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奴が来る 中編

今日は第3土曜日、そしてもうすぐ午前3時だ。

 そう今日は、いつものあの赤い人が颯爽と、ご自慢の赤い愛機だか愛馬だかを深夜の商店街に迷惑な爆音を響かせてこの店にやって来る。


 前回「モニターが・・・死ぬ⁉」とか言う謎の迷言を残して退店して以来だ。


「やぁ‼地球の重力に魂を引かれた哀れな人々よ、私だ‼」


「「「誰だよ⁉」」」 


 店内に偶然、居合わせた、速見さんを知らないお客様達からの当然の返答に不満げな速見さんは私に何かを無言で訴えてきたが、私は華麗にスルーした。何故、この人は歴史あるお寺の住職なのだろうか?お笑い芸人の事務所かYouTubeの方がよほど彼のキャラには最適な場所の様な気がしてならない。


「ふん、この店で私の事を知らぬとはな?今日は坊やしかいないようだ。……京子さんそんな雑魚共の話はいい!今日こそは、私の君への熱い思いをじっくり語り合おうではないか⁉」


「…………結構です。お買い物の御予定がなければ早々に、ご退店ください。」


「なっ!取り付く島もないな。君の心の最終防衛ラインを貫く事がこうも難しいとは。やるな、女店主‼しかし、それでこそ私が見込んだ程の女性であると言わざるを得んな‼しかし、その程度の心の装甲で私の恋の弾幕を躱す事は出来んと言う事をお見せしよう‼この場にいる諸君も大いに観察し今後の人生の糧にするがいい‼これが女性の口説き方だ‼」


相変わらず速見さんは全身、赤いスーツと巨大サングラスに金髪の鬘を靡かせて私の前で壮大な演説をかましてくる。ココが大須演芸場ならば、お腹を抱えて大爆笑したいところだが私は、自分のお尻を右手の親指と人差し指の最大出力でつねり上げ耐えた。ココで私が笑顔など見せようものならばこのオッサンは益々調子に乗る事を私の本能が告げている。

キュピーン!て感じだ。


「おい、生臭坊主‼さっきからウルセーぞ⁉客じゃないなら帰りやがれ‼ココはキャバクラじゃねぇーぞ‼模型屋だ馬鹿野郎‼」


 店の奥の塗装ブースで塗装作業の最終仕上げ作業に勤しんでいた青い巨星、青野さんが私と速見さんの間に割って入ってきた。


「なんだ、アホの巨星、八百屋大尉ではないか。君は上官への口の利き方も知らんのか?」


「誰がアホの巨星で八百屋大尉だ⁉アホな仇名を勝手につけんな‼それに何でお前が上官なんだよ?それにウチは八百屋じゃねぇ‼地域に愛される激安スーパーだコラッ‼ついでにお前みたいな変態上司はウチの職場にいねぇ‼」


 私は、自分のお尻が青く変色するのを覚悟して、自らのお尻にかけている指の圧力レベルを上げた……。この場で吹き出す訳にはいかないのだ。


「…何だ、君は知らんのか?この店のルールを?」


 速見さんが語るこの店のルールとは、私のお店、深夜模型店が提供する特典。というかお遊びの事である。


 それは、このお店で商品をご購入額の累計が1、0000円を超えるごとに階級が上がるというシステムを採用している。

 最初は皆、二等兵から始まり最後は大将を目指すといった、特に階級が上がっても商品の割引や制作ブースの使用優先権みたいな特典も存在しない、ただのお遊び企画であったが一部の常連さんには大変好評な企画の事である。


 ちなみに青野さんも、速見さんも既に階級は大将を越えているが敢えて大尉と大佐の階級を維持している。

 そこには私には、わからないがきっと何か意味があるのだろう。


 ちなみに、准尉にまで出世したお客さんには、私がデザインした其々のお客様用のパーソナルマークのデカールシールをプレゼントしている。

 この企画は皆様に、ご好評なのだが、お客様のイメージパーソナルマークを1つ、1つ、デザインを考えるのが大変なので会社には内緒だが、本業の合間にコソコソ作ったりしている。本業の合間に副業の特典を制作するとは、我ながら不良社員である。

 

 しかしコレはあくまでこのお店独自の遊びであって実際に上下関係があるわけではない。


「アホな事、言ってないでサッサと帰れよな?京子ちゃんが困ってるだろうが?」


「フン、失敬な私は立派な客だとも‼京子さん‼超硬刃エレクトロ二クスニッパーを30セット程、頂こう。」


「エッ⁉速見さん本気ですか?」


「マジかよ⁉それクニペックスの奴だろ?それ、プラモ用じゃない超高級ニッパーだぞ?一丁、2,0000円越えだぜ?しかも30セットて!」


「青野さん、流石!工具にも詳しい‼」


「ハハハ…何。もうすぐ夏休みだろ?私の寺で子供達に向けた企画。親子で作ろう‼夏休みプラモデル寺子屋という作戦を遂行中でね。それに向けて大量の工具とプラモが必要なのだ。それをこちらで調達しようと思ってね、それと子供用に安全な初心者向けニッパーも30セット程、適当に見繕ってくれたまえ。必要なプラモの発注書は後で曹長が持ってくる。」


「は、ハイ。流石にその数は在庫にないので直ぐにお取り寄せしますね?3日程で届くと思います。」


「うむ、では物資が到着次第、曹長に取りに越させよう。」


「あ、ハイ了解しました。それにしても速見さんが毎回、大量にプラモを購入されるのはそういった理由だったのですね?ちょっと見直しました。」


「クッ‼金に物を言わせた、圧倒的な物量作戦かよ⁉気に入らないぜ‼」


「フッ、これこそ!寺院、脅威の資金力と言う奴だ。認めたまえよ、己の貧乏故の無力さを‼」


「クッ!勘違いするなよ、クソ坊主‼それは、お前の実家の性能のおかげだと言う事を忘れるな‼」


「フ、それは私の生まれの不幸という奴だ……。」


 深夜、名古屋大須の一角にある模型店にて美人女店主のハートをめぐる謎のマウントバトルが繰り広げられていた。


 今夜も名古屋市大須商店街は平和である……。

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