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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第十八幕 誤解と選択
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第七話 前編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 真実(まなみ)

 このまま永遠に

 苦しみ続けるしか


 そんな考えを、真実の周りにいくらでも集まってくるイワシの大群のような怨霊とともに打ち払った

 こんなことしていても時間の無駄だ

 でも、どうすれば良い?

 他にどんな方法がある?

 切り札はもう使っちまった

 扉は出現し続ける

 石の定着が弱いやつは、扉を開く材料にされる

 真実(まなみ)みてーに強いやつは、こうして延々と取り憑かれては魂が引っ剥がされる苦しみを、味わい続けなければならない

 扉が開いて、新世界とやらが誕生したとしても、この苦しみは


 もう何度目になるか分からない無限ループの思考を繰り返す

 そんな自分に、目の前の怨霊と同じくらいの殺意が湧いた


 どれほど、こんな時を繰り返していたのか分からない

 ふと、頭の中に一筋の風が通り抜けた気がした

 ハッとした途端、自分の右手に一回り小さな手が乗っているのに気づく

 怨霊を払う手と思考をストップさせ、その小さな手の持ち主を見た


 ぜん(・・)


 ぜん(・・)が悲しそうな、心配そうな眼差しでオレを見上げていた

 もう片方の手が、オレの頬を撫でる

 自分が泣いていたことに焦り、慌てて目を擦った

 妙に頭が、スッキリしていた

 状況は何も変わってなどいなかったが、何をすべきなのかがハッキリと分かった

 ぜん(・・)のお陰か

 ぷっつり限界が来ただけか

 理由は分からなかったが、オレはできる限りの笑顔を作って、ぜん(・・)の頭を撫でた


 ぜん(・・)、ありがとうな

 もーダイジブ


 ぜん(・・)は嬉しそうに目を輝かせると、オレに引っ付いてきた

 真実(まなみ)に目をやる

 真実(まなみ)と取り憑いている怨霊が入れ替わりながら、苦痛に歪んだ顔を見せてくる

 ジリジリと心臓が焼かれるのに耐えながら、オレは伝わるかも分からない言葉を投げかけた


 真実(まなみ)、もうちょっとの辛抱な


 床を蹴る

 数メートル飛び上がったオレの身体は、滑空しながら親友たちのいる元へ飛んだ

 人間のスペックを遥かに凌駕したこの動きにも、もはや胸を躍らせている場合ではない

 何故ならオレが向かった先では、全身の血が冷え固まりそうな状況になっていたからだ

 目を真っ赤に腫らしながら、鼻をすする春樹

 やるせなさと憎悪に満ちた炎を、両目にたぎらせる瞬

 そして、その二人の目が向けられた先

 そこには、虚ろな瞳をやっと持ち上げたまぶたから覗かせながら、フラフラと起き上がる葵がいた


 鎮魂


 何がどうなって、そうなった?

 オオアマウワテバラミスを呼び寄せて、十分消耗していたはずなのに

 焦りと苛立ちによって融かされた血液が、再び全身を巡る

 心臓が泡立つような不快感で吐き気がした

 炎天下のコンクリートのようになった口からは、今にも火が吹き出そうだ

 それら全てを飲み込んで、オレは葵の前に降り立つ


 葵、おかえり

 何をすればいい?


 フラッシュバックする隙なんて与えない

 いつだって葵は、こっちの世界のことを、オレたちのことを心配してくれている

 こんな状況下での鎮魂

 そうしなければいけない理由があった

 無駄になんかさせない

 前だけ向かせろ

 葵の手を引け

 もし、これが冷酷で馬鹿な選択なのだとしたら、

 葵

 後でオレのこと、いくらでも殴って良いから


 何とも、頼もしい限りだね


 瞬きにも満たない刹那、オレの目の前には、立派なヒゲを生やした爺さんが佇んでいた


 おうじじ(・・・・)


 葵に憑依している

 ずっと葵の中にいたのだろうか

 それとも、オオアマウワテバラミスを呼び込んだ時に、他の守護霊とともに、葵から離れていたのだろうか

 おうじじ(・・・・)は、葵の守護霊の中でリーダー的存在だ

 呪術やお祓いのことにも詳しくて、春樹と瞬を助けに入った部屋の結界を破ったのもおうじじ(・・・・)

 さっきオレの頭の中を通り抜けて、我に返してくれたのも、きっと


 会場の見取り図はあるかい?


 りゅう(・・・)の憑依が解けている瞬に状況を説明し、見取り図を広げてもらう

 おうじじ(・・・・)がそれに手をかざすと、ポツポツと十数か所に豆電球のような光が灯った


 ここが、今呪符が貼られているところ


 春樹がボールペンを取り出し、光を丸で囲んだ


 君たちの手で、残りの呪符をできるだけ等間隔に張ってきてほしいんだ

 これで舞台が整う


 そう言いながら、おうじじは光が空いたスペースを指でなぞった

 春樹は言われた通り、呪符を張るべき箇所にバツ印を書き込んでいった

 オレは翻訳係に徹する


 何か、五芒星などの形にしなくて良いのでしょうか?


 出来上がった見取り図を見ながら、春樹が訪ねた

 春樹の言う通り、呪術の類はもれなく、何か特別な印を結ぶことに重きを置いていることが多い

 五芒星はその代表格だ

 おうじじ(・・・・)は、プレゼントを届けに来たサンタクロースのような微笑みをたたえながら答えた


 葵がその形に、強い思いがあるならそうしたほうが良い

 が、そうではないだろう?

 過去の偉大な術師によって、決められた印を模倣するなら、それなりに修行が必要だろうね

 葵は当然していない

 その必要もない

 君たちが張った呪符の方が、ずっと効果は高い

 葵から呪符の方に合わせてくれるよ

 もしくはその逆かな

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問


次回、明日投稿予定

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