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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第二十幕 混沌と幸福
341/348

第六話 後編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 目を開ける

 さっきまでよりは、幾分明るい

 古い木と埃の匂い

 右頬がやたら冷たいのは、床と密着しているせいだ

 引き剥がして立ち上がる

 目に映る光景が、実家にあるオレの部屋だと認識したのと同時

 頭の中に、懐かしい記憶が次々と映し出された

 昔の部屋のレイアウト

 殴って付けた壁の凹み

 鉄板の隠れ場所だった押入れ

 夜中にトイレだと何度も起こされた思い出


 薄暗い部屋を歩く

 垂れ下がった紐を引っ張り、電気をつける

 窓に映った自分の影に、何となくホッとした

 途端、血量が増す

 心音が高まる

 オレを形作った様々な過去たちが、次々と全身に送り届けられていくのを感じた

 実に、晴れやかな気持ちだった

 最高に頭がスッキリしていた

 ゆっくりと息を吸い、長い長いため息をつく


 しっかりめに、覚えてんじゃねーか


 覚悟していた

 忘れること

 なんでモヤモヤしてるのか分からねーまま、それをずっと考えて生きていくこと

 でも

 ちゃんと覚えていた

 忘れてなどいなかった

 この上ない安堵で、口元と気が緩んだ

 舌打ちしてやる

 笑いが込み上げてくるのを抑えられない


 何だよ

 オレの覚悟を返せってのな

 ぜん(・・)


 ぜんって?


 突然、後ろから声がした

 驚いて振り返ると、部屋の入口に、妹がいた


 何でもねー


 そう言いかけて、やめた

 何でもねーわけがねー

 あいつは、親友みてーに大切な、家族だ


 にやにやして、キモい


 目を逸らしながら妹が言う

 これでもまぁ、いつもよりかなり控えめな言い方だ

 人を見下すことに、なんの抵抗感も持たず、あの瞬にすら一ミリの恐れも抱かない

 年は六つ下だが、性格はクールを通り越して冷徹

 オレがオカルトに奔走する姿を、遠くから涼しやかに見守っては、鮮烈な物言いをする、瞬の女版

 生まれた頃はあんなにちっこくて、自分で歩くようになってからは、にぃににぃにって付いて回って可愛かったのに

 時の流れとは、なんとも残酷無慈悲だ


 おめーさ、んなだから男にフられんだよ


 いつもの調子で言ったつもりだったが、妹は少し面食らったような表情になった

 しかし、すぐに元の仏頂面に戻る

 もー少しニコニコしてりゃーいーのに


 彼氏はいらない

 結婚相手は、その時が来たら自分で選ぶ

 人のことより自分の心配をしろ


 変わんねーなー、おめーは


 妹は少し、伏し目がちになった

 何故か、笑っているように見えた

 その理由を聞こうとしたが、妹の方が早かった


 お母さんが、ご飯どうするのって


 あーそーだな

 そろそろ迎えが来る頃だと思うんだけどよー


 さっき外に、車が停まってた


 おータイミングばっちしだな

 さっすがオレの親友


 いつもの毒舌が飛んでこない

 さっきから様子が少しおかしい

 突っ立ったままで動かない、妹の顔を覗いた


 何ぼーっとしてんだ?


 ガラにもなくモジモジする妹の胸中を察する

 ははーん、なるほど

 どんなやつにでも、弱点はある

 兄という特権階級でもって、その弱点を突いてやることにした


 どうせお袋のことだから、アホほど夕飯作ってんだろ?

 二人にも食ってってもらうか

 おめーの席の隣、春樹な


 ガバリと上がった赤い顔に、失笑した

 隙ありとばかりに、頭をワシワシと撫でる


 ほら、早く行こーぜ

 実咲(みさき)

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問


次回、明日投稿予定

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