第一話 前編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
来週末にゲッショクパーティ開催予定です
日曜が一番都合良いだけど、みんなはどうかな?
四人のトークルームに、葵からメッセージが入る
待ってましたとばかりに、オレはすぐに返信した
オッケー
いつもどーりな感じで、おねげーしまーす
で、欠かしちゃいけないぶさぴよちゃん
他の二人からも、了解のメッセージやスタンプが送信される
ゲッショクパーティとは、毎月一度開催されるオレたちの定例行事
葵が先生してる料理教室の、次回予告用と試作を兼ねて作るメニューを、オレたちで酒持ち寄って食おうっていうお馴染みの企画だ
名前は葵が決めた
第二回目の開催時に、試食会とかじゃ味気ないから何か名前付けようって
毎月やる試食会でゲッショク
それに、月食ってのは昔から、何かこの世とは思えない、畏怖や恐怖の象徴みたいな、オカルト好きには堪らない現象って相場が決まっている
次の開催が第一三回目
オレが地元に帰ってきて、葵と出会って、一年が経過した
四人とも、仕事の都合が合わなくて、しょっちゅう四人揃うなんてことはなかったけど、このゲッショクパーティだけは、誰かが欠けることなく、必ず毎月開催された
オレはほぼ毎週末、肝試しだ宅飲みだママの店だ誘っては、四人で、多くは三人で、昔からほぼ確実に捕まる瞬と二人で、いろんなことを見て、聞いて、話して、やっぱり取り憑かれて、笑った
離れていた四年間を埋めるように、四人のこれからがずっと続くように
葵が、オレたちといることを、当たり前の習慣と思えるように
まぁこのオレの、まめまめしさを嫉妬するやつらは、オレを暇人呼ばわりしたり、だからお金が貯まらないんだよ、とか頼んでもないことを言ってくるわけだけど
葵自身の話も、この一年でたくさん聞けた
葵の話の全ては驚愕と感心、そして疑問と衝撃の連続だった
まず、葵に取り憑いている守護霊は、びびちゃんとぜんだけではない
総勢二九
単位は人、なのか、体、なのかよく分からない
想像を遥かに超える数過ぎて、よく分からない
葵が新たに守護霊を宿す時は、向こうの方から葵ん中にいたいって言ってくるそうだ
気持ちはすげー分かる
で、来るもの拒まずで、現在まででコツコツと増えていったようだ
葵は、守護霊全員に名前を付けている
生前の話を聞いて、それに因んだものを付けることもあれば、全く別の名前をインスピレーションで付けることもあるらしい
名前は、分かりやすく呼びやすく親しみやすいものを、という葵なりのこだわりがあるようで、そのセンスは抜群、と本人は思っているようだ
が、真に遺憾であることに、オレたちの全体評価は芳しくない
もも
一〇歳位の少女
理屈は分からないが、あっちの世界の時間の流れを制御できるらしい
よく神隠しとかで起こる、浦島太郎現象が任意でできるという
葵が霊たちと話す時はいつも何時間、何日と長話をしているんだけど、ももの力で、その時間はこっちの世界の数秒間で収まっている
ぜんは双子の弟、双子が忌み嫌われる時代に生まれた
一度は母親に守られて、その命と引換えに生きながらえたみたいなんだけど、発狂した父が神の力を得る儀式やら何かをしたとかで、それによって姉弟もろとも殺されてしまったっていう、何ともひでー話
その因果でか、ももとぜんは死ぬと同時にそれぞれ神の力を得たらしい
ももは時間を制御する力、ぜんは本質を見る力
二人を取り巻く怨念や邪念、恐らく父親が犯した罪とその反動みたいなのが、全部ごちゃごちゃに混ざって、それがまた二人の力を強くしてしまった
消えることもできずに、この世で、悠久の時間を彷徨い続けていたらしい
死んでも死にきれないとは、この姉弟の場合、比喩でも何でもない
ぜん
一〇歳位の少年
人や物の本質、真の姿を見ることができる
姉のももとともに父に殺され、神の力を得た
もももぜんも、葵を母のように敬愛しているのが分かる
きっと彷徨っていた二人を救ったのが葵で、そこにはきっとすげードラマがあったんだろうな、と勝手に想像ムフフしてる
ぜんは葵を喜ばせたくて神の力をこっちの世界で使ってしまう
それが原因で、葵は恋人との関係が悪化して、精神を病み、ぜんを責めちまう
このことを葵はずっと後悔してるようだ
オレがある時、持ってきた曰く付きの御札
ぜんは、それに書かれていることから、それが収められている場所、更には何をすれば良いかまで教えてくれた
ってか、正確にはイエスノーの質問に首振って答えてただけなんだけど、オレ、感動しちまって
おめーすっげーな
ももの後くっついてくだけかと思ってたら、すげー特技持ってんじゃん
って、いつもの調子でぜんに言ったら、何かすげー喜んでもらったみたいで、以来、ぜんは出てくたびに、オレの周りをチョロつくことが多くなった
びび
白い大蛇
一番最初に葵に取り憑いた、元山の神、らしい
葵が生まれ育った田舎の山が、形成された頃にうまれたらしいが、葵と遊ぶのが余程楽しかったのか、葵に取り憑いてでもついて行くようになり、取り憑き時間がどんどん長くなり、現在では取り憑きっぱなし状態になったっつー
大抵の悪霊やら怨霊やらは、びびちゃんの一睨みで退散する
ちなみに大蛇、ウワバミは大酒飲みの意味もあって、酒好きの葵にはピッタリだと瞬に言われているが、オレはびびちゃんのせいで酒好きになったんじゃねーのか、とも思う
ぎん
白銀の狐
四〇歳位のスラリとした美しい女性の姿になることもある
元は狐だったんたけど、同時期に非業の死を遂げた人間の霊と混ざり合っちゃってるとか
春樹がいたくお気に入りなようで、狐の姿で首にまとわりついたり、人間の姿で頭を撫でたりしては春樹を照れさせている
大学ん時の自殺の名所の崖で、オレに取り憑いて春樹を助けたのは、ぎんだったんじゃねーかなーって勝手に思ってる
りゅう
真紅の竜
元は人間の男性だったが、りゅうと呼ばれているうちに本当に竜になってしまったっつー
自由過ぎんだろ
普段は丸くなって寝てばかりらしいが、やる時はやるやつ、らしい
いと
黄金色の蜘蛛
人にも人でないものにも使用可能な粘性の強い糸を出せるらしい
葵の頬がお気に入りの場所のようで、オレが葵に抱きつくと現れて、人が大げさに飛び退くのを見て笑ってる、悪趣味なやつだ
しろ
灰色の鴉
元は白かったが、悪霊などをついばむたびに徐々に黒みを増しているようだ
そのうち黒いのに、しろと呼ばなければならない事態になることを葵は危惧している
細かな情報収集はできないが、行動範囲が広い
元恋人や変な奴らが辺りをうろついていないか、あの事件の後、暫く偵察してくれてたらしいが、ちゃんと見分けられるのは霊だけみたいなので、意味があったかどうかは謎
かい
山吹色の蝦夷鹿
葵がエゾシカをトナカイと勘違いしたため、この名前になった
いや、トナカイだとしても、その名前はどうかと思うけど
脚力に優れ、足場の悪い所でも俊敏に駆けることができるので、帰りが遅くなった夜、憑依させて凄まじい速さで帰宅するらしい
きね
桃色の兎
これと言った特技はないが、ピンクのウサギってだけで癒やされる
ということで、葵が昼寝している時、よくお腹に乗っかっている
守護霊の中で、誰かと入れ替わることができるなら、オレは間違いなくきねを選ぶ
りり
巨大なトラ猫
普段はゴロゴロ葵の膝で寝てばかりだが、攻撃体制になると巨大で獰猛なトラと化す、らしい
見たことはないが
たも《・・》
玉虫色の蜥蜴
葵の肩がお気に入りの場所のようで、やっぱりオレが葵に抱きこうとすると現れやがる
みみ
透けるような青の鼠
ほぼ身体は透けており、葵はよく見失っては捜索するが、呼べばすぐ出てくる
最初から呼べよ、と誰もが思う
小さな穴や通路の探索をお願いされることが多い
他の霊たちも大きさは自由自在に変えられるので、別にみみでなくても良いのだが、鼠の方がそれっぽいという理由でみみが駆り出される
そしてすぐ捜索される
おうじじ
自称元王子の翁
立派な白髭ともじゃもじゃの白髪、サンタの格好がさぞかし似合うんじゃねーかっていう
生前はどこかの国の王子だったが、戦争に負け国を追われてとか言い張る残念サンタ
謎のカリスマ性があり、たくさんいる守護霊達のまとめ役になっており、葵が霊たちのいざこざに悩むことないよう配慮サンタしてる
さりばあ
自称魔女の媼
媼、と言ってはいるが見た目は五〇代の美しい女性らしい
まだお目にかかったことはない
葵も知らないうちに葵に取り憑き、いつの間にか消えては、また取り憑くを繰り返している
他の霊たちとほとんど関わることはなく、葵が何を話しかけても、長い煙管でタバコをふかして美しく微笑むだけだそうだ
口を開いたかと思えば、悠久の時を生きているような物言いをし、全てが謎に包まれている、何とも妖艶な美女、というオレの妄想
以上一四の霊たちが、人間に干渉できる何らかの能力を持っている
ほか一五人の人間の霊が、葵には取り憑いていて、葵に住み着いて話し相手になったり、ただ居心地がいいと遊んでいるらしい
全くもって羨ましいやつらだが、霊になってこっちの世界にとどまってるって時点で、多分、生前は壮絶な人生だったと思われる
毎晩、ベッドに入った後で、全員と話をするのが葵の習慣のようだ
他にも料理している時、移動中、ちょっと誰かと話したくなったり、逆に霊たちから話しかけてきた時、ちょいちょいあっちの世界に行っている
数分で終わることもあれば、何時間も話したり遊んだりすることもあるようだが、ももの力でそのへんの時間感覚はないに等しい
お陰で葵は、認知症テストに引っかかる勢いで、現在が何月何日何時なのか、常に確認している状態だ
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