第六話 前編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
初対面では、ある程度予想通りの反応を見せてくれた両親や兄たちと、食卓を囲む
俺がいつも座っている席の隣に葵、長兄と次兄はそれぞれテーブルの両端に着席した
葵に近い長兄は、葵に見惚れては、気づかれて目をそらすという動きを、プログラミングされたおもちゃの如く繰り返している
テーブルには既に、これから大食いバトルでも始まりそうな量の料理が、通勤ラッシュさながらに溢れかえっていた
父親が満足そうに口を開く
あとは、ピザが届けば完成だ
既に崩壊寸前だが
とは言わないでおく
食後にはケーキもあるわよ
母親が取り皿と箸を全員に配る
が、置く場所がないので、各々手に持ったまま料理を眺めることになった
お母様、私、お酒の用意をしますね
葵が俺に皿と箸を押し付けて、立ち上がった
お母様は、はっと声を上げる
いや、えと、その、なに?
最初はビールでいいだろ?
助け舟を出してやる
割と適応力が欠如しているようだ
グラス置く場所、あるかな?
作ります
次兄が張り切った声を上げた
葵は微笑んで礼を言う
次兄は、雷でも直撃したかのように身体を震わせると、やはり眼球をせわしなく回転させた
割と免疫力も欠如しているようだ
お盆を持った葵が、それぞれの席に何とか確保されたスペースを見つけて、グラスを一つずつ置いていく
遠慮なく顔を近づける葵に、年長者どもはノックアウト寸前だ
さすがに心配になってきた
葵が瓶ビールを注いで回るのは、よした方が良いかもしれない
仕方がないので、俺がその役を引き受ける
あからさまに不満げな顔をされたので、最初だけだとなだめた
全員が席につき、父親がカミカミ音頭をとる
身体を伸ばして葵と乾杯をした次兄は、グラスが合わさった瞬間、そのままの体勢で固まった
さすがに面倒くせぇ
時間の流れとともに、両親と兄たちの箸の動きが徐々に滑らかに大きくなっていく
食と酒が進むにつれて、少しずつまともな会話もできるようになっていき、葵の話を、甲子園のサイレンみてぇな声を上げながら聞いていた
鳩みてぇな動きで、葵からのお酌も受けられるまで成長した姿に、心から安堵する
葵は、自分のプロフィールや仕事のことを丁寧に説明し、どうか安心してほしいということ、俺が家からいなくなると寂しくなるのではないかということを繰り返した
葵さん、安心して下さい
おれも永遠も、来年からこの家に戻って来るから
長兄が言ったことに、俺は眉を上げたが、父親はドヤ顔で頷き、母親はうふふと笑った
続いて次兄が口を開く
前から考えてたんだよな
親父たちもいい年だし
おれも久遠もアラフォーだし
結婚して孫の顔見せるーなんて、半分諦めてるしさ
半分な、半分
一緒に住んで老後の世話とかしてやんのが、唯一できる親孝行かなーって
おれ一人なら嫌だけど、久遠も一緒ならって
兄たち二人は、昔から仲が良い
趣味も好みも全然違うので、何かを取り合って喧嘩する、なんてこともなかった
いつも、それぞれ違うことをしながら、一緒にいる
そんな光景をずっと見ていた記憶がある
大人になってからも、長兄が上京したのを受けて、次兄も追いかけて上京したほどだ
今回も仲良く揃ってご帰還とは
帰ってきてくれるのは良いんだけど、仕事は?
俺の質問に、父親が腕組みをして答える
久遠は、おれのコネで市役所だ
永遠は、E県の支社への異動が叶った
コネだと堂々と言うあたり
少しは長男を立てろ
E県は、S県とは逆サイドで隣接している
ここからなら、高速も通ってるから車で通勤することは十分可能だろう
これで家族みーんな揃うわね
嬉しいわぁ
ねー、ぱぱち
ぱぱちが出てるぞ、おい
葵は、相変わらずニコニコ笑ってる
少しは引け
これで葵さんが、孫を産んでくれれば完成だ
何がだよ?
全員むせさせんな
どんな特殊能力使ってんだ
口を拭いながら、葵を見る
紅潮した、幸せそうな笑顔
少しは、引け
本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問




