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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第七幕 衝撃と後悔
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第一話 前編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 夏休みが明け、学校に子どもたちと給食が戻って来た

 数日間は、提出された夏休みの宿題と、夏休み気分の抜けない子どもたちの相手に、労力のほとんどを持って行かれるのが毎年恒例だ

 それもやっと落ち着いた頃

 

 藤沢先生


 給食が終わって、暑さにぶーたれる子どもたちと山積みにされた連絡帳を片付けてから職員室に行くと、小林先生に声をかけられた

 小林先生は僕の一つ年上で、六年生の担任

 見るからに、体育科出身ですって感じの、短髪と日焼けと白い歯が似合う男の先生だ

 女子バスケットボールクラブの顧問もしており、オマセな女子児童からの人気は、自他ともに認めるところである

 バレンタインの時なんかは、


 授業に関係ないものは、持ってきちゃダメなんだけどなぁ


 とか言いながら、大量のチョコレートのプレゼントをしっかりともらっていた

 そんな小林先生とは、高学年全体での打ち合わせなどで少し話すくらいで、普段は挨拶する程度の仲だ

 つまり今、僕に話しかけてきた理由は、間もなく練習が始まる学習発表会のことで、打ち合わせがしたいからだろう


 はい、と返事をすると、小林先生が白い歯をむき出しにして、こちらに大股で近づいて来るのが見えた

 思わずたじろいだが、小林先生はそんなことお構いなしに、僕の耳元に顔を近づける


 藤沢先生、おばけとか幽霊って信じます?


 僕は全く想定外の質問に軽い衝撃を受け、目をシパシパさせた

 小林先生は、日に焼けた頬をつり上げて笑う


 福井先生、そういうオカルトが大好きなんです


 はあ、と間の抜けた返事が漏れる

 話が読めない

 福井先生は今年度から赴任して来た、若い女の先生だ

 可愛らしい笑顔で、愛想が良いので、先生からも児童からも慕われている


 S県に、化け物を封印している大岩があるのご存知です?


 もちろん知っている

 大学生の時、悠や瞬と行ったことがあるが、立入禁止になっていて、大岩を拝むことはできなかった


 はい

 でも立入禁止になっていて、大岩までは行けませんよ


 やっぱり、という顔に相手がなるのを見て、僕は自分の迂闊さに気がついた


 藤沢先生もオカルト好きでしたか

 実は、あの大岩を管理する神社の神主が、最近世代交代しましてね、一般公開されるようになったんですよ


 小林先生の目が爛々と輝く

 大岩の一般公開は知らなかった

 そういう情報収集は、基本的に悠がやってたから

 悠も知らなかったのかな?

 まぁそんな所に赴かなくても、十分過ぎるほど怪異に遭ってるから、わざわざ調べなくなったのかもしれない


 それと、僕になんの関係が?


 嫌な予感しかしないが、聞かないわけにもいかない


 一緒に行ってもらえませんか?

 写真を撮ってほしいんです

 大岩と私を

 自撮りでは大岩全体が映りませんし、あいにく三脚も持っていないので、撮影係が必要なんです


 な、なんで僕なんですか?


 失礼ですが、暇そうだからです

 私は今日はクラブ活動もありませんし、授業が終わり次第、出発できます

 藤沢先生は今日、何かご用事でも?


 本当に失礼なやつだ

 確かにその通りなんだけど

 クラブの顧問もしてないから、授業が終わったらさっさと帰るか、ダラダラ書類を片付けていることが多い


 いえ、特にないですけど


 では行きましょう

 車は私が出します

 終わったら、夕飯ご馳走しますよ


 そう得意げに言うと、再びギラついた顔を僕に近づけてきた


 美人の彼女にも、男らしいところ見せないと


 その言葉に、思わず言葉を失ってしまう

 夏祭りの時、遭遇した教え子たちが再開した学校で、こうふれ回ったのだ


 藤沢せんせーの彼女は超美人


 他にも、葵と一緒のところを見ていた学校の関係者がいたものだから、それが事実だと裏付け始めてしまい、否定する機会も与えられぬまま、あっという間にその情報は校内に周知されてしまった


 それはともかく、葵は、心霊スポットに行く行かないで男を測ったりしない

 こいつ、何も知らないくせに、なんでこんな自信満々なんだ?

 恐ろしいまでの体育会系だ

 悠もなかなか強引だけど、何か違う

 僕はやはり、このタイプは基本的には苦手らしい


 こうして、断る隙もないまま、僕の放課後の予定は決まってしまった


 福井先生がオカルト好き

 大岩の写真

 男らしいところ見せないと


 なるほど、その写真を福井先生に見せて関心を引きたいわけだな

 あわよくば今度一緒に、なんて誘うつもりなのかもしれない

 予鈴が鳴ったので、急いで机から教科書と教材を取り出す

 廊下を歩きながら、ため息をついた


 どうしよう

 葵からは再三、変な所に行っちゃダメって言われてるし、断ろうかな

 用事があるって言えば良かった


 後悔が頭の中をぐるぐると周回する

 同時に僕は、つい先週に経験したばかりの怪異

 異世界ドライブのことを思い出していた

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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