プロローグ
ある国に、それはそれは美しい女王が住んでいた。
彼女は毎日、魔法の鏡にあることを飽きもせず問うていた。『鏡よ鏡、この世界で一番美しい女は誰か?』と。
魔法の鏡は決まってこう答える。『女王なり』と。
毎朝繰り返されるこの返答に女王は満足し、政務に取り組むのが日課だ。
この日課は約7年もの間続いた。だが女王の日課はある日を境に途切れることになる。
「鏡よ鏡、世界で一番美しい女は誰か?」
この日も鏡は自分が最も美しいと答える。そう確信していた。
だが、魔法の鏡が吐き出した答えは女王の考えとは全く違うものだった。
『世界で最も美しいのは……白雪姫なり』
「なん……だと?」
女王は鏡の前に崩れ落ちた。己のプライドをズタズタにされたのだ。それ以外特に得手もない女王の唯一の心の拠り所を破壊されたのだ。
故に立てない。足が震える。
「衛兵! 猟師をつれて参れ!」
女王は怒りに震えながら、連れてこられた猟師に命じる。
「白雪姫を探しだし、心臓を抉り出して持ってくるのだ。これは女王からの最重要特別命令である!」
かくして、猟師による白雪姫暗殺計画が始まるのだった。