第五話 後編
本作品は、句点、かぎ括弧、エクスクラメーションマークを敢えて付けずに編集しております。
○詩を読むように読んでいただきたい
○読者の皆様に、自由に情景を想像して読んでいただきたい
このような勝手な願望からです
一般的な小説と比較すると、大変読みにくくなっておりますことを、予めご理解いただいた上でお読みいただければ幸いです。
それから、葵ちゃんの生い立ちや大学で何してたとか聞いたり、いろいろ話したと思うんだけど、次にオレの頭が正常に機能したのはオレの部屋、ベッドの上でだった
といっても、見慣れない天井、蛍光灯、見慣れない部屋と見慣れた家具に暫く困惑したんだけど
やっと自分が、昨日引っ越して来たばかりだったということを思い出して、次の瞬間には意気消沈
やべー
夢オチ?
服も昨日のまま、風呂にも入らず歯磨きもせず寝ちまったようで、身体中に何かがへばりついているようで気持ち悪い
とりあえずシャワーだ
朝の八時半
酒は確かに、しこたま飲んでいる
でも焼肉行ったくらいじゃ、こうはならねー
やっぱ夢じゃねーよな
葵ちゃん
そう、葵ちゃんって名前聞けたんだ
イカツイN平がいるバー?に行ったのも間違いない
ってか連絡先
オレ、連絡先聞いたのかな
そう思い立つが早いか、全身ずぶ濡れのままスマホをチェックする
ない
電話番号もメールもアプリにも、あたらしく登録されているものはなかった
裸のままがっくりと肩を落とす
またやっちまったー
酔っ払う前にさっさと聞いときゃ良かった
いや、でもN平こえーしな
市内住んでても、これじゃまた、いつ会えんのか分かんねーよー
底なしの後悔の沼にズブズブと沈んでいきながら、未読のメッセージを開く
瞬からだ
てめぇ運ぶの、くそ大変だったから飯代に運送料プラスして返しやがれ
飯代¥6,578+運送料¥100,000
見なかった事にしよう
既読消去機能ってなかったっけ
頭を拭きながら、下にスクロールする
あと、葵ちゃんがお前にも教えとけって
その下に、じんのあおいの名前で、アカウントが貼り付けられていた
友よ
瞬に、人生で最上級の感謝をする
運送料は無視をする
さっそく葵ちゃんのアカウントを友達追加して、メッセージを送る
とりあえず昨日のお礼と、またオカルト話とかいろいろしたいって内容
送って暫く、パンイチでソワソワしていたが、既読が付かないので服を着る
仕事かな
講師とかヨガの先生って言ってたもんな
週末が忙しいんだろう
納得して歯を磨きながら、瞬と春樹とオレのトークルームにメッセージを送る
春樹は飲んだ次の日は昼まで起きねーけど、瞬は起きてるはず
おはよー
配達ごくろー
楽しかったなー
後半何話したか記憶ねーけど(笑)
また飲もーぜ
葵ちゃん入れて
あ、やっぱ先に肝試しかなー
すぐに既読一が付き、瞬から返信
ごくろーじゃねぇ
払えなかったら腎臓もらうからな
お前がヨダレ垂らして寝てる間、お前の介抱から、タクシー呼んで俺たち全員送ってくれるとこまで、全部葵ちゃんがしてくれたからな
ちゃんと礼言っとけ
介抱?
葵ちゃんが?
くそー寝ちまったのが悔し過ぎる
こう、何?
葵ちゃんにもたれかかっちゃったりとか?
それを葵ちゃんが優しく抱きしめてくれたり?
水飲ませてくれたり?
こぼれたのを拭いてくれたり?
やべー
介抱ってなんだー
どうぞ妄想して下さいって言ってるだろこれー
お前のゲロ、葵ちゃんにもかかってたからな
次、土下座しろ
ゲーーーローーーー
ちょっと待て待て待て
ゲロったのかオレ
葵ちゃんにもかかったって
最悪だ
最悪
マジで
介抱ってゲロ処理か
なんなんなんなんなんなんなんだオレ
何やってんだマジオレ
マジ死にてー
今すぐ死にてー
スマホを持ったまま、頭を抱えてゴロゴロとのたうち回る
羞恥心で恐らく死ねる
今死ねる
あーくそ
何でオレ、昨日に限って酔っ払っちまうかなぁ
あのマティーニのせいだな一〇〇パー
オカマでマッチョなN平のせいだ
今度店行ったら、とんでもねーカクテル頼んでやる
責任転嫁によって、羞恥心による死の淵から生還した
四年ぶりの故郷
親友との再会
思いがけない邂逅
この全てが、オレの期待と興奮を全身に満たし、その温度を上げ、それでも足りずにオレの周りを駆け巡る
ありったけのパワーで
スピードで
エネルギーで
オレの細胞がそれに呼応する
懐かしい
でも新鮮な高鳴り
始まった
始まるんだ
これから
漠然と、でもはっきりとした予感が、
オレの背中にそっと手を当てて、
優しく
でも力強く
オレを前へ前へと、突き動かした
第一幕 邂逅と再会 完
本作品では、挿絵並びに登場人物の肖像、ストーリーの漫画などを描いていただける方を募集致しております。プロアマ不問
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