第七話 後編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
そもそも、いつの間に教祖取り憑かせてたんだ?
花火が打ち上がって、八起さん現れて話をしたでしょう?
その後だよ
あ、あの教祖が消えたのって葵の仕業だったのか
ほら、椿さんが言ってたじゃない
隠し部屋で、あたしがした鎮魂のやり方
自分の意識を、対象に向けて放ってたって
魂に取り憑いて、あたしの意識のフィールドに集めてたって言ってた
あたしそれを聞いてね、ああ、そうかって納得しちゃったの
ずっと鎮魂は、あたしが取り憑かれて行われるものだと思ってたから
でも、少なくともあの時は、あたしがあの四体の人食いに取り憑いていたんだよ
同じことができれば、八起さんを止められるって思った
本当は花火を打ち上げる前にできれば良かったんだけど、間に合わなくて
焦ってたせいもあるんだけど
無意識にできてたことって、意識した途端にできなくなっちゃうんだよねえ
まーそんなもんだよな
でも教祖の魂に取り憑いて、って言っても、教祖は葵の意識の中にいたわけだろ?
大丈夫だったのか?
うん
この子たちと仲良くしてくれてたみたいだよ
仲良く、ねえ?
八起さんのご先祖様のことが分かったのも、きっと事前にこの子たちが話を聞いてくれてたからだと思うの
ああ
あの映像は、葵の守護霊たちを含めた情報の総集編ってことか
そんな感じ
瞬
扉からふっ飛ばされた時さ、葵から直接流れてきた映像って見えた?
ああ
多分、異世界ドライブと同じ現象が起きたんだろうな
そっかぁ
最初は異世界の出来事を見ているみたいだったのにさ、だんだん本当に自分が、その世界にで生きていたような感覚になってきたんだよね
憑依と取り憑かれるのとは違うって説明のところなんか、あぁそっかぁって納得しちゃったし
言葉は時代によって意味は変わってくるんだろうけど、こうやってちゃんと区別されてたことはさ、霊って存在が、昔は身近な存在だったんだなぁって思うんだ
確かになー
あの映像ってさ、めちゃくちゃ長い時間見てた気がするけど、実際はふっ飛ばされてる間に全部頭に流れ込んで来たやつだよな?
うん
僕、ふっ飛ばされてたこと忘れてて、現実に意識が戻ってすぐ、死ぬかと思った
オレもー
いてーわ息できねーわ
橘さんがあのタイミングで来てくれてなかったら、ヤバかった
ってか瞬、おめー
ずっと生身だったんだろ?
よく耐えれたな
俺が吹っ飛んだのは、お前らにぶつかって来られたせいだ
ほとんど床を転がっただけだし、悪霊からのダメージもねぇからな
そーだった
ってかおめー
ダメージっていやーオオアマウワテバラミスにさ、
悠、話が逸れる
まずは教祖の話だ
いつもは許容する悠の脱線だが、止めざるを得なかった
オオアマウワテバラミスという単語に、葵が明らかな反応を示したからだ
葵は扉が開いてから、教祖をずっと取り憑かせ、その上でオオアマウワテバラミスを憑依させている
以前、ぜんを憑依させてチラシに印刷されていた呪詛を読んだ時、葵はその音声は聞こえないと言っていた
つまり、今回俺たちに流れてきた映像のように、何を言っているかは聞こえないが、何となく内容は伝わってくる状態だったのだろう
もし、オオアマウワテバラミスを憑依させている時の映像が、同様に葵に見えていたのだとしたら
いろいろ聞きたかったんだろうけど、聞かないでくれてありがとう
この初めの言葉は、何より葵自身がずっと聞きたくてたまらなかったことがあるからこそ、言えたことではないだろうか
聡いこいつのことだ
俺が左手首を折ったことも、オオアマウワテバラミスと関係あると気づいたものの、聞くに聞けない心境だったのかもしれない
そーそー
大事な話あった
教祖の親父がさ、最期にやった術、あっただろ?
亲属撤消、だな
そーそれ
ぜんがさ、教えてくれたんだよ
亲属撤消について
ぜんが?
ぜんとももの親父って、やり手のシャーマンだっただろ?
夜な夜な木箱を持って帰っては、二人が寝てるうちに何かの儀式をしてた
この最終形態がさ、亲属撤消だったんだよ
ぜんとももの親父は、二人を使って復讐しようとしてたわけではなかった
自分の肉体と魂を贄に、お袋を蘇らせようとしてたんだって
そして悠は、ぜんが見せてくれたという、二人の父親の話をした
キレイ過ぎる話だな
とは言わなかった
この事実を、どう解釈するも自由だ
思い込みにすがって生きたって良い
それが自分にとって幸せなことなら
価値観や常識は、時代や環境で全く異なる中、刹那的で一方的で短絡的な事実は、それが受動的であろうが能動的であろうが大差ない
事実も知らずに可哀想だ、などと言うのは、とにかく上からものを言いたいだけの下衆か、そもそも事実などというものが、不変であると思い込んでいる阿呆だ
そいつにとっての真実は、そいつにしか存在しない
本人が不幸のどん底にいるならまだしも、幸福に満たされているところに、お節介をやいて、頼まれてもいないことを真実だとほざくやつは、独善的な気狂い以外の何者でもないのだ
葵は、悠の話に最大級の笑顔を返した
春樹は感心して頷いた後、思い出したように口を開く
そういえば、ずっとぜんって悠に取り憑きっぱなしだよね
悠は、その質問を持ってたとばかりに、再び元気よく舌を回転させ始めた
初めてぜんを見た時の感想、その凄さ、自分の秀逸さ、ぜんとの出会いの必然性、運命について個人的見解、ぜんの魅力、自分との相性、ぜんの魅力、相性、魅力、運命、相性、延々
で
ぜんはオレの守護霊になってくれたってわけ
やっと得意気に話し終えた悠を、俺と春樹は呆れ驚きながら見やった
葵は、にこにこしながらワインに口を付ける
何だか、我が子が巣立って行ったって感じなの
そう頬を赤らめながら言った
その後、紆余曲折を経て、やっと話は教祖の鎮魂をした話に戻る
えっと、それでね
勝手なことして本当に申し訳なかったって思ってる
あたしの力では扉を閉じることができないって思ったの
扉の霊だけを鎮魂できたら、可能だったのかもしれないんだけど、うまくできなくて
そうなると、あたしはこっちの世界に戻ることができなくなるって思った
だからといって、オオアマウワテバラミス様みたいなことはできないし
オオアマウワテバラミス、様は、どうやって扉を閉じたんだ?
自分に取り込んだ大量の霊を凝縮させて、一気に扉にぶつけたんだと思う
同じようなことを八起さんなら、できるんじゃないかと思って
俺は何も言わずに、葵の言葉に耳を傾けた
その一つひとつを聞き逃すまいと、集中する
時折、口に運び入れた酒や肴の味はしなかった
葵には、オオアマウワテバラミスを宿した時の記憶が残っている
その確信が、俺に胸がざわつくような不安と後ろめたさを、覚えさせたからだ
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次回、明日投稿予定




