第二話 前編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
今夜七時に駅前集合
トークルームでに入力送信
メンバーはいつもの男三人に、葵ちゃんを加えた四人だ
悠のヘタレ恋路に道連れにされる形で、今夜四人で夜のドライブ、及び散策となった
明日から仕事だってのに、よくもまぁ
それに毎回付き合ってしまう、自分にも呆れてため息が出る
なんかあいつに、弱みでも握られてんのか?
今更のように自問する
ない
といえばないが、全く何もないわけでもない
俺には、歳の離れた兄が二人いて、その影響で自分で言うのも何だが、考えが早熟だった
周りにいる、同い年から数個年上くらいのやつらは、みんな馬鹿に見えたし、自分の性格は、人付き合いをするのに全く向いてないと、小学校入学前には自覚していた
友達など一生できない
まともに俺の相手をしてくれる人間なんていない
そう諦めていた
実際、小三になっても、俺には友達と呼べる人間はおろか、用事がある時以外に、話しかけてくる人間はほぼ皆無だった
初めて出会った時の悠は、既にオカルト街道まっしぐらだった
日課にしていた図書館通いの帰り、自宅の前で悠に声をかけられた
俺の自宅近くの公園のトイレにでる、という噂を聞いた悠が、その公園の場所を聞いてきたのだ
俺は素直に、あっち、と答えてその方向を指差した
それなのに悠は、それじゃ分からねーから一緒に行こう、と強制的に俺を連行
これが、今思えば、俺にとって初めてのオカルトツアーだった
そこで大いにはしゃぐ悠に、何がそんなに面白いのか興味が湧いて、オカルト系の本も読むようになったし、誘われるがままに、悠と出歩くようになった
大学入学するまで、あいつ以外に友達と呼べる人間ができたことはない
あいつは、社交性のお見本みたいなやつだから、友だちはたくさんいるように見えたけど、肝試しだけは、他のやつらからの誘いは断って、必ず俺と行っていた
俺が断ると一人で行っていた
理由を聞くと、
あいつらさ、肝試しだーとかギャーギャー騷ぐだけで、全然楽しくねーんだ
ガキみてーでやってらんねーよ
と答えた
どうやら悠なりの、オカルト道なるものが存在するらしい
心霊スポットと呼ばれる所では、無駄に騒がず、畏敬の念をもって粛々と恐怖を味わなければならないようだ
小学生には無理な話だが、悠は幼い頃から、年の離れた従姉に、いろいろ連れ回されていたお陰で、ことオカルトに関しては、一般的な小学生とは一線を画している
と、自分で言っていた
俺は、昔から感情を表に出すのが苦手だ
正確には、常に不機嫌、怒っている、と言われる
俺にとって、あらゆる感情の揺らぎや起伏は全て、本の中で完結していたからだ
本を開いて新しい知識を得、登場人物たちの様々な感情の動きを読み、人間同士の相関関係を組み立て、将来を想像する
感情とは、人間関係を構築していく上で、恐らく重要なツールの一つであり、それが共感できる仲間同士が連れ合い、集まることによって小さくは家族が、大きくは国家が生まれていく
人間関係が複雑化していくと、小さくはパートナーシップが、大きくはプロパガンダに発展し、それは時に暴走する
そして小さくは喧嘩、大きくは革命や戦争へと邁進させる機動力となっていく
結論
面倒くせぇ人間関係は最小限に抑えたい俺が、感情を必要以上に出す必要はない
これが更に、人間関係の構築とやらを遠ざけることになるとしても、それはそれで構わなかった
不便や疎外感を感じたことなどない
そんな訳だから、悠から見て俺は、そういう所で無駄に騒がず、畏敬の念をもって粛々と恐怖を味わっている小学生、に見えたのだろう
俺にとって初めてのオカルトツアーの後、お礼に送ってやる、と言って、悠は帰宅する俺の後にくっついて来た
聞いてもねぇのに自己紹介を始める
隣街の小学校の同学年だった
家の前に着くと表札を見て、
また一緒に行こうな、山之内
と、いきなり呼び捨て
何だ、こいつ、と思いながらも、
瞬
と、名乗ってやる
は?
名前
M小の三年、同い年だ
悠は一瞬ポカンとした後、天使みたいな笑顔を見せた
じゃ瞬、またな
そう言うと、手を振り上げて走り去って行った
それからというもの、授業が五時間で終わる日はほぼ確実に、悠は俺の家のインターホンを鳴らした
午後三時
二人でおやつの袋を持って、今日はあっちの林、今日はこっちの山、とオカルトツアーだと言って探検をしては、おやつ交換をしながら食べるのが、俺の新しい日課になった
俺はほとんど、家か図書館で本を読んでいたから、大抵捕まった
俺は、インターホンが鳴るのが、うっとおしいような待ち遠しいような、複雑な気分だった
そして、あいつが俺を呼ぶ声と無邪気な笑顔には、どうしても抗えない自分がいることに、暫くは戸惑ったものだ
とにかく、大学で春樹と出会うまで、あいつは俺にとって唯一無二の親友で、あの日、俺を連れ出してくれたことに、恩が全くないかと言えば嘘になる
多分、恩以上の何かを感じているから、
今までも、そしてこれからもずっと、
こいつのバカみたいな願いと、
突拍子もない行動に、
俺は付き合い、呆れ、
最後はデコピンするハメになるのだろう
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