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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第二幕 再会と告白
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第三話

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 山に行く、と聞いていたからか、ちゃんとパンツスタイルにスニーカー、ロングカーディガンをTシャツの上に羽織って、髪は高めのポニーテールに縛っている葵ちゃんは、いつもながら最高にかわいい


 そんな葵ちゃんに、膝枕をされている親友

 悠の車酔いを、これほど羨んだことはない


 何だよ膝枕って


 おまけにポンポンまでされて

 これを羨むなという方が無理だ


 むりむりむりむりむりむり


 心の中でひとしきり騒ぎ、続いてため息をつく


 やっぱり、葵ちゃんにとっても、悠は特別なのかな

 会って二回目に、膝枕できちゃうくらい


 好き

 なんだろうな、きっと


 葵ちゃんに、少しでも特別視されていると思い上がってた、自分が恥ずかしくてしょうがない

 あんな夢を見てしまった、自分を罵る

 身の程知らずにも、勝手に葵ちゃんに取り憑かれていた、自分を責め立てた

 僕の頭の中は、真っ赤に染まって、魔女の鍋のようにグラグラと煮立っていた

 つい、さっきまでは

 肝試しは一人で行くという葵ちゃんの発言に、びっくり水を入れられた鍋は、今やすっかり静寂を取り戻してしまっている


 瞬と悠は呆然としていた

 確かに、女の子が一人で肝試し行きたいなんて普通はありえないだろう

 でも、僕は葵ちゃんがそう言った理由に、心当たりがあった


 白い大蛇の霊


 そういう心霊スポットに行くと、きっとあの大蛇が、何かしでかすのではないだろうか

 それを見られないように、葵ちゃんは肝試しは一人で行くと言っているのではないだろうか

 そう思った


 僕も、見えるから


 見ようと思えばその霊の生き様、死に様、人となりなども分かる

 でも、それ自体全く気持ちの良いものではないし、ずっと見ていると、精神が蝕まれていくのが分かる

 そんな状況で、あることないこと近くで騒ぎ立てられたら、正直ストレスでしかない

 肝試しは、無駄に騒がず、畏敬の念をもって粛々と

 こうでなければならないのだ

 だから、悠や瞬とオカ研として活動するまでは、そういう所に自分から行こうなんて気にもなれなかった


 大学入学直後のことを思い出す


 いいバイトはないかと掲示板を見ていると、オカルト研究会創立メンバー募集のチラシを掲示している悠を見かけた

 興味があると、悠に話しかけてたのは僕の方からだったけど、本当に僕の興味があったのは、悠自身だった

 というのも、入学式の日に様々な人間、及び人間でない者たちが行き交う中で、ひときわ、異彩を放っていたのが悠だったからだ


 悠は大量の小動物の霊を、まるで一張羅でも着ているように身にまとって、人混みの中を歩き、友達と談笑しながら大学の正門をくぐって行った

 そしてそのままの状態で、退屈な入学式に平然と参加していたんだ


 あの状態では、大体の人間は気分が悪くなり、一〇分も立っていることはできないはず

 何者だろう

 もしかして霊能者とか、そういう訓練を受けた人かな?

 そんな考えを巡らせて、僕は悠から視線を離せずにいた


 そんな人が、オカルト研究会を立ち上げようとしている

 僕は僕自身の行動に驚きつつも、悠に話しかけずにはいられなかった


 仲良くなりたい


 人生で初めて、そう思ったのかもしれない


 僕は、幼少期から霊が見えて、それが当たり前だった

 でも、幸いにもそれが、普通は見えないものだと気付くのは早かった

 彼らもまた、僕が見えてないかのような振る舞いをしてくれたていたからだ

 何を言っても、何をしても見向きもしない

 ただボソボソを口を動かして、たたずんでいるだけ

 家に帰ったらお父さんやお母さんが、ちゃんと僕の目を見て話しかけてくれるのに

 僕の話を頷きながら聞いてくれるのに

 彼らは何もない

 彼らのことを誰かに話しても、首を傾げられるか、心配されるだけ


 僕は彼らを、彼らが僕にそうしているように、いないものと認識するようにした

 極力無視することにした

 それで問題なかった


 でも、小学校高学年くらいには、その霊を見る力ってやつが、強くなっていたんだと思う


 友達と一緒にいると、その人に憑いている霊も一緒に関わることになってしまい、知りたくもない霊の情報が見えた

 友達はいつも霊とワンセット

 友達と関わるのが億劫になった

 そして、距離を置くようになっていった


 大人になるにつれて、その見える力の抜き方が分かってくるようになった

 だから今、毎日のように子どもたちや先生と顔を合わせていても問題はない

 でも、ずっと人付き合いは苦手なままで、悠や瞬に出会うまでは、親友もできなかった


 オカルト研究会メンバー募集のチラシを持ったまま、驚いたように僕を見た悠は、次の瞬間には人懐っこい笑顔になった


 じゃ今夜、さっそく行こう


 と、驚きのテンポの良さで話を進めていく

 オカルト研究会発足

 記念すべき第一回目の活動は、突如始まった


 瞬と出会ったのは、その日の悠が運転する車中

 オカ研会員番号二だと、悠が紹介してくれた

 ボサボサの髪に、眼鏡

 気だるそうにあくびをしている瞬は、一見取っ付きにくそうな印象だったけど、オカルト愛を熱烈に語る悠のツッコミ役が板に付いていて、専攻する学部のことなど話しているうちに打ち解けていった


 僕は瞬にも、悠とは違った違和感を覚えた


 瞬には全く霊が憑いていなかった

 驚きはしたけども、悠と瞬がいいコンビであることに納得して、余計に二人に興味が湧いた

 悠が抱えている動物霊たちは、毎日のようにメンバーが入れ替わっていて、全く僕に興味を示さない

 瞬には霊が憑いていない

 見ないように、する必要もなかった

 だから、僕は二人といる時は本当に楽だったし、一緒にいたいと思うようにさえなっていったんだ


 悠は、心霊スポット行くまでと、行った後は大はしゃぎする

 でも、いざ現地に足を踏み入れると、人が変わったようにほとんど喋らなくなる

 懐中電灯と汗を握りしめながら、ゆっくりと周回する

 瞬は、僕らの少し後ろで、ポケットに手を突っ込みながら、面倒臭そうについてくる

 ハズレの場所はこれで終わり

 でも、一回目の女性の自殺現場のように、アタリの場所では、ほぼ確実に悠が何かに取り憑かれては、トラブルを引き起こした

 まぁたまには、僕もその原因になったみたいだけれども


 僕の霊が見える云々(うんぬん)なんて関係なし

 とにかく、この二人といると、面白いくらいに何かが起きた


 霊と関わらないように、意識しないように

 これが、この二人の前では、(ことごと)く無駄で、全くの無意味になる

 自分からどんどん関わって、トラブって撃沈

 でも、なんやかんやで助けてもらって、最後は大笑い

 楽しかったし嬉しかった

 僕の普通が、押し隠してた当たり前が、二人にとっては羨むべきもので、あって当然のもので、なくてはならないものになったことが


 葵ちゃんにも、そうなってもらえたら良い


 そんなことを思っているうちに、後方に走り去る景色は、どんどん黒みを増していく


 そして、

 僕ら四人を乗せた車は、

 目的地に到着した

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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