第四話 後編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
悠さん?
つい考え込んでしまったオレを、葵が再び心配そうに覗き込んできた
大丈夫
何ともねーよ
葵の頬を手の甲でペチペチと叩く
張りのある柔らかな感触が指先から伝わり、オレは改めて、葵が最優先だという、瞬の言葉の続きを引っ張り出すことができた
二つ目
これは、俺が葵を見てそう思うだけってことなんだが
葵の命が一番大事
それなのに葵はすぐ無茶して死に急ぐ、からだろ?
少し違う
葵は、誰よりも生に執着している
生きてぇと思うからこそ、鎮魂にも耐えられるんだと思う
でも同時に、死への覚悟にも慣れきってしまってるんだ
死んでからの繋がりも、あいつにとっては当然のことだからな
選択肢に、死というコマンドが、俺たちとは違うところで当たり前に存在している
俺たちにとって、死とは結果だが、あいつにとっては手段なんだ
だから、命に関わる場面になった時、もし俺たち全員の命が助かるなら、葵はそこに一切の躊躇なく、自ら死を選ぶだろう
生きたいという葵の意志と関係なく、そう動く
逆に言えば、葵を死から遠ざけている限り、葵は全力で生きようとするはずだ
生に執着しながら死を身近に感じるって、戦国の侍みてーだな
うん
なんか分かる気がする
葵にチョンマゲ
変な想像させないでよ
そこは、させないでチョンマゲ、だろ
それ、死語だよ
おめーも、うめーこと言うようになったじゃねーか
とにかくだ
葵に死という選択肢を与えるな
そのためにも、俺たちは命の危機になんて合ってはならねぇ
どんな時でも葵を守れるくらい、自分は大丈夫なのだと余裕かましてろ
いいな?
現実に意識を戻して、葵に悟られぬよう、ため息をつく
んなこと言われても、だ
おめーは大いに誤解してっけど、世の中の人間、おめーみてーにポーカーフェイスができて当たり前のやつらばっかじゃねーんだよ
思ったことがそのまま顔に出ちゃうタイプなの、オレ
既に何回、葵に心配そうな顔させてると思ってんだ?
開演のブザーが鳴る
S県アリーナ地上部には、多目的ルームや会議室も施設内にあり、そこがスタッフや出演者の控室になっていると考えられる
最初のアーティストのステージが終わるまでは、オレと葵が各部屋を二階から見て回る役割だ
そこで音楽に紛れさせて、呪文を流しているようなやつがいれば撃破
緊急の時はスマホで連絡
今回はあくまで各チームごとに単独で動いた方が良いとのことで、過去二回、大して役に立たなかった無線機ちゃんはお役御免となった
代わりに、いざって時に使うよう、橘さんから各チームに一つずつ渡された閃光弾と、椿が全員に配ってくれた呪符が十枚ほどポケットに突っ込まれている
無駄かもしれんけど、悪霊を外に出さんよう、と言っていた
不審物の捜索と撤去をしながら、これを目立たないところに貼りまくるのも大事な任務だ
参加者が次々と会場に吸い込まれていく中、オレたちはトイレに行くフリをして、小走りで逆走する
何と言っても一番大事なのは、捕まらないことだ
顔写真付きで指名手配されている可能性だってあるが、誰かがとっ捕まった時点で、戦局が非常に危うくなることは明白だ
つまり、できるだけ不審者に思われないように、人とかち合うことを避けながら、オレたちは動かなければならない
そして、
かち合った場合は、相手の反応如何で臨機応変に対応
基本は平和的に、しかし場合によっては手段は選ばず
迅速且つ確実に
決して無理はせずに死ぬ気でやれ
とのことだ
相変わらず、無茶苦茶な無茶を当然のようにムチャブリしてきやがる親友と、それを心底真面目に受け止めるもう一人の親友の顔を思い浮かべ、思わず苦笑いをする
角を曲がったところで気配を感じ、咄嗟に死角に背中を張り付けた
この気配
間違いない
あの森では感じることができなかった気配に、今では髪の毛一本一本までがピリピリと反応している
背中にひんやりとした壁の感触
そのすぐ手前で、心臓がピンポン玉のように跳ね回っている
落ち着け
大丈夫だ
閃光弾の入ったポケットを握りしめる
喉を大きく揺らして唾を飲み込んだ時、すぐ隣から声がかけられた
悠さん
あたしのそばから、離れないでね
強張っていた身体が緩む
きつく巻き付けられていた糸が、スルリと解けたようだ
フッと息を吐いて、声の方を見る
青みがかった白目の中心にある漆黒の瞳が、この上なく頼もしい光に満ちていた
オレはわざと不敵に笑って見せ、葵の頬を弾く
それは、こっちのセリフだって
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次回、明日投稿予定




