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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第三幕 告白と習慣
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第一話 前編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 コレってもう、告白するしかないじゃん?


 悠から送られてきた、長文メッセージの締めの言葉

 これから仕事だってのに、よくもまぁ

 俺は歯磨きをしながら、だな、と打ち込んで送信する


 二文字ーーーーーー


 と、すぐに悠から返信があるが、当然スルー


 長文の内容も、昨日葵ちゃんを送った後で、散々車で聞かされたものだ


 初めて霊を見た感想、その凄さ、自分の秀逸さ、葵ちゃんとの出会いの必然性、運命について個人的見解、葵ちゃんの魅力、自分との相性、葵ちゃんの魅力、相性、魅力、運命、相性、延々


 春樹と悠の反応からするに、思い込みや洗脳、ましてや病気などでは説明できない何があったのは確かで、恐らく葵ちゃんの霊能力というものは本物だろう

 俺にはその世界を、見ることも感じることもできないから、こんなものがそこにあるんだろうな、と聞いた話で世界を想像して、楽しむことにする


 本を読むのと同じ感覚だ

 実際に存在しようがしなかろうが、十分に面白い

 日常と非日常、現実と想像、虚言と真実、両方あるから良い

 大切なのはバランスだ

 そのバランス感覚が同じだと、人間関係は上手くいきやすい

 そういう相手との出会いこそ大事なんだろう

 手放してはいけないのだろう


 まさに、悠にとってその相手が葵ちゃんだったということで、幼馴染兼親友としては、喜ぶべきことだ


 何はともあれ、俺は俺で、俺の日常を過ごす

 そしてまた、遠くない将来、非日常が俺の想像の扉をノックして、虚言と真実の、混沌とした世界へ俺を誘うのだろう


 あいつが、俺の家のインターホンを鳴らした時のように


 ってことで作戦会議

 今週、どっかで飲み行くぞ


 退社して帰宅

 読みかけの本を閉じて、夕飯を食べにリビングに行く途中、三人のトークルームに通知


 お金ないでしょ


 と、もう一人から


 安心して下さい

 金曜に振り込まれます

(ぱたぱたするぶさぴよ)


 じゃ、金曜?


(頷いてるのか弾んでんのか分かんねぇぶさぴよ)


 前の分も合わせて払えよ

 店も予約しとけ


 と送信すると、どっかに飛び去っていくぶさぴよが現れた

 握りつぶしてやりてぇ


 ぶさぴよを握りつぶすことは叶わないまま、金曜の朝には悠から


 今夜一八時に

 いつものお・み・せ・で


 と、白目のくせにウィンクしてくるぶさぴよが送られてきた


 いつものように退社して帰宅、着替えを終え、片手にダンベル、片手に本を持って時間を潰す

 母親に声をかけられ時計を見ると、時間ギリギリになってしまっていた


 俺は生まれてこの方、実家を出たことがない

 身の回りのことすら自分でやらない俺を、甲斐甲斐しく母親が世話を焼いてくれている

 職場も車で二〇分ほどだし、社会人になったからって、わざわざ金と労力のかかる一人暮らしを始めなければならない理由はない

 年の離れた兄二人は、上京してたまにしか帰省しない

 両親とも若くして結婚したので、まだ年金をもらうような年でもない


 つまるところ、俺はしっかり末っ子として、家に甘えさせてもらっているわけだ

 兄二人も未婚なので、この年代にありがちな親からの結婚圧や、孫欲がないのはありがたい


 母親が運転する車で店に送ってもらってる途中、ふと、思い当たることがあり、スマホを見る

 いつもの店って、最初に行った焼肉店だよな

 この店って確か


 瞬ーーーー


 問題児の呼ぶ声がする

 見ると、問題児と春樹が件の店の前にいた

 母親に礼を言って、車から降りる


 わりーわりー

 店、改装中なの忘れてたわー


 反省というものを、こいつには身を持って知ってもらう必要がありそうだ


 で、どこに行こうか話し合ってたんだ

 ママのとこ行っちゃうかーって話してたんだけど

 瞬はどこか行きたい店ってある?


 お前はホント悠に甘すぎ、と思いながら春樹に肩をすくめて見せ、


 予約しとけっつったろ


 と、悠を睨む


 いやー

 何で電話繋がんねーのかなーって思ってたんだけどよ

 まぁ一八時だし?

 早めに行きゃ入れるだろーって


 ヘラっと笑いやがる

 ここで説教することに、無意味さしか感じない


 二本松行くのはいいけど、飯食えんのか?あそこ


 バー、といえば酒とつまみ位しか出さないだろう

 あってピザとかパスタとか

 腹ペコの二十代男三人が、満足できるメニューがあるとは思えない


 おお、大丈夫大丈夫

 ママってかなり料理好きらしくてさ

 食べたいもの言えば大抵作ってくれるみたいだぞ

 何でも葵ちゃんの料理教室行ってたんだってさ


 なるほど、と踵を返す


 じゃ、行くか


 行く店の候補はいくつかあったが、あの店にはまた行きたかったところだ

 まともな酒が飲める店は重宝したい


 悠が越してきた日と同じ経路で、バー二本松に向かう

 大通りに出て、繁華街に向かいブラブラ歩く

 前を歩く二人は、葵ちゃんに出会った時のことを、楽しそうに話している


 そろそろ例の交差点だ

 二人の挙動がおかしくなる

 が、期待しているような偶然が起こるわけはなく、何のイベントも発生しないまま、スクランブル交差点を横切って反対側の歩道までたどり着いてしまった

 肺の空気を全て出し切る親友を、なだめるもう一人の親友

 思わず失笑する

 次の路地を曲がって、少し歩けばバー二本松だ

 何気なく、反対側の歩道へ目を向ける


 おい


 前の二人に声をかけ、振り向いたところで顎と目線で、見るべき方向を指し示す

 二人は律儀にその方向を見て、期待通りの反応を見せてくれた


 反対側の歩道、三〇メートル先

 やはりスーツ姿の葵ちゃんが、俺たちと進行方向と逆に歩いていた

 交差点を横切らずに歩いていれば、すれ違うことができただろう


 悠が前へ駆け出した

 声をかけるつもりだろう

 春樹と追いかける

 悠はガードレールに足を貼り付けて、悠が葵ちゃんの名を呼んだ

 が、金曜夜の交通量に阻まれたのか、葵ちゃんの反応はない


 もう一度呼ぼうと、悠が口元に手を当てた時、葵ちゃんが歩くすぐ手前に、黒いセダンが停まった

 車体に葵ちゃんが隠れて見えなくなる

 悠がガードレール沿いに左に横歩きしたので、俺と春樹と衝突

 もたついた団子になる

 視線を忙しく移動させながら、セダンの後方がから出てくる葵ちゃんを待った

 しかし、なかなか姿が見えてこない


 全員の表情が、困惑に変わった刹那

 確かに葵ちゃんの声で


 やめて


 そう叫ぶのが、聞こえた

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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