表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
取り憑かれて  作者: 恵 家里
第四幕 習慣と執着
41/371

第四話 後編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 二セットが終了し、セットカウント一対一

 馬鹿みたいにラリーが続いて、やっと一点取ったかと思ったら、あっという間にサーブ権取り返されてサービスエースで決められる

 こっちの対抗手段は、バレーの常識無視をすること

 とにかく相手コートにボールをねじ込むことに専念

 頭や足を使うのは当たり前、リズム崩して隙を作ったところにボールを叩き込む

 定石通りに攻めてくる相手に、ゲリラ戦を挑んでいる感覚だ


 きっつーーーー


 ネットの支柱の役割も担っているパイプテントになだれ込み、あっという間に空になったペットボトルを放りだす

 相手チームは反対側の支柱兼テントで、同じようにへたり込んでいる

 足が取られる砂と灼熱の太陽にサンドされて、そもそも体力の消耗がハンパない

 それに加え、コートを縦横無尽に駆け回っては相手を翻弄する戦法を取っていては、いくら休憩をとっても追いつかない

 一セット目は何とか取れたが、疲労が足からじわじわと蝕んでいった二セット目は、圧倒されてしまった

 相手も疲れているようだが、このままでは次のセットも同様の流れになることは、始める前から分かる

 何とか戦略を練らなければ


 どーーするよ?瞬


 砂の上に仰向けに寝転ぶ

 頭から足の先までが、ガンガンと波打つ

 吸った空気が、肺胞を熱でパンパンにする

 既に、生存可能な体温の限界は超えているにも関わらず、温度上昇はとどまることを知らない

 いくら熱気を吐き出しても、背中から地熱が湧き上がってきて、吐き出した分をしっかり埋めているようだ


 あ、無理だ

 戦略なんて練れる状態じゃねー

 練ったところで動けねー


 だな


 短い瞬の返事

 あれ、オレ今喋ってた?

 やべー

 もう考えてんのか喋ってんのかも分かんねー


 向こうも大分(だいぶ)疲れているし、お互いの動きにも慣れてきたところだ

 実行不可能な作戦に頭使うより、できること続けた方がいい


 勝てっかなー、それで


 勝てなきゃ殺す


 平然と人の人生終わらせといて、瞬は、勢い良くペットボトルを煽る

 この場合、殺されるのはやはりオレですかね?


 一分前ーー


 春樹が隣にも聞こえるように、号令をかける


 行くか


 空のペットボトルを春樹に押し付けて、瞬が立ち上がった

 最低残り二セット

 やべー、ゲロ吐きそう


 両チームがコートに入る

 全員が全員、疲労と日差しに焼かれているのが見て取れた


 サーブ権は相手チームから

 大志がエンドラインまで下がってボールを構える

 ちくしょー

 やるっきゃねー


 あ、休憩終わっちゃった?


 聞き慣れた声がした

 全員がその方向を見る


 葵


 葵がクーラーボックスを抱えて、こっちに歩いて来ていた

 シャワーを浴びて、夏らしい白いワンピースに着替えている

 麦わら帽子に赤いサンダル、化粧もしている

 身体中が、余計に焼かれる感覚を覚えた


 葵はよいしょ、と春樹の隣にクーラーボックスを置くと、大志と康介にこんにちは、と挨拶した


 暑いですねえ

 ちゃんと休憩取れてます?


 そう言って、クーラーボックスから箱入りのアイスを取り出した


 宜しければ、召し上がりませんか?


 質問されている二人ときたら、さっきから口半開きで呆けたままフリーズ

 相当、頭の回線が混み合ってるようだ

 まぁオレも似たようなもんだけど


 あ、僕食べたい

 ターイム


 春樹が、審判の権限を遺憾なく発動する


 ソーダバー、バニラバー、スイカバー、夏の風物詩


 一口目、口に入れた瞬間蒸発

 二口目、口に冷たさの痕跡を残して消滅

 三口目、やっと味と氷の食感

 四口目、棒を舐める


 当然、全員即おかわり

 二本目をしっかり味わうオレたちの首筋に、冷たいタオルが押し当てられる


 真っ赤だよ、大丈夫?


 無茶しないでよね


 見てるだけでも疲れちゃうでしょ


 それぞれに声をかけていき、大志と康介にもタオルに巻かれたアイスノンを手渡す


 熱中症、気を付けて下さいね


 せっかくのアイスノンがみるみる解けていっているようだ


 中にまだ飲み物入ってますから、次の休憩の時にでも飲んで下さい


 あ、ありがとうございます

 お金


 大志が、無理やり舌を動かして、言葉を引っ張り出している


 いいですいいです

 お相手していただいているお礼です


 ほほのは、ほへはひは


 葵の言葉にツッコミを入れる

 四本目のアイスを口いっぱいに詰め込んでいたので、は行ばかりになってしまった


 子どもか、オレたちは


 そう言ったのが分ったのか、葵はいつものように大口開けておおげさに笑い、手を振って店に戻って行った

 全員が、その後ろ姿を見送る

 お相手してくれているらしい二人も、暫く憮然としていたが、お互い顔を見合わせると、どちらからともなく笑う


 絶対、勝たないとだな


 大志が鼻をこすりながら言う


 ああ、俄然やる気出てきた


 康介が葵からもらったタオルを首に巻く


 始めようぜ


 颯爽とコートに向かう二人

 その背中に、オレは

 忽然と、苛立ちを覚えた

 漠然と、癪に障るものがあった

 判然とした敵対心

 瞭然たる目標


 死んでも勝ってやる


 最初からそう言ってる


 瞬が答えた

 あ、オレ声出てた?


 瞬とともに立ち上がる

 蓄積分の疲労を差し引くと、見かけの体力は初期設定にリセットされた

 アイスとタオルの効果か

 あの二人の士気のせいか

 引っ張り出された敵意のお陰か


 葵の

 ためか


 動機と意欲は、見かけ以上に膨れ上がっている


 紹介?

 んなことしてられっか

 調子乗ってんじゃねー

 葵はみんなに優しいんだよ

 とっとと諦めて帰りやがれ


 勝って食って飲んで

 夜は星空見ながら喋って

 いつもみたいに、この特別な日を、

 四人で過ごすんだ


 オレがバカ言って

 春樹がノってきて

 瞬がツッコんで

 葵が


 大口開けて笑うんだ


 崩したくない

 変えたくない


 きっとオレが一番

 この日常に、


 執着してるんだ

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ