第二話 後編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
今申し上げましたことから、我々はこの教団こそが今回の事件の黒幕だという結論に至りました
人食いは、少なくとも四年ほど前から作られており、水面下で実験が繰り返されていたのだと考えます
成り代わりとなれる人食いが完成し、ホテルの買収、リニューアルを決行
巨大な穴を開けるのに十分な魂が集まり、来月にその儀式を完遂することで、彼らの目的は達成されるのでしょう
穴を開けてからが本番、って思うんけどな
おれは、大穴開けた後がどうなるんか、全く想像できん
霊やバケモン、生身の人間がごちゃまぜの世界って、やつらはどんなもんか分かっとるんか?
分かっている、もしくは分かったつもりでいるのだろう
神か悪魔に唆されてな
神の声が聞こえましたってやつだなー
宗教の始まりに在りがちなパターン
ってか、マジでそうだったのかもって今なら思えちまうんだけど
椿くんも、そう言った意味では教祖さまの素質がお有りなのでしょうね
嬉しくねっつの
この人たちは何を求めて入信するんだろう?
日本は、八百万に神が宿っているって考えが昔から定着しているから、無宗派が多い
一つの宗教に固執して信仰しているって価値観は、馴染まねぇかもな
だからこそ、こういう新興宗教が人の心を掴んだりするんだよなー
この教団は何つって信者を獲得していったんだ?
悠が橘さん尋ねる
しかし、答えは違う人物から出た
本を朗読するように話すのは、やはり瞬だ
お前たちは選ばれた人間だ
だから、他の人間には到底見ることのできない世界を見ることができる能力を授けられた
その能力を持たぬ人間が嫉妬し、好奇な、もしくは揶揄の視線を向けているに過ぎない
我々が団結すれば、必ずしや彼らは驚き、慄き、膝をつき、頭を地に擦るであろう
選ばれしお前たちは、そのような哀れな人々を導きし神へと生まれ変わるのだ
そう言って、小さくため息をつく
いつの時代でも、人間の願望は変わらねぇ
常に選ばれたがっている
大いなる存在とやらにな
自分が選ばれるためには、他を区別しなければならねぇ
人間は、自分の立ち位置に不満があったり、弱者だという認識があると、懸命に平等を訴えるが、優位性が確立した途端に不平等を推進する生き物だ
俺はお前らとは違うと、差別し始める
その教団が、言ってることもやってることも、対象者が違うだけで、何も変わんねぇよ
見える、ことへの不満、それによる疎外感
マイノリティを逆手に取った、自己の優位性の確立
そんなのを求めて、見えるやつ、もしかしたら見てねぇやつまで入信するんだろうな
当然、全員分の驚愕の視線が、瞬に集まっていた
瞬くん、この教団をご存知だったのですか?
橘さんが、瞬きすら忘れて尋ねる
信霊教、だろ?
聞いたこともない宗教
橘さんは目を見開いた
瞬はパソコンを開いて操作すると、画面を僕らに見せる
信霊教
霊を味方につければ人生うまくいく
我々は、霊を科学に採り入れることに成功した
非現実的だ、思い込みだと、自分たちが説明できない超常現象を、理解しようとも探求しようともせずに、陳腐な物理の世界のみで生きようとする者たちよ
ここに集え
霊障、怪異と恐れられた現象を、意のままに操る術を目の当たりにし、それを自身の手にした時、あなたの人生は生まれ変わる
霊を科学に
信者でもなければ、鼻で笑いたくなるところだが、実際俺たちは、これが事実であることを目にしている
瞬くん、どうしてこれを?
Uホテルが、俺たちの部屋を襲った男の身元を調べて送ってきてたんだ
サークル団体なのかボランティア団体なのか、はたまた何かの宗教団体なのか分からないが、その活動に注力していた、とな
その時はただの責任逃れのでっち上げだと決めてかかってたんだが、もしかして、と思ってな
俺なりに追ってたんだ
全員が感心する中、悠だけは、薄笑いを浮かべながら瞬のパソコンを見つめていた
で、この信霊教に行き着いた、と
興味半分、面白半分弱、残りがちょっぴり真剣だったりするのが、いつもの悠
でも今は、少し違っていた
その瞳には、反転した文字と
仇を見つけた、というには余りに好戦的な光が写っていて、
僕は
なんだがそんな悠が、頼もしくも見えて
同時に、何かに取り憑かれてしまったようにも
思えてならなかった
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