第二話 前編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
葵は、まっすぐにそこへ向かった
俺には人食いの森から少し離れた所にある、ただの小高い丘にしか見えない
人食いの森は、キープアウトのテープが何重にも張り巡らされ、この周辺も、関係者以外立ち入り禁止となっていた
瞬さんはここで待ってて
何かあったら助けてね
そう言うと、葵は俺に背を向け、歩いて行った
公安のマークの入った車が、ホテルの駐車場に停まっていた
今、外に人気はないから、ホテル内、もしくは森の中を調査中なのだろう
誰かがここに来た場合、鎮魂が終わるまでは、俺が足止めしなければならない
葵は、丘のてっぺんで立ち止まると、一度天を仰ぎ、その後俯いた
姿ははっきりと見えているのに、何となく、葵の身体の輪郭が冬空に溶け込んだように思えた
始まった
たくさん、いると言っていた
果たしてそれは、数十なのか、数百なのか
あるいはそれ以上なのか
あそこで一体何が行われていた?
化け物を作り出すために、
一体、
何が
春樹が見せてくれた、黒い砂粒を思い出す
光を受けると黒くなり、許容量を超えると崩れる
元々は恐らく無色透明な、見た目は石英のような鉱物だろうか
その鉱物を核にして、化け物を作ってる
悠が言っていたことを思い出す
こっちの世界に強い思いを残した魂は、時に溶け合い、強い思いはより強くなろうと、弱い魂を吸収していく
膨れ上がり、手がつけられないほど凶暴化した魂は怨霊や悪霊と呼ばれ、怪異や霊障を引き起こす
化け物を作る材料が、人の魂なのだとしたら
それは、すぐに消えてしまうような弱い魂ではないはず
怨霊や悪霊と呼ばれるような強い魂を、使うことになるだろう
それはどこから持ってきた?
もし、それを、ここで
人為的に製造しているのだとしたら
今、葵が鎮魂をしている霊たちは
悍ましい、総毛立つような憶測
しかし、納得できてしまう状況証拠が揃いすぎている気がした
葵が立つあの丘の下では、怨霊とせんとする方法で殺人が行われ、その魂が化け物製造の材料されているのかもしれない
そうして作られた化け物は、人食いの森で実体を手に入れるために彷徨い歩く
怨霊のような強い魂が、平々凡々と暮らしている人間の弱い魂を、吸収するくらい造作もないことだろう
その人間の記憶、生きた記憶を乗っ取り、成り変わることで、やつらはある種、完全体となる
しかし、そうなると余計に分からない
ここまで手間をかけてまで、成り代わりを作る目的は何だ?
その正体こそ化け物ではあるが、特に周りの人間に害を及ぼしているわけでもない
むしろ何ら影響がないよう、ご丁寧に記憶に入り込んでくれているときた
そう見えるだけで、実は少しずつ蝕まれているのか?
それとも、目的はもっと別の
こがぁ、関係者以外立入禁止なんけど?
その声にハッとして、後ろを振り返る
そこには、高校生くらいの女の子がいた
前髪を長く伸ばしたサラサラのショートヘアに身長は一六〇センチメートル強
が、すぐにその第一印象を改める
線の細い華奢な身体つきのようだが、よく見ると、大きいサイズの黒いシャツの下にある身体、特に右半身はガッシリとしている
この筋肉の付き方は、間違いなく男だ
アンバランスなのは、恐らく事故か病気で、一時期左半身が使えなくなったからであろう
公安のマークのバッチを付けている
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