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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第二幕 再会と告白
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第五話 後編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 あいつらの正体は、もう分かっている


 大量の動物霊


 自分の手のひらを見てみる

 肩を見てみる

 が、大蛇を見た時のような感覚を、オレの視覚野は検知しなかった

 見える霊は限られているのか?

 びび(・・)ちゃんだけ見えんのか?

 うわ、何だこれ

 もう考えただけで気持ちわりー


 悠さん、大丈夫?

 びび(・・)ちゃんいなくなったら、出てきちゃったね


 今まで大蛇がいたから、寄ってこなかったのか

 また出てきて、

 ほしいような、ほしくないような

 そうだ

 おまじない

 結局びび(・・)ちゃん頼りか

 でも、だめだ

 何か余計に、強い霊が寄り付いて来るようになるんだっけ

 いや待て

 待て待て待て?

 もう既に強くなってないか?

 こいつらの速攻性やべーぞ


 毒が一瞬で全身を巡ったように、指先が、まぶたが痙攣し始めた

 頭が鳴門海峡になっている

 腸が大蛇になって腹の中をよじっている

 耳元に心臓を持って来られた

 目のピントがどうしても合わない世界が、回転を始める


 悠さん、はい


 頭を動かすと吐きそうなので、視線だけ葵ちゃんに向ける

 葵ちゃんが、太ももを指先でトントンと叩いていた


 え、と声を出したかったが、この一文字すら発することを、今のオレの身体は拒否している


 横になってれば、楽だよ

 びび(・・)ちゃんも今、おやすみしてるんだ


 上体を静止させたまま、ほとんど倒れ込むように、葵ちゃんの膝にお世話になる

 夜だし、暗いし

 行きの車でもしたんだ


 イマサライマサライマサライマサラ


 呪文を唱える

 その効果では絶対にないとは思うが、横になった途端、身体から、水銀が抜けていくような感覚を覚えた

 急に、嵐が止んだような静けさを感じる


 びび(・・)ちゃんの気配感じて、いなくなったみたい


 ははぁ、なるほど

 葵ちゃんに触れるだけで、おまじないの効果が出るわけだ

 じゃあ別に、膝枕でなくても良いところだ

 が、ここはご厚意に甘えさせていただく

 横になってれば、楽だから

 葵ちゃんの言う通り

 女の子の厚意を無下にすることなど、オレにはできない


 山からだいぶ離れ、街灯や住宅の明かりが増えてきた

 葵ちゃんのキレイな顔が、よく見える

 下から見上げると、彫刻のような鼻の形や、長いまつげが一層際立っていて、飽きもせずに眺めてしまう

 あ、イマサラだけど、葵ちゃんっておっぱい控えめだな

 全く顔、隠せてねーし

 ヨガやってるし、脂肪自体つきにくい身体なんだろうな


 ほんとのこと言うとね


 思い出したように、葵ちゃんが話し出した

 語る口調は静かで、いつも優しい

 おっぱいのことを考えていたとは、口が裂けても言えない


 行きの車でね、もし霊たちと話しているところ見られたら、もうみんなとも会えなくなるのかなあって考えてたの


 行きの車でしてくれたのと同じように、オレの腕をトントンあやすように、指を動かす

 下からではその表情は、よく見えなかった


 だからね

 もう最後なんだからって思って、けっこうヤケ気味で膝枕、しちゃったんだ


 そう言って、すまなそうな笑顔をオレに見せた


 意外な告白


 すごく、自然に勧めてくれていたから

 葵ちゃん、こういう事するタイプなんだなーって思ってた

 ヤケ、だったんだ

 行きの車、では


 じゃあ


 当然の疑問が、頭に浮かぶ


 今は?


 短く葵ちゃんに問う

 ヤケになる必要はない

 オレたちは、離れていかない

 びび(・・)ちゃんは、正直こえーけど

 霊のこと、葵ちゃんのこと

 もっと知りたい

 まだまだ話したい

 ずっと関わりたい


 そばに、いたい


 大蛇が、葵ちゃんに取り憑いて離れなくなった気持ちが、すっげーよく分かるんだ


 葵ちゃんは少し逡巡するように、オレから視線をずらした

 そして、口を開く


 今は、


 再び、下を向いてオレを見た

 口元が僅かに、ほころんでいるように見える


 けっこう、恥ずかしい、かな?


 そう言って、紅潮しながら微笑んだ

 オレの顔面が火を吹く

 思わず頭を横にして、葵ちゃんから目をそらした

 確実に火柱が上がっている

 無駄と分かっていても、腕で顔を隠した


 瞬の運転する車は、走り続ける

 狭い後部座席に、

 逃げ場はない


 やめろよ、イマサラ


 そう言うのが、

 精一杯だった

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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