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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第十四幕 守護と変化
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第七話 前編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 葵

 時間がないって言うのは、どういう意味だ?


 オレの運転する車が高速道路に入ったところで、瞬が切り出した

 みんながずっと引っかかっていたけど、敢えて触れなかったこと

 あまり葵や守護霊のことを言いたくない瞬の意向も理解しながら、葵があそこで守護霊を見せた理由が、きっとそこにある


 葵はバックミラーに映るオレを見た

 ああ、やっぱそーだよな

 予感していたことが、的中してしまったようだ


 悠さん


 んな顔すんな

 オレは大丈夫だから


 何をどう言ったって、強がりになっちまうのは、しょーがねーだろ?

 葵は、そんなオレから一度視線を落とすと、意を決したように口を開いた


 葵

 俺が言う


 開かれた葵の口から言葉が出るよりも早く、瞬が声を上げる


 お前の考えと違ってたら言ってくれ


 その言葉に、葵は頷いた

 瞬はバックミラーのオレを一度見ると、目を伏せて話し始めた


 ずっと違和感があったんだ

 成り代わったやつらに対する記憶の残り方

 顔を忘れる

 会話を覚えていない

 一度や二度会うだけ、もしくは短期間だけなら良い

 しかし、ずっと一緒にいる家族や友人、職場の仲間だったら?

 それが何度も、長期に渡ったら、さすがおかしいと思うだろう


 瞬が言わんとしていることが、オレの頭の中で少しずつ形作られていく

 化け物って言っても、そこに入っているのは間違いなく真実(まなみ)の魂で、オレの両親や婆ちゃん、真実を取り巻く全ての人間に対して、何ら危害を加えているわけではない

 オレ自身言われなかったら、相変わらず憎たらしい妹だな、で終わってた

 だから、葵がオレに話すのを躊躇ったように、知らないなら知らないままの方が良かったのかもしれない

 でも、そうはできない理由があった

 真実の肉体は食われたのだという事実が一つ

 兄であるオレが、それに気付けなかった、止められなかった責任が一つ

 そして、さらにもう一つが、これだ


 成り代わりは、もう長く存在できねぇのかもしれねぇ


 バクン


 あの化け物の口に、頭から食われたような衝撃と、痛みが走った

 やつらの棘のような牙が、胸と背中に減り込んでいく

 右手はハンドルを握ったまま、みぞおち辺りを左手で押さえた

 その手を、身体の内側から叩いてくるのは、オレの心臓か、それとも

 瞬が続ける


 あるいは最初から、化け物を作ったやつらは、成り代わりを長く存在させるつもりがなかった

 何かに利用するために作ったのだとしたら、その何かは、人食いの森が稼働するより前、もしかしたらあの薄気味わりぃ木箱が作られた時からあったのかもしれねぇ

 たまたまどっかに埋もれていた木箱が発掘されて、それを利用する人間が現れたって可能性もあるがな

 いずれにしても、森の閉鎖を受け、やつらはこれ以上成り代わりを生産できなくなった

 これから調査がどんどん進むにつれて、知られたくないことまで公になったり、これだけの時間と資金を費やして準備を整えてきた計画が、破綻する危険が高いとやつらは判断するだろう

 対処方法はいくつか考えられる

 潤沢な資金があるならば、さっさとUホテルからは手を引く

 足りない分の成り代わりを生成し、計画を遂行する

 あの場所が好立地で、替えが効かないとは言え、こういう事態を想定していないとは考えにくい

 あそこまではいかないまでも、それなりの場所を第二の候補地として用意くらいしているはずだ


 恐ろしいまでに淡々と、本を朗読するかのように話す瞬に、オレは、この上ない頼もしさと同時に、どうしようもない苛立ちを感じていた

 こいつがこうやって話すのはいつものことだ

 何も変わらない

 オレが今こうやってイラついているのは、オレの精神状態が不安定だからに他ならないんだ

 そう考えることで、オレは今にも瞬に怒鳴りつけそうな自分を、懸命に押さえつけた


 そして、資金がほとんどなく、代替の場所もない場合、もしくは


 瞬はそこで、一度言葉を止めた

 オレはバックミラーで、春樹は振り返って瞬の顔を確認する


 もしくは?


 瞬は、オレたちとは目を合わせずに、俯いたままだった


 現段階で、十分に成り代わりを作れたと判断した場合、だ


 ゾワゾワ、という表現では生ぬるいほどの寒気と嫌悪感に襲われる

 全身の毛は上へ上へと向かっているのに、血液は崖から落とされていっているようだった


 この場合、やつらは迷うことなく次の段階に計画を進めるだろう

 聡一朗たちの調査は、その進行の抑止力ともなりうるし、逆に扇動力にもなりうる

 たとえ、やつらの正体や計画を暴いたとしても、その間に取り返しのつかないところまで計画が進行されていた場合、それが最悪の事態を招く可能性だってある


 最悪の事態って


 春樹が、声に出すのも恐ろしそうに呟いた


 分からねぇ

 あくまで可能性の話だ

 それに、成り代わりを長く存在させるつもりじゃなかったとすると、腑に落ちねぇことも出てくる

 そんなすぐ壊すものを作るために、これだけの時間や資本を投資するとは考えにくい

 となると、もっと違う目的があるのだとも考えられる

 成り代わり自体を作ることが目的で、その存在に社会が気づき始めて、徐々に混乱していく、その時間差も含めて計画のうちなのかもしれない

 もしくは、あのホテルに今後も利用していくだけの価値があり、やつらはあそこを手放す気なんか毛頭ないからってことも十分考えられる

 今は、公安の調査が入っているから、余計なことはせずに雲隠れをしている

 宗教じみた言い方をするなら、聖地奪還する機会を今は伺っているだけかもしれない

 そのために陽動、囮の類を使った動きをしてくるだろうが、それが俺たちを誤認識させるためなのか、本命の作戦なのかは、やつらの正体も分からねぇ状態じゃ、判断は難しいだろうな


 ここでやっと、瞬が動いた

 天を仰いでため息をつく

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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