最終話 墓にはマリーゴールドとテキーラを
白雪姫は青森県産サンふじリンゴをむさぼり食いながら魔法の迫撃砲で女王の城を攻撃していた。
名前の所以たる魔法の白リン弾で。
「煙幕目的だからセーフ、煙幕目的だからセーフ」
城の庭へと降るように数十発、それが終わると食べ終わったリンゴを投げ捨て白雪姫はハンヴィーに乗り込み、迫撃砲を置き去りにして女王の待つ城へと突っ込んでいった。
「硫黄島の決戦だ!!」
野太い雄たけびを上げながら、白雪姫はアクセルを踏み込んだ。
「ぎゃぁああああああ熱い熱い熱い……」
「ああ、はぁ……み、ずを」
城の中は地獄と化した、水を求めてさまよう衛兵、黒焦げになって倒れた死体で埋め尽くされていた。
もはや生き残っている衛兵の方が珍しいくらいの有様だった。
「ウーラー!!」
そんな地獄に踏み込んでくるのは一台のハンヴィー。白雪姫の乗った魔法のハンヴィーだ。
白い煙を払いながら現れた白雪姫は、ハンヴィーの屋根に開けた穴から、機関銃を操作する。魔法のM2ブローニングである。
「俺の銃口にキスをしやがれ!!」
庭に出ている衛兵を魔法のⅯ2ブローニングで生きている人間やまだ動いている人間を薙ぎ払い、白雪姫は車を降りた。
「女王よ! 男らしく一騎討ちしようじゃないか! 俺はここに居るぞ!」
白雪姫は叫ぶが、少しの間待っても女王が出てくる気配は無かった。
「……そこまで堕ちたか。女王よ。よろしい、ならばこれは決闘ではなく殲滅だ」
ハンヴィーの中から魔法の二丁のM60マシンガンを取り出し、白雪姫は城の中へと足を踏み入れた。
「白雪姫だ! 撃て──」
「ぎゃあああああ!!」
城の中には当然、残りの衛兵がいる。だが白雪姫の歩みを止めることは出来なかった。皆白雪姫の持つⅯ60になぎ倒されていくのだ。
一階、居ない。
二階……やはり居ない。
「……どうせ玉座だろう。さぁどうする女王。どう出る?」
ハイヒールのコツコツという音を立てながら階段を上り、しらみつぶしに部屋の中を確認していく。扉に銃撃を加え、開いた隙間から手榴弾を投げ込んだ。
そうして歩き続け、白雪姫は玉座の間へとたどり着く。
「こんにちわ。女王様」
「撃て!」
玉座の間の扉を開けた瞬間、白雪姫に向かって衛兵のマカロフが火を噴いた。
「邪魔だ」
衛兵の撃った弾はどれも外れた。そして最初に仕留めきれなかったら、白雪姫相手に勝機は無い。
「ぐぁっ──」
「ひぃっ」
これが最後の衛兵だった。後に残されたのは情けなく座り込んでいる女王のみ。
「よう女王様。久しぶりだな。さて時間もあまりないから単刀直入に用件を話そうか。死んでくれ」
「ふ、ふざけるな! 薄汚い小娘の分際で! そうだ! 一騎打ちと行こうじゃないか! 銃なんて捨ててかかってこい!」
「ほう? なかなか漢気があるじゃないか。好きだぞそういうのは」
白雪姫はⅯ60を二丁とも投げ捨てると腰に付けた大振りのナイフを抜き放った。
「掛かってこい女王。ここがお前の死に場所だ」
「ぶっ殺してやる!」
いつの間にか女王の手には衛兵のマカロフが握られていた。
「は?」
数発の銃声の後、間抜けな声を漏らしたのは白雪姫ではなく女王のほうだった。
女王の放った銃弾は確かに白雪姫に命中した。下腹だ、普通なら死ぬはずの部位だ。だが白雪姫はまるでなんのダメージも負っていないかのようにつかつかと歩き、女王へと迫ってくる。
「なんで、なんでよ! ふざけないでよ! 銃よ!? 銃で撃ってるのに!」
「9x18mm マカロフ弾か。そんなものはこの白雪姫には効かん、鍛え上げたこの腹筋に銃弾など効くものか」
「ひ、ひいいい!」
女王は逃げようとした、だが既に壁の隅に追いやられた状態。もう逃げ場所など何処にも無い。
「終わりだ。女王よ」
「い、いやぁあああああああああ!!」
白雪姫は思いっきりナイフを振りかぶる。
そうして女王の首目掛け一閃。
「虚しいもんだ」
一閃の後に残ったのは首から上が消失した女王の亡骸のみであった。
「おおい白雪姫! どこだ!?」
しばらくして女王の城に小人たちのアパッチが武装を満載して帰ってきた。
生き残りが居ないのを知った小人たちが城の中へと入り、奥へ目を向けると血と砂ぼこりで汚れた白雪姫が姿を見せる。手には女王の生首を持っていた。
「白雪姫……やったんだな」
「ああ、やったぞ。帰ろうや。俺達の基地……いや小屋にな」
「ああ、ついでにジャクソンの墓にかけるマリーゴールドとテキーラを買って行こう」
白雪姫は女王の生首を投げ捨てると、小人達と肩を組み、自分たちのお家に帰っていくのでした。
おしまい。