第4話 小人、空からきたる
女王は焦っていた。
「衛兵! 猟師は!? なんで戻らない!?」
「落ち着いてください。手こずるのは当然です。相手はあの白雪──」
「うるさい!」
怒鳴りながら手に持っていた杯を投げつける。猟師が出発してから時間が経つが、一向に帰ってくる様子がないのだ。
──もしや殺されたのか? あの白雪姫に? 仮に殺されたとしたら、白雪姫は……
女王は思案する。しかし元々頭は良くない女王だ。碌な答えは出てこない。
「たかだか一匹の小娘を殺すことすらできんのか! ああもう!」
「白雪姫は優れた軍人です。その周りにいる小人たちも」
「こうなれば我が国の精鋭を……」
軍を差し向けようかと思っていた。そんな時だった。
「ところでさっきから聞こえてくるこのうるさい音はなに?」
「はて?」
城の中に外からなにやらうるさい音が聞こえてくる。眩しさを我慢してカーテンを開けると、夕陽が目の前に見えてくる。
「なんだあれは……」
夕陽の中に6つの点が見えてくる。音の発生源はあれで間違いなさそうだが……
「近づいてくる……あれは……」
衛兵が目を凝らす。徐々に大きくなっていく点、その正体を確認した時、衛兵は悲鳴を上げた。
「ひいッ! アパッチだ! 女王様! 白雪姫、白雪姫のアパッチです!」
「なんですって!?」
慌てた女王は玉座から転がり落ちそうになりながら窓へと駆け寄っていく。
女王の瞳に映ったのは小人たちの駆る魔法のヘリコプター、アパッチ。ローター音に負けない程の大音量でワルキューレの騎行を流しながら、真っすぐに女王の城へと迫ってくる。
「は、早く撃ち落としなさい!」
「いやしかし我が国には碌な対空兵器が……」
「早く落としなさいと命令したのです! よもや私に逃げろと言うのですか!? この国の女王たる私に!」
衛兵は女王に怒りを覚えつつも小人の駆るヘリコプターを迎撃するために準備を始めた。
「おい早く! NSV持ってこい! マキシム? 馬鹿かそんなもん効くか!」
「RPGしかないぞ!? こんなもんでどうやってアパッチの相手なんかするんだ!?」
「うるせぇ! そもそもまともな武器がねぇんだよ! 金は女王の糞バカの首飾りに消えた!」
城の庭では衛兵たちが忙しそうに走り回っている。
女王への不満をあらわにしている者も多いが。当然だろう。
「来た来た来た来た来た!」
「早すぎる!」
ワルキューレの騎行が流れ、烈風が吹きすさぶ。上を見れば小人たちを示す七色の防止のエンブレムが付いた魔法のヘリコプター、アパッチが空を舞っている。
だがただ飛んでいるだけではない。
「ぎゃぁああああああッ!!」
空を飛ぶアパッチの魔法の30mm機関砲が火を噴き、城に居た衛兵たちに乱射されていく。城の壁はすぐに穴だらけになり、ロケットランチャーを構えていた衛兵は胴体と頭が別れた。
そして小人たちのアパッチは1機だけではない。
「逃げろ! もうこんなとこ嫌だ!!」
「おい待て逃げるな! そっちはダメだ!」
逃げ出す衛兵。まだ無事な、アパッチの居ない方向へと走る。だが逃げようとした先にアパッチが現れて……
「ぎゃぁああああああ!」
「言わんこっちゃない」
逃げようとした衛兵は魔法の30mm弾を浴びて息絶えた。
「お前等なんでもいいから撃ち返せ! 撃て撃て!」
そう言いながらAKMをアパッチ目掛けて撃った。他の衛兵も存在するありとあらゆる兵器を使用し、空の脅威に立ち向かった。
対物ライフルを撃ち、AKMを撃ち、挙句大昔に鹵獲したパンツァーファウストまで打ち込んでいく。だがそもそも当たらない。当たってもさして効果は無い。
「クソ! 女王め一体なにをやらかしたんだ!?」
悔しそうに呻く衛兵に、魔法のアパッチのハイドラ70ロケットが撃ち込まれた。