第四話 前編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
暖簾を分けて、出入り口の引き戸を開ける
いらっしゃいませー
聞き慣れた声がした
思わずギクリとする
見ると、目の前に葵の姿があった
お盆にビールを乗せて運んでいる
あらあ、いらっしゃい
もしかしてずっと一緒だったの?
仲良いねえ、ほんと
ボックス席どうぞ
葵がいつものボックス席を指差す
カウンター席は満席
二人がけのテーブル席も埋まっている
バー二本松らしからぬ繁盛ぶりだ
ご注文は、何になさいますか?
今日の葵は、鎖骨がキレイに見えて、右脚に大きなスリットが入った青いロングドレスを着ている
長い髪は毛先を巻いていて、サイコーにカワイイ
いつもなら諸手を上げて、歓喜に舞い踊るくらいにして、鎖骨にむしゃぶりつくところなのだが
今日は
今日だけは、いてほしくなかった、かも
向かいに座る瞬も、隣りにいる春樹も、同じ心境のようで、少しも葵を見ようとしない
ママは忙しい?
うーん、ピークは越えたけどね
今ね、天ぷら揚げてるの
それが終わるまでは、手離せないかな
んじゃ、ビールでいいや
ハイボール
僕、カシオレで
穴でも開けるつもりなのか、瞬と春樹はテーブルを睨み続けている
はーい
落ち着いたら何か作ってもらってね
お腹は空いてる?
いんや、たらふく食ってきた
あはは
じゃ、何か簡単なの出すね
そう言ってカウンターに入ると、慣れた手つきでドリンクを作る
カウンターのお客さんの相手もしながら、笑顔を振りまくその様子は、スナックのママさながらだ
葵がスナックなんてやったら、葵目当ての客で毎日ごった返してしまうよな
オレも間違いなく、その一人だけど
あー今日のドレスもいいなー
天才だな
ええーっとー
何さんだっけ?
反応なし
答えれや
せめて拝めっての
葵のドレス姿
もったいねー
グラスとジョッキを持って、葵がこっちに向かって来た
おまたせしました
今日ね、生徒さんがお土産に、ちんすこうくれたんだ
O県かーいいなー
ねー
でも台風当たっちゃって、大変だったみたい
それは気の毒
オレ、美◯海水族館と青◯洞窟行きたい
ふふふ
やっぱそこは外せないよねえ
スキューバダイビングってしたことある?
いんや
素潜り専門
あはは
来年、密漁お願いします
サザエとウニ、一トンずつ
見つかった場合、捕まるのはオレですかね?
そうですね
全ての罪を擦り付けます
付けるんかーい
葵はいつものように、大口開けて笑っている
が、
さっきから、オレしか会話してない
怪しまれるだろ
不安させるだろ
おめーら
何か喋れや
ママにキッチンから呼ばれて、葵がテーブルを離れる
仕方がないので、適当に話題を振ってると、キッチンから葵の歓声が上がった
店内のほぼ全員が、そちらを見る
キッチンの暖簾から出て来た葵は、てんこ盛りの天ぷらが乗った皿を、何枚も抱えていた
まずはカウンターのお客さん一人ひとりに、葵が丁寧に配膳していく
客の鼻の下が、アイロンをかけたように伸び切った
そりゃぁさ、まさかこんな狭くて古い、とっくりとおでんが出てきそうな店構えで、こんな色っぽいドレス着た美女がいるとは夢にも思わないだろうからな
葵はもう一度キッチンに入り、再び天ぷらを持って現れる
カウンターが終わると二人テーブル席へ
最後にオレたちのボックス席へ
はい
ママが今日、りょうちゃんと釣りデートで取ってきたの
大漁だからおすそ分けだって呼ばれたんだけど、お店が混んじゃって、急遽お手伝い
大皿に白身魚の天ぷらが、ジェンガみたいに積まれている
お腹いっぱいでも、美味しいから食べれちゃうよ
そう言って笑うと、天つゆと塩、大根おろしや生姜が入った小皿を置いていった
大漁過ぎる
見た目のインパクトがエグい
大食いか何かの動画で、こういうのあったな
アタシとりょうちゃんの、愛の偉大さを思い知りなさい?
天ぷらジェンガに気を取られている間に、ママがすぐそばまで来ていた
天ぷらを揚げていただけあって、顔面が油絵みたいになっている
お幸せそうで何より
ママ、これ、何て魚?
箸で一つつまんで、天つゆに付ける
キ、ス、よ
全員が吹いた
今が旬よね
アタシとりょうちゃんは、いつでも旬真っ盛り、だ、け、ど
狙ったようなタイミングで出してくんじゃねー
ママのやつ、やっぱタダモンじゃねーな
カウンターの客から、酒の注文を受けて、葵はテーブルを離れていった
ママは接客を葵に任せて、りょうちゃんとの夢のような時間について、オレたちに語り倒す
話には胸焼けを起こしたが、揚げたての天ぷらは絶品だった
雑念と満腹という、ビハインドは全く問題にすることなく、三人で奪い合うように食べた
春樹は揚げ物大好きだし、瞬も白身魚は好物だ
キス天とビールがなくなりそうなところで、隙を見てママにカクテルのオーダーをした
ママは、操舵輪を握るりょうちゃんの横顔の魅力についての話を、未練たっぷりに打ち切ると、カウンターに戻って行く
ほっとして残りのビールを煽ると、葵がトイレへ続く通路の角から、オレを手招きしているのが見えた
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