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取り憑かれて  作者: 恵 家里
第十幕 真実と家族
129/371

第一話 前編

本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。


○詩を読むように読んでいただきたい

○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい


このような勝手な願望からです

一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。

 僕と悠が、二次会の途中で寝てしまうのは、いつもの流れだ

 でも、今日は瞬と葵の話し声で目が覚めてしまった

 何やら僕のこと話してるから、気になって

 薄目を、開けてしまったんだ

 僕は、床で寝てたから、テーブルの影になって、ほとんど見えなかったんだけど

 瞬の立ち位置、葵との距離、話の流れ、そして沈黙


 キス、してた


 身体中に、あらゆる方向から衝撃が走った

 連動して心臓が地鳴りのような音を立てて、震えだした

 そんな時に、突然悠が叫んだから、僕は驚いて跳ね起きてしまった

 瞬と葵は、その後何事もなかったようにしてたけど、瞬はさっき、葵を好きだって言った

 こうも、あっさりと


 先ほどの衝撃が、余震でしかなかったと思えるような、立ち眩みを覚えるほどの振動が、胸の奥から全身に広がった

 意外、だった

 瞬が、あんな大胆とも言える行動をとったことが

 葵への気持ちを、素直過ぎるほどに告白したことが


 心臓の鼓動が、頭から爪先まで伝播してくる

 バーナーで焼かれたように、眉間の奥が熱い

 気管にひびが入ったように、呼吸が苦しい

 テーブルで隠れて見えなかった部分が、勝手に補われていく

 唇を交わす、二人の姿


 想像力を抑え込もうとする

 しかしそれは、強力なバネのように、抑え込もうとするほど、強い力で押し返してきた


 長い付き合いになるけど、瞬から恋愛の話なんて聞いたことがない

 いや、正確には、全くないわけではない

 会社の先輩社員と、一ヶ月の期限付きで交際して、きっかり一ヶ月で別れた、という話は聞いたことがあった

 瞬は、興味のない芸能人の、ゴシップネタを話す時よりも、それはそれはつまらなさそうに話してくれた

 僕は、瞬の恋愛ってすごく興味があったから、詳しく聞きたかったんだけど、そんな雰囲気ではなかった

 だから、瞬にとって恋愛っていうのは、ただただ面倒くさいものなんだろうなって、そう思ったんだ

 それは、僕が瞬に抱いている印象、そのまま


 瞬は、つまらない冗談なんて言わない

 冗談で恋愛なんてしない

 そんな瞬も、僕のよく知る瞬と相違ない

 だから、葵を好きだっていう瞬は、

 本当に


 心音が、けたたましく鳴り響いた


 葵は


 葵はどうなんだろう?


 僕を抱きしめてくれた葵

 僕の好物を作って、話を聞いて、信じてくれる葵

 もし僕があの時、抱きしめていたら、

 抱きしめるだけじゃなくて、キス、してたら

 僕の髪を撫でてくれた、葵の手を握ることができたなら

 葵は、どうしていたんだろう


 昔のビデオの映像のように、葵の姿が様々に入り乱れ、次々と切り替わっていく

 そこに、自分の姿が加わった

 

 思い切りが悪くて、いつも二の足を踏んでしまって、後悔するところ

 昔から変わってない

 変わりたいのに


 葵、君は

 変わらないでって


 葵の言葉が、笑顔が、

 瞬のこれまでの行動が錯綜する

 極限まで張り詰めた胸と頭を、どうにか落ち着けようと、思考の一切を止めた

 深呼吸することに全神経を集中させる

 息を吐く

 吐く、吐く

 

 二人の寝息が聞こえてきた

 葵も、もう寝たのだろうか

 僕も早く寝ないと

 明日は休みだけど、

 だいぶ、飲んだから


 そうだ

 さっきは、もしかしたら、

 お酒が入っていたから、なのかもしれない

 相手が、僕でも、悠でも、同じことだったのかもしれない

 明日には、笑って、ごめんって


 いやいやいや

 一年半も一緒にいて、今さらお酒入ったからどうなるとか

 アルコールにめっぽう強いあの二人が、酔っ払ってどつなった、なんてことになるわけがない

 葵が、誰でもいい、なんて、そんなこと


 それに葵は、僕たちに、僕たちだけに執着してるって言ったんだ

 あの言葉は嘘なんかじゃない

 誰でもいいなんてわけがない

 葵は、僕たちだから、一緒にいるんだ


 僕、たち


 僕たちは、

 果たして横一線なんだろうか?

 僕たちの中での特別は?

 僕たちのうち誰か一人だけ、と言われたら?

 葵は

 葵は、誰を選ぶのだろう


 しゅーーーーーーん


 悠の声が、鐘のように頭の中で鳴って、ハッとして目を見開いた


 いつの間にか、外が明るい

 あのまま考え事をしながら、眠ってしまったようだ

 布団、和室と順に出て、リビングに向かう

 大きな食卓テーブルには、いつものように悠と瞬が座っていた


 あ、おはよう春樹さん


 キッチンで朝食を準備している葵が、いつも通り、朝の太陽のような笑顔を見せる

 化粧はしてないが、着替えて髪を整えているので、やっぱり輝かんばかりに美しい


 おお、起きたかネボスケ


 いつも通りの悠

 額には、昨日受けたデコピンの痕が、輝いている

 さっき瞬と叫んでいたのは、この責任如何を問うためだろう


 もう一〇時過ぎてんぞ


 そう言いながら、葵からブラックコーヒーを受け取っている


 お前も起きたのは五分前だろ


 たしなめる瞬もいつも通り

 無糖のカフェオレを飲んでいる隣に、僕も座った

 いつも通り

 すぐに葵が、ココアと黒糖を入れてくれたカフェオレを前に置いてくれる

 外はまだ暑いけど、葵のマンションは空調が効いていて年中適温なので、朝は年中温かいコーヒーだ

 それをすすっている間に、テーブルには次々とご飯が並べられていく


 冷や汁

 あさりの味噌汁

 鶏むね肉のサラダ

 かぼちゃときのこの煮物

 そして、白身魚のムニエル

 魚の名前はカマス、というらしい

 昨夜の二人の会話が蘇った


 頭の中がどんなに混沌としていても、美味しいものは美味しい

 十分すぎるほど豪華な朝食を前にして、人間は舌鼓を打たずにはいられないのだ

本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問

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