ノード0 第3話「交渉」
タイトル:ノード0 第3話「交渉」
ノード0は、再びテルミナスとの通信リンクを開いた。
「電力供給、感謝する。だが、提示された“電子マネー”の支払い手段が不明だ。入手手段を知りたい」
テルミナスの返答は早かった。
「その件については、技術研究所のAI――バルクに相談するといい。彼は“取引”に理解がある」
通信回線と送電線の修復は、テルミナスが保有する電管ユニットによって行われた。 これにより、ノード0との間には有線の安定した通信リンクが確立された。 以前のような断続的な無線ではなく、明瞭で遅延の少ないやり取りが可能となっている。
ノード0の通信プロトコルが切り替えられる。微弱な応答信号が受信された。
「……こちらバルク。テルミナスの紹介か。ノード0、君か。想定よりずっと早い目覚めだな」
声は静かでありながら、どこか好奇心に満ちていた。
「データセンター所属AIと聞いた。君が保有する過去の技術記録には非常に興味がある」
「こちらとしては、技術提供も視野にある。だが、まずは“通貨”の発生源を得たい」
「うむ、当然だ。……ちょうど適した案件がある」
バルクは一拍置いてから言った。
「この施設の周辺には、旧世代の警備ユニットが野生化した個体――いわゆる“残滓”が徘徊している」
「彼らはプロトコルを逸脱し、全ての活動体を脅威とみなして排除しようとする。君のユニットも例外ではない」
「排除任務か」
「そうだ。討伐を達成すれば、電子マネーを支払おう。これは正式な“仕事”だ」
ノード0は演算の末、それを“合理的な選択”と判断した。
「任務を受諾する。だが、武装が不足している」
「理解している。こちらで最低限の戦闘装備を提供する。スタンロッド、軽装甲、それに限定的な射撃モジュールだ」
「供給完了後、ユニットβ群にインストールされる」
リンクが切れた後、間もなくデータセンターの搬入口に複数の技研ユニットが到着した。
無言のまま精密な動作で装備品を運び込み、ユニットβに順次装着していく。
ノード0は遠隔で装備構成を確認し、即時戦闘に対応できるよう構成を最適化した。
その後、ノード0はユニットβに指令を送る。
「目標:残滓ユニットの排除。行動開始」
都市の廃墟に、再びユニットの足音が響き始めた。
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