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岸壁の六人目

一九八一年(昭和五十六年)八月二十七日(木)。

横浜港・大黒埠頭。


朝六時。

海は静かだった。


クレーンがゆっくりと腕を上げる。

鉄の滑車が軋む音が、潮風に溶ける。


「……五人か」


班長の義雄は名簿を見た。


本来六人。

若いのが一人、来ていない。


「風邪らしいです」


二十代後半の佐久間。

三日前から熱が下がらないという。


義雄はうなずいた。

この時期の風邪は珍しくない。


だが。


今週、若いのが三人休んでいる。

理由は同じだ。発熱。倦怠感。


四十代以上は、誰も倒れていない。


「代わりは?」


「いません」


荷は待たない。

コンテナ船は次の港へ向かう時間が決まっている。


五人で回す。


クレーンの操作が遅れる。

ワイヤーが揺れる。

一瞬、コンテナが止まる。


わずか数秒。


だが、その「数秒」が、妙に長かった。


昼休み。

若い連中の話題は同じだった。


「隣の班も一人休み」

「いや、二人らしい」


義雄は黙って弁当を食べた。


岸壁は動いている。

荷も流れている。


だが、六人目は戻らなかった。


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