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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第二十幕 混沌と幸福
332/371

第二話 前編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 橘さんと椿が風呂から上がって来た時、オレと春樹は仲良くデコを腫らしながら、残りの料理と酒を平らげていた


 二人とも、起きてましたか

 ちょうど良かったです

 二次会と参りましょう


 そいちろ

 そん前に聞くことがあろうも

 おかしかろ?明らかに


 瞬くんと葵先生が仲直りされたのは、当然でしょう


 ちげっつの

 寝とったやつら二人が揃ってデコを負傷しとる

 ふつーに寝とったら、あぁはならんがぁ


 椿くん

 違和感に気づいたとしても、聞かずにそっとしておくことも大事なことなのですよ

 人には誰しも、蒸し返してほしくない過去の一つや二つあるものです


 そいちろにもあるん?


 ええ、もちろん

 あれは、私が小学校五年の時のことでした

 帰宅途中、急激な腹痛に襲われたのです

 食事を前にして、申し上げることではありませんので、これ以上は控えさせていただきますが、家に帰ってトイレと脱衣所を大変なことにしてしまった、とだけ申し上げておきましょう

 それだけでも十分重罪ですが、私はあまつさえ、それを弟のせいにしたのです

 今思い出しても、あの日の私は、なんと愚かで情けなかったのだと、ため息が出ます


 まぁ、言うてもまだ小坊だからのぅ


 成人してからもありますよ


 漏らしたん?


 ええ

 椿くんと仕事をするようになって、幾度となく


 聞かなぁ良かった


 そう

 人である以上、清廉潔白なんてあり得ません

 しかし、だからこそ、人は互いに惹かれ合い、必要とし合えるのですよ


 そげなもんかのぅ


 人はどこかで、自分の欠点汚点も全て受け止めて欲しいと、相手に望むものなのです

 今まさに私は、過去の過ちを告白し、椿くんから寛大な啓示を賜ったことで、過去の全てが認められました

 実に晴れやかな心持ちです


 そげか


 椿の相槌が呆れている

 世間一般的にはどう考えても、橘さんが至極真っ当な人間であるはずなのだが、この二人のやりとりだけ見てると、全くそうは思えないのだから不思議だ

 社会の目、公衆の面前という言葉があることからも分かるように、仕事とプライベート、公私をしっかり分けるのは、大人として最低限のマナーと言えよう

 オレだって、社会的にはハイスペックの超イケメン営業マンで通っているが、一度(ひとたび)葵の料理の匂いを嗅げば、たちまち雄弁で気遣い上手なナイスガイになる

 まぁ、たまーにこうやって瞬に虐げられながら、寛大で寛容な心で対応してるってわけ


 いやまぁ、日常茶飯事だから、気にしてくれなくても良い


 オレはそう言って、デコを擦った

 これは当然、瞬の中指にやられたものだ

 橘さんと椿が戻って来る少し前、オレの寝言で飛び起きた春樹に、オレは飛び起きた

 奇跡の連鎖反応に感動することもままならぬうちに、オレと春樹の目の前に瞬の手が出現

 それが、デコピンをする直前の形を成していると気付いた時には、遅かった

 鉛玉を正面からぶち込まれたような衝撃が炸裂

 額がえぐられるような鋭痛と頭蓋骨が粉々にされるような鈍痛が爆走

 首がミシミシと悲鳴を上げ、反り返った喉が詰まった

 脳みそかプリンのように揺れ、世界が回り、天地がひっくり返る

 一瞬意識が飛び、数秒昏睡し、数分朦朧となった

 三途の川で、水切りして遊んだ経験のある人間は、そう多くないだろう


 さて、意識がこっちの世界に戻って来たところで、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのかと質問したいところだが、生憎(あいにく)そんな雰囲気ではなかった

 葵がいたからだ

 オレたちに心配そうな視線を送りながらも、その表情は、愛しいまでの微笑みに満ちている

 そこに遠慮もなく割り込み、その全てをかっ攫っていく親友の姿

 見つめ合う二人

 気遣いや優しさを超えた、信頼と敬愛の世界

 結界でも張られているかのように、完全にこっちとは隔絶された、二人の世界


 こいつらまた、深めやがったな


 嬉しいやら羨ましいやら、少し恥ずかしいやらで頭を掻く

 二人に聞こえないようにため息をついて、春樹とぶさぴよちゃんをあっちの世界から引っ張り上げた

 そして、すっかり覚めてしまった酔いを、もう一度引っ張り戻そうとしていたところだ


 橘さんは食べ物がほとんどなくなったテーブルを見渡し、満足そうに頷いた


 ここを片付けて、二次会の用意をしておきます

 御三方はその間に、お風呂に入って来てください


 ありがてーですけど、さすがに男三人はキツイんじゃ?


 詰めれば何とか


 いや、そこまでして三人で入りてーわけじゃねーです


 そうなのですか


 橘さんは意外そうに目を見開いた

 橘さんは、何かオレたちのことを誤解している

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問


次回、明日投稿予定

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