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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第十一幕 家族と共有
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第四話 前編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 金曜日

 朝から輪をかけて落ち着きのない両親

 ため息を漏らしながら、とにかく落ち着くように言う

 母親によって目玉焼きがなぶり殺されるのを、これ以上は見ていられない


 別に父さんや母さんが、そこまで気構えなくてもいいだろ?

 一緒に飯食って、話しして、明日の朝には帰るんだから


 なに言ってるのよぅ

 瞬がこれからずっとお世話になる方なんだから、失礼のないようにしないとぉ

 ねぇ、ぱぱち、何着れば良いのかしら?

 私の手料理なんか出したら失礼よねぇ?

 出前とか、全部買ってきたもので済ませたほうが良いかしら?


 ままち、大丈夫だ

 ままちの作る料理は、どこに出しても恥ずかしくない

 料理が終わったら、去年の誕生日にあげたワンピースに着替えると良い

 あれなら誰に見られても恥ずかしくない

 寿司、刺身、オードブル、ピザ、ケーキは既に注文している

 誰が来ても恥ずかしくない


 普段どんだけ恥ずかしい思いしてんだ

 注文しすぎだろ

 プラス手料理って

 関取でも来んのか

 逆に恥ずかしいってことに気づけ


 そう言いたいのを堪えながら、干物のようになった目玉焼きをカリカリと食べた


 瞬、やっぱり父さんが迎えに行こうか

 わざわざバスやタクシーで来てもらうのは申し訳ない


 その挙動で、事故でも起こされたら申し訳では済まない


 大丈夫だから

 家で準備して待っててくれ

 インターホン鳴らして入るから、その時出迎えてくれれば良い


 いつもの数万倍薄い、超絶アメリカンコーヒーを母親が持って来た

 そして朝から息子の前で、父親とイチャつき始める

 不安と緊張からの、ストレス回避行動であろう

 見慣れた光景ではある

 さっさとコーヒーを平らげて、食器を片付け、身支度を始めることにした


 洗面所の鏡に映る、自分の顔

 寝相はそこまで悪くないと思うが、毎朝面白いように寝癖がつく

 葵は、この寝癖で遊ぶのが好きだ

 芸術的だとか、寝癖も成長するだとか、今日は反抗期だとか、ひまわりに似てるとか、アニメのキャラにこんなのいるとか

 そんなことを言って、笑いながら俺の髪をこねくり回す

 それが妙に気持ちよくて、俺はなされるがままに大人しくしていた

 これからも、ずっとそうなのだろうか?

 葵は毎朝、俺の寝癖に笑って、髪を触るのだろうか?

 いつもは背景と同化している、両親のイチャつく光景が、今になって鮮明に思い出された


 顔を洗うついでに、頭の方まで水をかける

 顔と頭を拭き、髪をドライヤーで乾かす

 自己主張が激しい割に、引き際をわきまえている寝癖たちは、これで大半、表舞台から姿を消す

 去年までは、寝癖なんて気にも留めていなかったが、葵が弄ぶようになって多少意識するようになった

 悠や春樹みたいに、しっかりセットするなんてことはしねぇけど


 父親の車に乗り込み、見慣れた制服姿や、似たりよったりのクールビズスタイルを、視界の右から左に流す

 送ってもらうのも、あと僅かだ

 手首の完治が先か、引っ越しが先か

 あの家には、両親だけが残ることになる

 兄たちは将来、どうするつもりなのだろう

 二人とも、しっかりアラフォーだ

 働き盛り、長い都心生活

 何か特別な事情がない限り、今の生活を離れてあの家に戻って来るとは考えにくいが

 生活の変化は、将来のことを否が応にも考えさせてくれる

 いい機会だ

 帰省してくる兄たちにも、今後のことを聞いておこう

 こういう家族内の意識の共有ってやつは、早めにしておいた方がいい


 そんなことを考えているうちに、会社に到着した


 じゃあ頼むから、家で落ち着いて待っててくれよ


 既に落ち着きのない人間に、落ち着けと言うのは酷だとは思いつつも、一応の声掛けはしておく

 父親の親指が天に向いたのを確認し、

 俺は失笑して、車のドアを閉めた

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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