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ナパーム弾、弱男に着弾

作者: よこぜ あさひ

イスラエル軍がガザ地区へのナパーム弾投下を決行し、パレスチナ問題が大詰めを迎える昨今、女尊男卑の流れが加速する日本では、あるバーチャルタレントがライブ配信で「ナパーム弾、弱男に着弾」というダジャレを披露し、語呂の良さからネット流行語100にノミネートされた。


何年か前であれば物議を醸していただろう。タレントは批判され、活動自粛を余儀なくされただろう。しかしこのご時世、男性を批判する言葉はむしろ歓迎される。特に無産階級者などの社会的に弱い立場にいる男性は、攻撃の的にちょうど良かった。


しかしこの国では、資産を持たない人間の方が少ないのではないだろうか。欧米諸国よりも物価は安く最低賃金は高いはずだ。社会保障も充実している。これは、国政選挙の投票率が物語っているだろう。貧乏を感じた人間は「勿体無いから使えるものは使っておこう」と思い投票所に行くはずなのだ。


しかし生活に窮する人間は少なからず存在する。それは若者も然り。現在の日本において生産手段を持たない男性や未婚男性の扱いは犯罪者に近い。


そんな社会の流れに対する抗議だろうか、ある朝地下鉄千代田線下り列車の女性専用車両において、男性が全裸になって踊り狂うという事案が発生した。犯人は26歳のフリーターで警察の取り調べに対して「いつか女性専用車両にサリン撒いてやる」と話したという。


男が持っていたスマートフォンでイギリスのテクノバンド"The Prodigy"の"Smack My Bitch Up"という曲を流していたそうだが、この曲は


"Change my pitch up, Smack my bitch up"


という台詞を繰り返す曲で、簡単に意訳すると


「気合いを入れて、クソ女をぶん殴れ」


という意味だが、無産階級の男がこの英語の意味を理解して流したのかは不明だ。ただ単にノれるからという可能性もある。


この事件に触発されたのか、他の路線の女性専用車両でも同様の事件が起こるようになった。単独ではなく、複数で犯行に及ぶ者もいた。


最近になって電車内どころか駅構内で犯行に及ぶ者も出るようになった。記憶に新しいのは池袋駅で約20人が全裸で踊り狂う事件だろうか。


彼らは上がることは不可能だが、下にならいくらでも落ちられると考えたのだろう。どうせ犯罪者扱いされるなら、できる限りの醜態を晒して捕まろうと思ったのかもしれない。


過去にそういう思考の人間が地下鉄や街中でナイフを振り回して人々を殺傷する事件はよくあった。


現在では各々違った特徴を持った使い道の無い己のピストルを公衆で振り回している。


場所を変えて、人を増やしながら続く抗議活動。


ナパーム弾はもはや彼らそのものである。

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