深夜模型店
「坊やだからさ……。」
私の憧れの彼がモニターの中から囁いた。
名古屋市大須商店街のとある雑居ビルに私は週末の深夜から明け方迄、営業する模型店を開業した。
私は平日の昼間は名古屋、丸の内エリア内の某社でOLをしている。
そんな私が何故か週末だけ、名古屋のアキハバラと呼ばれる大須商店街の一角で深夜営業のみの模型店を始める事になったのか。
それは、一つ下の私の弟が亡くなったからだ。
私の弟は13歳から26歳で自ら命を絶つまでの13年間引きこもりだった。
引きこもりになった理由はわからない。
私が気がついた時には弟はすでに引きこもりだったから。
弟が亡くなって葬儀の後に私は遺品整理で弟の部屋に初めて入った。
そこには寝る場所が無いと思えるくらいにプラモデルの箱が積み上げられていた。
「あの子、プラモデルばかりこんなに集めてたの?」
そのプラモデルのほとんどが私と弟が大好きだったアニメのプラモデルだった。
母が弟の心を慰めるつもりでずっと買い与えていたそうだ。
そんな小さな部屋の一角に小さな机があり、その机の下には箱があって、その中にプラモデルが丁寧な梱包がされ収められていた。
それは見事な塗装がされ、計算され配置されたデカールにウェザリングまで施された見覚えの在る赤い機体。
「……ああ、コレ、私の好きな奴だ。」
それは何処か、鶏がスカートを履いているようなデザインが好きで更にその機体に搭乗して戦うキャラクターにも思い入れがあって特にお気に入りのプラモデルだった。
「懐かしい、コレ。確か、小学生の頃に弟と一緒に作ったっけ。でも、昔のより何かカッコ良い気がする?違う奴なのかな?」
私は、その赤いプラモデルを手に取ると懐かしい弟との思い出が蘇るような気がして、涙が溢れ出して止まらなくなった。
多分、このプラモデルは弟の遺書の代わりなのだと私は理解した。
「アイツ、何で‼︎死んじゃうんだよ!、良いじゃん別に、働かないでも。好きなプラモデル作って一生、この部屋で生きればよかったじゃん‼︎お金だって私、ずっと仕送りしてたじゃん‼」
我ながら無責任で無茶な事を言ってしまったと思う。
でもコレが私が大須商店街で週末だけの深夜模型店を始めたキッカケだった。




