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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第五幕 執着と焦燥
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第四話 後編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 瞬、葵


 息を切らしながら、悠が戻って来た


 この辺のは、みんなで全部調べたと思うけど、いねーわ

 つーか、しんど

 やっぱぜん(・・)くらいすげー霊に取り憑かれてっとちげーわ


 悠は、フルマラソン完走したランナーのように、膝に手を置いて肩で呼吸している


 ありがとう、悠さん

 無理しないで休んでね


 葵はそう言って、呼吸に合わせて上下に動く悠の頭をそっと両手で包み、自分の額を当てた


 ぜん(・・)もお疲れ様

 悠さんと一緒で良かったね


 すると、今の今までゼーゼーとしてたやつが、ピタリと止まり、ガバリと身体を起こすと、ギクシャクとデカい独り言を言い始めた


 い、いやー、それにしてもあちーな

 地球温暖化だな

 めっちゃ温暖してる

 これぞ温暖化

 まじで温暖化

 めっちゃムシムシするし

 さっきの雨のせいだな

 湿度ハンパねー


 顔を真っ赤にして、手で大げさにパタパタと仰いでいる

 かえって暑いだろう

 悠は、ずっとぜん(・・)を取り憑かせておきたい、とでも思っているに違いない


 雨?


 あー、葵は知らねーか

 この辺だけバーって降ったみたいなんだよな

 ゲリラ豪雨

 一瞬だったけど


 葵は目を見開いた状態で固まった


 それだよ


 ん?


 雨だよ

 降ったのって何時くらい?


 ええっと


 六時過ぎだな

 二、三分降った


 ああー

 下見に向かう時には、まだ草とか濡れてたよな

 水たまりもあったし


 葵の大きな瞳が、一段と輝く


 それだよ

 水たまりに入口ができたんだ

 雨が乾いちゃって閉ざされた

 日陰とか、くぼみとかに水たまり残ってないかな

 そこがきっと、春樹さんに繋がってるよ


 春樹がいないと悠に近づいた時に、水たまりを踏んだのを思い出す

 ただの水たまり

 しかし、否が応でもあっちの世界との関わりを持ってしまう春樹にとって、それは決して踏み入りたくはなかった入口であったのだろう

 

 これは何も、オカルトに限ったことではない

 ある人間にとっては何でもないこと、取るに足りないことでも、他の人間からすれば重要で、時に執拗なまでの執着や根深いトラウマを生むきっかけになり得るのだ


 あそこに、春樹は


 ごめん、何となくなんだけど、これが正解な気がするんだ

 水たまり探そう


 俺と悠は、顔を見合わせて笑った


 葵が何となくって思うなら


 間違いねぇな


 俺たちが驚愕し、感嘆し、感心し、終いには呆れてしまうのは、いつも葵の何となく、だ


 葵が守護霊たちに、水たまりにできた入口を探すように頼む

 水たまりなら、目視可能だから俺でも探せる

 守護霊たちは出店が並ぶ人混みの中を、人間たちは木々の間を別れて捜索する

 ますます人でごった返してきた中を、下を向いて歩き回るのは効率が悪い

 自由に人混みも通過できる守護霊たちに任せる方が良いだろう


 再び腕時計を見る

 空はまだ明るさを残しているが、ここからは自由落下速度で夜へと向かっていくだろう

 春樹は何してる?

 無事、なんだよな?

 

 一番良いのは、すぐに引き戻して上げることだから


 葵の言葉が脳裏によぎる

 春樹が消えて、間もなく三〇分が経過する


 明確な手段を得た安堵

 その上に、不安と焦燥が空の闇と共に降りて来た


 花火が轟音とともに打ち上がるまで、


 あと

 

 一時間

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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