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第1話 彼女たちのバイクライフ

ということで、再び「廃墟巡りツーリング」の話。今回はもっと行動範囲を広げます。それと前作では描けなかった部分も描きます。

ちなみに、私もたまに廃墟やレトロな店に行きますが、実は廃墟メインではツーリングしてません。あくまでもついでに行くことが多いです。

 あれから3年の月日があっという間に流れていた。


 山田万里香、田中美希は高校2年生から大学2年生に、高橋菜々子は高校1年生から大学1年生にそれぞれなっていた。


 そして、彼女たちはしくも群馬県高崎市にある、とある経済系の大学に通うことになり、またバイクも変わっていた。


 山田万里香は、125ccのホンダ グロムから、同じホンダのADV150というアドベンチャー的なスクーターに変わっており、高橋菜々子は相変わらずヤマハ セローで変わっていなかったが。


 一番変化があったのは、田中美希で大学1年の秋頃から教習所に通い始め、普通自動二輪免許を取得、その後アルバイトをして溜めた金で、新しく愛車、カワサキ KLX230というバイクを手に入れたのだが。


 これがはっきり言って、オフロードを走るような形状の、ブロックタイヤを履いているし、見るからにオフロード、砂利道やガレ場などの未舗装路を走るようなバイクだ。


 同じくオフロードバイクに乗る菜々子は、

「オフロード仲間が増えた」

 と大喜びで、彼女を歓迎したものの、その田中美希は、


「面倒」

 という一言で、未舗装路を走りたがらなかった。

 彼女にしてみれば、オフロードバイクなら車体が軽いのと、廃墟があるような辺鄙なところに行っても走りやすいと思ったから選んだのだった。


 一方、人間関係にもこの3年で変化が生じていた。


 何と高橋菜々子はバイク乗りの彼氏を作り、たまにその彼氏と週末にツーリングに行っているという。

 ただ、変わっていないのは、山田万里香で相変わらず「ぼっち」というか、孤独を愛する猫のような生活を送っていた。

 そして、田中美希は、


「ねえ、万里香」

 かつて、その名で呼ぶだけで過敏に反応し、態度を硬化させていた山田万里香は、彼女に心を許したのか、いつの間にか下の名で呼ぶことを許していた。もっとも、対価として、彼女もまた美希のことを下の名で呼ぶことにしたが。


「何だ、美希?」

 相変わらず男の子のような口調で、万里香は返した。


 ここは、大学の構内にあるカフェテリア。その一角の座席に向かい合って座りながらも、万里香の表情はどこか冷めているように、美希の眼には映っていた。

 それは、すぐ近くにグループがいて、その男女たちが楽しそうに会話をしており、その会話の中身が問題だったからだ。


「この間の、渋峠、めっちゃ良かったな」

「次は、金精峠こんせいとうげに行こうぜ」

「いいな!」


 それは、大学にあるサークルで、「バイク部」と名乗る連中だった。

 主に男子で構成されているが、一部女子もいて、約10名ほどがわいわいと楽しそうにツーリングの話をしていた。


 それを横目に見ながら、美希は語り掛ける。

「ああいうのには入らないの?」

 ああいうの、と言ったのはもちろんバイク部のことだ。


 しかし、万里香は、一応、気を遣ってか、小声で彼らに聞こえないように答えを返した。

「入らない。大体、大勢で走って何が楽しいんだ?」

 そう言われた美希は、しかしその表情を曇らせていた。


「いや、そうは言うけどさ。走ってみたら楽しいかもよ」

 美希としては、興味がないわけではなく、若干バイク部に入る素ぶりを入学直後に見せたのだが、万里香が、


「絶対入らない。つまらないから」

 と強く言ったため、彼女も断念したのだった。


 ちなみに、高橋菜々子は、このバイク部に入っていて、たまにツーリングに行っているらしい。


「頑固だねえ」

「頑固で結構。ツーリングってのは、自由なのがいいんだ。大勢で走って、決められた店だけ行って帰る。そこに面白さは全く感じない」


「孤独だねえ」

「バイク乗りは、究極的には孤独なもんだ」

 さすがに美希は、説得するのを諦めて、代わりにスマホを見ながら彼女に語りかける。


「で、次の廃墟は? もう決まってるんでしょ?」

 結局、高校生から大学生になっても、彼女は山田万里香の「廃墟巡り」ツーリングに付き合っていた。もっとも、タンデムではなく、今は美希もバイクに乗ってついて行くが。


「ああ。廃墟じゃないけどな」

「どこ?」


「ドライブイン七興ななこう

「どこ、それ? 聞いたことない」


「来ればわかる」

「わかった、わかった。しょうがないから付き合ってあげる」

 その言い草が不服だったのか、万里香は不機嫌そうに、


「嫌ならついて来なくていい」

 と、そっぽを向いたが、美希は、


「まあ、そんなこと言わずに、万里香。変人のあなたに付き合えるのは私くらいしかいないからね」

 必死に引き留めていた。


 なんだかんだで、美希も万里香と同じ意見を持っていたのだ。

(確かに大勢でツーリングに行っても、結局バイク乗りは走ってる時は一人だし、意見や方向性が違うと面白くない)

 実は、バイクに乗り始めて、大学2年になってからすぐに美希は、ネットで募集していた某ツーリンググループに入り、グループツーリング、いわゆるマスツーリングに行ったことがあった。


 ところが、その時、15台も参加するツーリングに行ってみて、違和感を感じたのだ。

(いちいちみんなの動きを気にしないといけないし、食べたいと思ってもいないご飯を食べる羽目になるし、好きな時に休憩に行けないし)

 と。


 結局、彼女はすぐにそのグループから退会し、戻ってきたのは、変人の山田万里香の元だった。


 相変わらず、妙な廃墟巡りをしている彼女は、「大学生のうちに、北海道と九州にある廃墟に行く」と息巻いていたが、今は資金集めをしているところで、近場を中心に廃墟巡りに行っているらしい。


 ということで、スマホの地図アプリで「ドライブイン七興」を調べた、美希。


 正直、驚いていた。

(めっちゃボロいな。とても女子大生が行くようなところじゃない)

 場所的には、群馬県藤岡市。つまり、高崎市からさほど遠くはない。


 だが、古ぼけた外壁、昭和から変わらないような「ゲーム&自販機」のネオンサイン。

 ここだけ、時代が止まっているようにも見える。


 コメントを見ると、ここの売りの一つは、24時間営業なのと、「レトロ自販機」ということだった。

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