なんかしてるの珍しいな」

「留年のかかってる試験なんだ。自己採点くらいするよ」

「で、どうなの? 結果は?」

「どうやったって一点足らない……。僕の楽しい学園生活は終わりだ。應今までありがとう」


落ち込みまくる僕に應は爽やかに笑った。


「まだ結果返ってきてないだろ。それに今回没問あったらしいじゃん」

「まじか?! どこどこ?!」

「あれ? お前聞いてなかったの? そこの二問目没だってよ」


助かった……。神様はまだ僕を見捨てていないようだ。

留年しないと分かればあとはどうでも良い。補講でも受けておけば大丈夫だろう。いそいそと帰り支度を始めた僕を應が引き止めた。


「お前帰るの? 部活は?」

「行かないよ。あんなもの部活と呼べるかすら怪しい」


僕の所属している(ことになっている)「魔術部」は、人が足りず廃部寸前だったものを、みづはが僕たちを入部させることによってなんとか存続させた部だ。だいたい魔術学園において「魔術部」とは一体どういうことか。大工の学校に「大工部」があるようなものだ。

そもそも、活動らしいものは一切なくほとんどが部室でくだらないおしゃべりをしたり、部費をお菓子に費やしているようなところなのだ。

みづは曰く「健全な学園生活に欠かせないもの」らしい。


「でもなー。お前行かないと(こと)が寂しがるぜ。それにみづはが黙ってないだろ」

和遊(わゆう)には悪いけどさ。第一、みづは(あいつ)は関係ないだろ。お前のその完璧な頭脳で言い訳しといてくれよ、秀才の應クン」


和遊(わゆう) (こと)というのは、僕らと同じく魔術部に所属している女子生徒だ。気が弱く、何事も断れない性格のため大方みづはに頼まれて断れず入部したのだろう。


「んなこと言ったってな、みづはが納得するわけないじゃん。ほら……噂をすれば」


應の視線を追って教室の入口へ目を向けると、そこにはみづはが立っていた。


「あ、いたいた。應くん! 樹里! 部活行くよー!」


見つかってしまった。これでは帰れない。顔だけ出して、適当なところで帰ろう。朝、寝そこねた分を取り戻すのだ。


「いやぁ、應くん助かったよー。さんきゅー」

「どういうこと?」


僕が不思議な顔をしていると、みづはが勝ち誇った顔で笑った。


「應くんにね、樹里の足止めをお願いしてたのよー。あんた全然部活出ないじゃん。お昼のパンで手を打ったんだよねー」


なんということだ。僕が友人だと思っていたのはどうやら敵方のスパイだったらしい。呆れて應の方を見ると、当の本人は涼しい顔をしている。


「お前、意外とえぐいことすんのな」

「俺は勝ち目のある方につくことにしてるの」


仕方ない。腹をくくって席を立ち、連れ立って部室へ向かった。



 生徒会の物置になっていた小さな部屋が魔術部の部室だ。

中には机とパイプ椅子が数脚。机の上には相変わらずお菓子とジュースが置かれている。これではまるっきり子供会だ。


「あ……。冬城くん。珍しいね」


消え入りそうな声で話しかけてきたのは和遊だ。机の端っこに置いてある椅子に座ってお茶を飲んでいる。知り合ってもう二年近くたつのだが、未だに僕と話すときは少しおどおどしている気がする。


應とみづは(こいつら)に騙されたんだよ。とりあえず久しぶり」

「うん……。今日……テスト、どうだった?」

「もうバッチリよ。とりあえず留年はしない」


僕がおどけて言うとクスクス笑う。みづはとは違い、ストレートの黒髪が肩よりもずっと長く伸びている。性格だって「おしとやか」を地で行く、今時珍しいタイプの女の子だ。人見知りしすぎる点を除けば、悪くない。告白された、という噂をよく聞くくらいだ。ただし、告白されるたびに涙目で怯えながら「ご、ご、ごめんなさい……」と言い残して走って逃げるそうだが……。


「さて……と。これで魔術部全員揃ったね。とりあえず適当に座って」


「部長」のみづはが仕切り出す。もちろん全員と言っても、僕と應そしてみづはと和遊の四人だけだ。


「なんだよ、仕切るなんて珍しいな」


僕が近くにあった椅子を引き寄せて座りながら聞くと、みづははなぜか「その質問を待っていた」と言わんばかりの顔をした。


「そう。実は今日はみんなに相談したいことがあって集まってもらったんだ。みんな今期の成績はどう?」

「なんでそんなこと聞くんだよ。僕がどの試験落としたかまで知ってるじゃないか」


今朝の出来事を思い出し、悪態をついた。


「そう! そうなのよ。應くんと琴ちゃんは成績良いし、私だって留年を心配するほどじゃないの。問題は樹里、あんたよ」


急に自分の頭の悪さをみんなに公表され、僕は戸惑った。もちろん、みんな僕の成績は知ってるのだが。

そうなのだ、この仲間内で唯一、毎回留年を心配しているのは僕だけだ。應はもちろんのことだが、和遊もそこそこ良い成績を出している。みづはだって補講を受けているのは一度も見た頃がない。


「そこで、よ。座学の方は應くんあたりに付きっきりで、徹夜で見てもらえばなんとかなるかもしれないけど、実技はそうはいかないでしょ」


僕は素直に頷く。なにも言い返せない。みづははやや時間をおいてから言った。


「だから練習するのよ。実技を」

「お前頭おかしいのか?! 学園内じゃ講義意外では魔術は使えないだろ。結界のこと忘れたのか?」


僕は驚愕して思わず声を荒げた。

この学園内には様々な結界が張られており、その中に「生徒が安易に術を使えないようにする」ための結界も存在するのだ。

だから僕たちは講義で教授たちが結界を解いている時間に、その場所でだけ術を発動することができる。もちろん、術の練習をするために放課後教授たちが練習の場を与えてくれることはある。

しかし、実際は補講のような状況で、教授がついて教えたり下手をすればレポートの提出を命じられることもある。

僕はそんな場所に進んで参加したことなどなかった。


「そんなこと知ってるわよ。でもあんた練習に出ないじゃない。だからやるの」

「もしかしてお前学園の外でやろうとしてるのか? それも無理だろ。装具がないじゃないか」


魔法を使う者は、僕たちのような見習いの見習い(ヴェスティ)から最高位の魔法使い(パイオニーサム)に至るまで、「魔法装具」という道具を使って術を発動する。大昔は杖を使うことがほとんどだったらしいが、今時杖を持っている魔法使いなんて見かけない。

一部例外もあるが、みんなアクセサリーなどを使うことがほとんどだ。その装具の中には高度な魔法陣が仕込んであり、そのおかげで術が発動できる。


しかし、見習いの見習い(ヴェスティ)たちは実技の講義がある時だけ個々の装具を与えられ、講義が終了すると返却する仕組みになっている。学園の外で購入することは可能だが、購入時に見習い(ディシプロス)以上の免許か、一年生は学園の入学証明書を提示しなければならない。また、違う持ち主のものを使おうとしても術は発動しない。装具は正しい持ち主が使用する場合のみ、その力を発揮するのである。

そんな一年生でも知っているようなことを、みづはは忘れてしまったのだろうか?

僕の不安げな気持ちを察したようにみづはは少呆れたように答えた。


「装具の基本運用については分かってるわよ。使える装具がないならね……」


みづはがニヤリ、と悪い笑みを浮かべる。


「作ればいいのよ」




 開いた口が塞がらなかった。

魔法装具を「作る」だって? 本来、魔法装具というのは国家資格を持った技術者が作るものだ。もちろん製作には高度な技術が必要となる。装具の制作自体はもちろんのこと、術を発動するための魔法陣を錬成するだけの知識と魔力も必要だ。


「お前、とうとう頭がいっちゃったのか?」


頭を抱える僕に、みづはがむっとしたような表情を見せる。


「ちょっと! さっきから樹里はうるさい! こっちの説明を最後まで聞いてから反論してもらおうじゃないの」


説明もなにも……。さっきからみづはの言っていることは滅茶苦茶だ。反論もしたくなる。しかし、反論したところでみづはは聞かないだろう。とりあえず、その「説明」とやらを聞くことにする。

僕が大人しくなったのを見て満足したのか、みづはは自信満々で説明を始めた。


「まず、ここにおわしますは名門粟國家の末子、應様よ」


そんなこと知っている。應の家は名門中の名門だ。「粟國家」と言えば、知らない人はいないくらいのエリート家系である。應の父、つまり現当主の粟國 摩樹(まじゅ)氏は最高位魔法使い(パイオニーサム)であることはもちろん、その能力も随一と噂されている。国家の要職にこそ就いていないが、影響力はすさまじくこの業界を動かしていると言っても過言ではない。

親戚一同も例に漏れず、国家の要職をはじめ様々な業種のトップはほぼ粟國家と関わりのある人達ばかりだ。

粟國家には現在、應を含め五人の息子がいて、そのうち三人が魔法使い(パイオニーサム)の称号を獲得している。もっとも、應自信はそんな称号に興味もなく、家督を継ぐ必要もないため「普通」で良い、と言うのは本人から聞いた話だ。

と、ここで「名門の末子」が口を開いた。


「お前も知っての通り、俺の兄貴は四人中三人が魔法使い(パイオニーサム)だ。俺はともかく、称号を得てない奴がひとりいる。それが誰か知ってるか?」


僕は首を横に振った。應の家に遊びに行ったことはあるが、馬鹿でかいお屋敷の離れで(粟國家では一人一軒離れが与えられている)使用人の人と顔を合わせることはあっても、家族に会ったことはなかった。

應自信、そんな「名門」や「家系」と言う環境を嫌うようで、あまり家族の話はしたがらない。僕のような落ちこぼれ「一歩手前」とつるんでいるのが良い証拠だ。


「次男の(はる)だよ。あいつかなりの変人でさ。能力は兄弟で一番あるくせに、称号や役職に興味がないうえ、かなりの人嫌いなんだ。だからずっと自室に閉じこもって、新しい魔法陣錬成してみたり装具を作ったりして遊んでるんだ」


初耳だった。應の兄弟にそんな人がいたことにも驚きだったが、魔法陣の錬成や装具の作成を「遊び」にしていることの方が驚きだった。錬成にしろ、装具にしろ恐ろしく技術のいることなのだ。どちらも国家資格が必要だし、その国家資格は超難関と言われている。


「で、兄貴はあくまでも遊びで作ってるから、その出来上がった装具なんかを無造作に部屋に放ってあるんだよ。本人は作るまでが楽しいみたいで、出来上がった物には興味がないらしい。もちろん、誰かのために作ったりしてるわけじゃないから、正統な持ち主がいるわけでもない」


こともなげに言った應をまじまじと見た。もともと、違う世界に生きているとは思っていたがここまで違うとは。

應の話を聞いて、なんとなく話は読めてきた。應のお兄さんが作った持ち主のいない装具を使おうというのだ。そこで、ひとつ問題が生じる。

持ち主のいない装具は、誰かが使おうとしても発動しない。装具と「契約」を交わし、正統な持ち主とならなければ、使用することはできないのだ。契約には、それ相応の高度な魔法が必要になる。


「でも契約の魔法は……?」


僕が聞くと、和遊がくすりと笑った。どうやら和遊は答えを知っているらしい。周りを見ると、ほかの二人も知っているようだ。仲間はずれは僕だけか。少し気分を害した僕を見て、應が言った。


「俺は腐っても粟國家の人間だぜ。契約の魔法くらいとっくに使えるよ」


なんてこった。この「秀才」は学園(アカデミー)の最終過程で教わるか、教わらないかの高度な魔法をもう取得しているのだ。


「じゃあ……」


ようやく自体が飲み込めた僕を見て、みづはが声を上げた。


「こらから應くんの家で契約の儀式よ」




 僕ら四人が連れたって向かったのは、粟國家の屋敷だ。高い塀に囲まれた屋敷は、中の様子は見えず、どこまでこの敷地が続いているか想像もつかない。


「こっち」


應が僕たちを手招きした。正面にある立派な門からは入らず、裏口のような小さな扉から敷地内へ入る。

塀の中は立派な庭園だ。池があり、中には高そうな鯉がいる。わざわざこんな所で鯉を「高そう」と考えたりしてしまうのは、庶民の悪いくせだ。

細い小路を歩いていくと、離れが見えてきた。應の部屋だ。

離れに上がると、中は普通の男子高校生の部屋だった。机とテレビ、ゲーム、ただ僕と違うのは本棚に難しそうな分厚い本がたくさん入っているところだろうか。

應に促され、おのおの座った僕たちの前にお菓子の缶が差し出された。中身はお菓子ではなく、應の兄、粟國陽が作ったという装具がいくつも入っていたが。


「これ。兄貴の部屋から適当に持ってきた」

「勝手に持ち出しちゃって大丈夫なの……?」


和遊が不安そうな声をあげる。


「大丈夫。兄貴に一応声かけたから。もっとも『ん』って答えただけだったけど。引き止めなかったから問題ないだろ」


購入すればそれなりの値段がする魔法装具が今は目の前に乱雑に置かれている。なんだか物事の感覚が狂ってしまいそうだ。


「好きなの選んでよ。まぁ、材質とかいろいろ相性あるだろうけど」


應の発言を受けて、僕たちはそれぞれ装具を手にとってみた。はじめはおっかなびっくり触っていた僕らも、いろいろと眺めるうちに興味の方が勝ってしまった。手にとっては眺め、眺めては箱に戻して新しい物を手にとる。

箱の中には様々な形の装具が入っていた。もともとアクセサリーを装具として使うことが多いためか、指輪やピアス、ネックレスなどがほとんどだが、時計やどう身につけるか分からないようなものまである。


「わぁ、これ綺麗!」


みづはがはしゃいだ声を上げる。手には雫の形をしたピアスがあった。

材質はガラスだろうか? キラキラと光を反射している。


「あぁ、それね。水入り水晶とアクアマリンでできてるんだ。みづはとは相性いいんじゃないかな」


みづはがピアスを傾けると、中で小さい気泡が動いた。どうやら中に水が入っているらしい。


僕たちのように魔法を使うものには、それぞれ得意分野がある。能力があればあるほど、オールマイティに術を使えるが見習いの見習い(ヴェスティ)の僕たちは自分の得意な術を特化させることを優先させるのが常だ。

みづはの得意魔法は水だった。僕は植物、應は火、和遊は風だ。

そういった得意分野の術を最大限発揮できるよう、装具の材質はかなりこだわったものが多い。例えば、火炎魔法を主に使う應がみづはの持っているピアスで術を発動させても本来の力の三分の二くらいが限界だろう。


「じゃあ私これにする!」


はしゃぐみづはの横では和遊がまだ箱の中を覗いている。


「決まらないの?」


僕が声をかけると、和遊は体をびくっと震わせた。驚かせてしまっただろうか。


「あ……。うん。なんかどれも綺麗で……」


僕も一緒に箱を除く。様々なアクセサリーの中に、羽根の形をした髪飾りが見えた。


「あ。これなんかどう?」

「でも……。そんな綺麗なもの私に似合わないよ」


髪飾りは手のひらに収まるサイズで金色だ。ところどころに緑の石が光っている。あまり派手な印象はなく、和遊にもぴったりだ。

しかし、和遊は恐縮しきっている。こういうところが、この子の良くないところだ。


「そんなことないよ。僕はすごい似合うと思う」


そう言って差し出すと和遊は耳まで真っ赤にして俯いた。


「そっ、そんなこと……」


僕たちのやり取りを見ていた應が髪飾りを持ち上げ、しげしげと眺めた。


「あぁ、これは琴に良いんじゃないか。確か風鳥の羽根を使ってたはずだぜ」


應の説明を聞いて、和遊は顔を上げた。少し目が潤んでいる。


「そうなの? じゃ、じゃあ……。これにしようかな……」

「そうしなよ。相性が良いならバッチリじゃん」


僕が念を押すとまた和遊は下を向いてしまった。


「うん……それに冬城くんが褒めてくれたから……」

「ん? なに?」

「なっ、なんでもない!」


どうも和遊は僕が苦手なようだ。今も何かを言っていたのに、僕が聞き返すと黙ってしまった。

 

「で、お前はどうすんの?」


應が僕に箱を突き出す。女性向けのアクセサリーはそれなりに揃っているが、僕にもつけられるとなると限られてくる。おまけに材質の縛りがある。


「うーん……。困ったな……。僕がみづはや和遊みたいに、ピアスとか髪飾りをするわけにもいかないだろ」

「まぁなー。じゃあ、こんなのどうだ?」


そういって應が箱の中から小さな指輪を差し出した。よく見ると材質は木で出来ているようだ。よく見ると周りには蔦のような植物だろうか、見事な彫刻が施されている。


「これは確かサンザシでできてたはずだ。お前と相性いいだろ」


もとは女性用に作られたのだろう。僕が中指にはめようとすると入らなかった。仕方なく小指にはめてみる。


「で、お前はどうすんの? 白い手袋でもはめて指パッチンする?」

「俺はどこの大佐殿だよ」


まだ装具を決めていない應をからかう。應はいつもつけている腕時計を見せて言った。


「これ、装具なのよ。だから俺はいらない。」


はじめて聞く話だった。應はいつも装具を身につけていたのか。驚いて應の顔を見ると、なんだか難しい顔をしている。


「どうした?」

「なんでもないよ。次は契約の魔法だな。ここじゃできないから、土蔵に行くか」


應の表情はどう見てもなんでもない雰囲気ではなかったが、これ以上聞いても答えないだろう。とりあえず頷いておく。


僕たちは應の離れを出て、庭のはずれにある土蔵に向かった。

土蔵の中は埃っぽく、暗かった。應が明かりをつけたが、それでもまだ薄暗い。奥の方はほとんど見えないほどだ。


「とりあえず、そこあけといて」


應に促され、僕たちは端に寄った。應はチョークを取り出すと、床に魔法陣を書き出した。

僕たちが自信の装具の契約の際に使った時以来、見ていない魔法陣だ。

とても複雑だが、秀才はこともなげに書き進んでいく。

彼の才能に驚いているのか、これから行う儀式に緊張しているのか分からなかったが、僕を含め残りの三人は一言も口をきかなかった。


「ほら、できたぞ。お前ら、詠唱は大丈夫か?」


僕たちは不安げな顔をしながらも、一応頷く。


「まぁ、一節だけだしな。とりあえず琴からやろうか。そんで、ほかの二人は琴の真似すれば良いから」


名指しされた和遊はおずおずと前に進み出て、魔法陣の中央に立った。

手には先ほどの髪飾りを乗せている。

應が深呼吸をしてから口を開いた。


「じゃあ、はじめるぞ」




――――――汝、悪を離れて善を行い、やわらぎを求めて、これを努めよ。


應の声が響く。次第に和遊の足元が光り始め、風が下から吹き上げる。


――――――私はわが契約を破ることなく、わがくちびるから出た言葉を変えることはない。


和遊が応える。隣でみづはが息を呑む音が聞こえた。


――――――契約神ミトラの名において、この契約を認める。その装具はいかなる時も汝の呼びかけに応えるだろう。


應の詠唱で儀式は終了した。そんなに長いものではないのに、自然と安堵のため息が漏れる。

いつの間にか風も止み、光りも消えていた。


「よし、次はみづはだな」


こうして僕たちは二つ目の魔法装具を手に入れた――――――




 契約の儀式が終了して應の部屋に戻ったところで、和遊とみづはは家族との約束があるから、と帰って行った。

外はすっかり暗くなっている。部屋に残った僕は應に話しかけた。


「そういえば、術の練習ってどこでやるんだ?」


應は眺めていた雑誌から目も上げずに応えた。


「うちの裏庭にそれなりに広い場所があんだよ。俺が小さい頃に練習してたところ。そこでやれば良いだろ」

「ふーん……。やっぱお前んちってすごいんだな。お前自身も充分すごいけど」

「大したことねーよ。すごいのは親父だし、兄貴達に比べたら俺なんか一般人」


言い放った應の声がなんとなく剣を帯びていたので、僕はそれ以上粟國家のことを話題にするのはやめた。人それぞれ事情があるものだ。この僕を含めて……。

なんとなく空気が気まずくなって、僕は先ほどからずっと疑問に思っていたことを口にした。


「ていうかさ。なんでお前たちはそんなに僕のことを気にかけてくれるの? もちろん、友達としてはすごく嬉しいけど今までそんなこと一度もなかったじゃないか」


僕としてはただなんとなく聞いただけだったのだが、應は急に真面目な顔になった。


「お前さ、ホーリープレイって聞いたことあるか?」

「へ? holy play(聖なる遊び)? いや、それともholy pray(聖なる祈り)の方がそれっぽいか」

「いいや。そのどちらでもない。holy prey……。聖なる犠牲だ」


聞いたことがなかった。ただ、應の表情を見ればその穏やかではない響きの「何か」がおふざけではないことがわかる。


「モンモランシ=ラヴァル……」

「誰それ?」

「かなり昔の魔法使いだ。どちらかと言うと魔術師とか錬金術師になるのかな。あまりにも昔の人物でほぼ伝説上の人物と言っても問題ない」


魔術師や錬金術師なんて教科書でしか見たことがなかった。「魔法使い」と言うものが確立するよりずっと前、似たようなことをしていた人がいて、それらを魔術師や錬金術師と呼んだのだ。

僕の実技練習が、なぜそんな伝説上の人物の話になるのだろうか。


「ラヴァルはただの魔術師じゃない。伝承によると、ある地方の有力な貴族で、当時起こっていた革命戦争の革命軍を支援していたらしい。その革命軍は、神からのお告げを聞いたという少女が先頭に立って快進撃を続けていたそうだ。ラヴァルの支援もあり、革命軍は目覚しい活躍をした。もちろんその少女もだ。しかし、戦況は一変する。好調だった革命軍は敗退が続き、とうとうその少女も捕まってしまう。彼女は異端者として処刑されてしまうんだ。その後自らの領地に戻ったラヴァルは、狂ったように黒魔術や錬金術に傾倒していった。一説によれば、その少女に惚れていて彼女の死により気が狂ったって話もあるし、錬金術によってその少女を作り出そうとしたって話もある。とにかく、ラヴァルは儀式のために幼い少年を何人も誘拐し、陵辱・殺戮したそうだ。その数は百人以上とも千人以上とも言われているんだ」

「そんな伝説の殺人鬼がその『聖なる犠牲』とどう関係あるんだ?」

「まぁ、話は最後まで聞けよ。その過激な魔術師やその思想を信仰する団体があるんだ。それがholy prey(聖なる犠牲)だ」


僕はうすら寒くなって身震いした。少年たちの血で真っ赤に染まった部屋で、こちらを振り返る男……。顔は青白く、目には狂気が宿っている。

僕は吐き気を催して想像するのをやめた。


「その殺人鬼とアブない集団のことは分かったよ。それが僕の実技とどう関係してくるのかが知りたいんだけど」

「お前は人の話を最後まで聞かなくていけないよな」


應は肩をすくめたあと急に声をひそめて言った。


「一ヶ月くらい前、お前が部活に出てない日にみづはが学園のなかを探検してみようって言い出したんだよ」


なんともみづはが言いそうなことだ。まるで十歳の男子である。


「それで、とりあえずは物置とか倉庫とか普段使われてなさそうなところを回ってたんだ。まぁ、ほとんどみづはが進んでって俺らがついて行ったんだけどさ。地下一階の階段が終わるところに古い机があるだろ?」


薄暗い階段を思い起こしてみる。調合や植物の講義では日光の影響を受けないように地下の教室で行うことが多い。その地下に降りるための階段の横に埃をかぶった机が置いてあるのを思い出した。なんのために置かれているのか分からないが、ただ使わなくなった物をそこに放置してあるような状態だった。僕は頷く。


「あの机が少し動かされてる跡があったんだ。引きずった跡っていうのかな? そういうのがあって。その場は特になにもせず帰ったんだけど、気になって俺だけ後で調べたんだ」


そこで應は一息ついた。自然と僕も息をつく。


「夜になって机の奥の壁の前に行ってみたら、やっぱり術の痕跡がある。それで俺は……」

「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ。夜ってお前どうやって忍び込んだんだ?!」


魔術学園(アカデミー)と呼ばれるからには、僕たちの通うこの学園は数々の結界だけでなく、セキュリティーも国内屈指だ。

そこにどうやって忍び込んだというのだ。


「セキュリティーや結界っていうのは、往々にして外からの侵入に対しては鉄壁だけど、中からは大したことないんだよ。だから、夜になるまで学園内に残って、人が帰ったところを見計らって行動開始」


なんという「秀才クン」だろうか。この男が本気で非行に走っていないことを、学園側は心底感謝するべきだ。本気を出したらなにをするか分かったもんじゃない。


「それで、だ。術の痕跡を見つけた俺はとりあえず壁を調べた。どうやら壁には『空間魔法』がかけられていたらしい」


空間魔法というのは、目に見える、見えない関係なくその場に空間を作り出す魔法だ。逆に、すでにある空間を狭く見せたりすることもできる。僕たち見習いの見習い(ヴェスティ)程度でも使うことのできる比較的安易な術だ。しかし、その空間の規模によって難易度は変わってくる。僕らが作り出せるのは、せいぜい見られたくないものを隠すための小さな箱程度の空間だろうか。


「まぁ、(もの)さえ分かればあとは簡単だからな。ただ、その日は時間もなかったから、とりあえず次回簡単に空間を開けるような細工だけして帰った」

「細工ってどんな?」

「まぁ、いろいろ細かいことはやったけど、とりあえず結界解除をするためのほころびを作って、そのほころびが見えないようにカムフラージュして……あとは空間魔法自体にも少しだけ干渉しておいた」


なんてこった。この悪友は学園内で、術を使わないようにするための結界すら解けるのか。


「お前結界解除できるのか?! じゃあわざわざ実技練習を外でする必要ないだろ」

「俺にだって限度はある。実技練習みたいな大掛かりなのは解除できないんだ。せいぜい手先の術を見逃してもらう分しかできない。……とりあえず、その日はそれで帰って後日みづはと琴を連れて出直したんだ」


みづははともかく、よく和遊がついてきたものだ。あの真面目な彼女が……、と思ったが、みづはが無理に誘う風景が安易に想像できて考えるのをやめた。


「で、俺たち三人で中に入ったんだ。ただの物置だったらそれで帰ってもいいし、もしくはお前をビビらせるのに使えばいい、ってな。でも、ただの物置じゃなかったんだ……」


僕をビビらせようとしていたというのは聞き捨てならないが、應の真剣な顔を見て講義するのをやめた。


「中は暗い通路になってて、少し歩くと扉があった。だけどただの扉じゃなかったんだ。大きな木が生えて、扉を塞いでいた。その根は床を突き破り、扉を守っているようだったよ。中には結界の影響はないみたいだったし、とりあえず焼いてみようかと思って火を使ってみたんだけどダメだった。完全に焼き払うには部屋ごと燃やす勢いじゃないと無理そうなんだ。そこで、植物を扱うお前ならなんとかなるかなと思ってさ」


ここまでの話を聞く間に彼らはいくつの校則を破ったのだろう。あまりにも突飛な話すぎて、頭をフル回転させたが、それでもまだ現実味がなかった。地下にある隠された空間、そこにある謎の扉、扉を守るように生えた大木……


「お前なら、その木なんとかできるんだろ?」

「あ、まぁ……」


僕は曖昧に返事をした。確かに僕の得意分野は植物だ。理論上は、植物を生み出すだけではなく、すでにある植物の生命を奪うことも可能だ。……理論上は。


「でも、僕の能力とそのアブない団体は関係ないだろう? これまでの話で、その団体は一回も出てきてないけど?」

「その大木に守られた扉にな、紋章があったんだよ。家に帰って調べたら、モンモランシ=ラヴァルのものとされている紋章とピッタリ一致した。つまり……holy Prey(聖なる犠牲)の紋章だよ」


ようやく全てがつながった。と、同時に不安もよぎる。


「そんな危険な団体なら、僕たちだけで処理せずに教授や学長に相談したほうが良いんじゃないか?」

「よく考えてみろよ。結界含め、セキュリティーが国内屈指の学園内に怪しげな空間魔法があったんだぞ? いくら内部からは弱いって言ったって、教授たちが気づかないわけないだろ」

「それじゃあ……」

「そう。学園内にその『聖なる犠牲』の関係者がいるとみて間違いない。そんな危ない状況で学園側に相談なんてできないだろ」

「ま、まぁ……」


僕は新たな事実に愕然とした。正しくあるべき魔法使いを育てるはずの学園で、そんな危険な団体の活動が関わっているなんて……

浮かない顔をしている僕の肩をたたいて、應が言った。


「期待してるぜ、霞流の次期家元!」








 幼い頃から華道が嫌いだった。

母親や祖父に無理やりやらされるおかげで、周りの友達に「女々しい」といじめれていたからかもしれない。また、そのままの姿で美しく咲く花々をあえて摘み取り、無理に生けるのが嫌いだったからかもしれない。


おそらくそのどちらもだ。まだ蕾をつけたばかりの枝を折り、魔法で無理やりつぼみを開かせる。複数種類の花を生けて、魔法で融合させ、新たな植物を創造する――――――。そんな自然の理に反する「華道」を僕は好きになれなかった。


僕の家は分家だった。僕の一族は、霞流という華道の流派を守っており、本来は本家の人間が家元になるのだが、本家の人間に跡取りがいないと分家の人間が家元となる。通常、養子をとったりするものだが開祖の言葉により養子は認められていない。


「純然たる血脈を守るため、養子をとらず一族のみで継承せよ」


この言葉があるため、本家で跡取りが生まれなければ分家が家元となる。そしてそのまま分家に後継が生まれ続ける限り、家元は分家出身の者であり続ける。その間に本家は極力近い親族を本家に招き、世継ぎを産ませ続ける。分家の跡取りが途絶えた時のためだ。分家が途絶えれば、再び天下は本家へ回ってくる――――――。近しい親戚を招くのは養子にかわりないのだが、そこは流派を絶やさないために黙認されているらしい。ただ、家元相続の時点で、傍流の親戚の人間が相続することは許されないのだ。

僕の場合、曽祖父の頃に分家出身の家元が誕生した。もちろん、分家側は世継ぎを絶やさぬよう躍起になった。

現在は僕の祖父が家元だが、祖父が家元を相続し、分家も安泰かと思われた矢先、父が交通事故で死去した。母はもちろん血縁外の人間とみなされ、分家の家元継続は絶望的かと思われた。

本家では相変わらず子どもができないようだったが、ご当主がどこぞの妾に子どもを産ませたらしく、その子を認知して次期家元に……という動きまであったくらいだ。

そこで、母の妊娠が発覚した。つまり、僕だ。死んだ父は一人っ子だったため、僕が家元にならなければ分家天下は終了する。

そんな事情もあって、僕へのプレッシャーは並々ならぬものだった。

顔も知らない父、僕を家元にするために必死な母、家元にふさわしい華道家に育てようとする祖父。そんな環境が嫌で僕は学園入学と同時に一人暮らしを始めた。「立派な華道家になるためには、基礎の魔法をしっかり学びたい」ともっともらしい理由をつけて。もっとも、それは家を出るための口実に過ぎないのたが、母は泣いて喜んだ。

祖父は僕が急に前向きになったのを訝しんだが、結局了承してくれた。ただし、市内に家を借りるという条件でだが……。

そんなことをぼうっと考えていると應が僕の肩をゆすった。


「おい、大丈夫か」

「ん? あぁ。ちょっと昔のこととか家のこと考えてて……」

「あぁ。霞流の代々続くお家騒動か」

「お前、知ってて言ったのかよ」


僕が露骨に嫌な顔をしたので、應はわざと明るく言った。


「まぁ、いざとなって『やっぱ継ぎません』って言ってもいいんじゃねぇの? 見習い(ディシプロス)の資格くらい持ってれば、仕事だって困らないだろ」

「まぁな」

「さてと……。とりあえず、今日は練習どうする?」

「いや、もう遅いし帰るよ」


應に装具の例を言い、僕は家に帰った。帰って布団に入ってからもいろいろなことがうずまいてなかなか眠れなかった。

愛する者を失い、狂気に走った魔術師……その狂気を信仰する集団……学園内にある秘密の扉……


――――――期待してるぜ! 霞流の次期家元!


應の声がぼんやりしてきた頭にこだました。




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