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鉄腕娘々デンジャラミィ  作者: らりるらるらら
【鉄腕娘々チェイサー癒論】
48/84

光芒一閃

偶然。

世の中には、何者かの意志が介入した様にしか見えないが、偶然が重なって奇妙な事態となることがある。

つまり、師匠の失踪と二人の喧嘩がたまたま重なった。友隣先輩はそう解釈した。

それはまるで、座ったところにたまたまあった電球がすっぽりお尻の穴に嵌まって取り出せなくなった現状と似ている。

「よし!病院行こう!」



「わかってるから。君はもう何も言わなくていい」

ロボットの医者にそう言われた。悔しい。

帰路に就き、夕御飯の買い物をしようとスーパーに来た。

ラミィちゃんから貰ったレシピによると、和食の基礎は砂糖、塩、醤油、酒、みりん、めんつゆがあれば大丈夫らしい。

早速煮物でもしてみましょうかと鼻息を荒げていると。

「あら、【お尻に何でも入れるタイプの先輩】...じゃなかった、癒論ちゃんじゃない」

どんな言い間違いだ、と声の方を見た。

そこには買い物かごを手にしたママが立っていた。

「あ、ママ!買い物ですか?」

「ええ。これは家用の」

「おや、あんまり買わないんですね」

「うち一人だとそんなにね。友隣ちゃんがいないと食事も作り甲斐が無いのよ」

と、溜め息を吐く。

ママやっぱり寂しいんだな。

「私も師匠がいなくなって寂しいですけど、成長する良い機会だと思っています。私もいつかは教える立場になりたいですから」

「立派ね。泣きたくなったらいつでも来なさい。じゃ、また明日ね。バイバイ」

「はい!また明日!」



商店街を歩いていると、鉄腕修理の看板を発見した。

前までここはコンピューター関係の中古パーツを扱っている店だったと記憶しているが、潰れたのか。

看板には二万~と表記されている。馴染みの店は四万~なので、格安だ。

「そういえば、最近関節がギシギシ言ってたな」

最後にメンテナンスしたのいつだっけ。明日から厳しい修行になるだろうし、やっとくか。

一時間後。

「なんじゃこりゃー!」

請求書を見て天地がひっくり返った。

「いちじゅうひゃくせんまん...五十万!相場の何十倍だ!」

そんな金持ってないし!

「ははは。おたくのパーツは磨耗してたから新しいのに替えたし、旧型は高騰してるのさ」

ガリガリの人型ロボットが笑いまじりに説明する。

「嘘おっしゃいー!」

ガリガリはバン!とレジカウンターを叩いた。

「相場調べてから文句言え!金払わないなら警察呼ぶぞ!」

ぐい、と顔を寄せてくる。

警察はまずい。鉄腕(あいあん)娘々はロボットより格下扱いなので、揉めたら確実に負ける。立場に上下があるこの社会では法はまともに機能していない。

「リボ払いでお願いします!」



リボ払い記念にやけ酒じゃーとバーにやって来た。

「焼酎!業務用の四リットルの奴持ってきて!」

「遮音駄目だよ!もう三本空にしてるよ!」

先客がいて、なんか冷静になった。

遮音と邪布の隣に座った。

「癒論せんぱ~い。遮音のこと好き?」

はぁーと吐息が飛んできた。

うわ~酒くせ!

「好きだよ」

無難な回答をした。酔っ払いに刺激は与えたくない。

すると。

「どれくらい好き?」

追撃がきた。

うわ~めんどくせぇ。

「トンカツより好き」

「それ...かなり好きじゃん!」

頬を赤くするな。

「邪布ちゃんは私のこと好き?」

「だいすけ」

「誰!?」

食って掛かる遮音を無視して、私に話し掛けてきた。

「そうだ、聞いて下さいよ癒論さん」

「ん?なになに?」

「ねぇ!だいすけって誰よ!」

「最近人材派遣会社を立ち上げてピンハネして儲けてたんですけど、給料が安すぎるって苦情が殺到して潰れたんですよ」

全然仕事に顔を出さないと思ったらそんな阿漕な商売を。

「折角作った会社が消えて無くなるなんて」

トホホ顔をする。

「消えて無くなる?そういえば、ずっと不思議だったんですけど~」

頬に指を添え、上を見ながら遮音が呟く。

「最終試験で消えた娘って何処に消えたんですかね」

「え?」

虚をつかれてポカーンとする。

「もう、止めてよ」

邪布が静かにそう言うと、

「あ、ごめん」

それっきり遮音は静かになった。

しかし何故だろう、この秘密を暴かれたみたいな嫌な気分は。

確かにあの事件はおかしかった。

惚莇の言葉を信じるなら消えた娘はミンチにされたのだが、被害者の鉄腕も、骨も肉も見付かっていない。【合挽きミンチ先輩】などと名乗るからそう思い込んでいたけど、実際にミンサーに入った私も無事だったし、何よりあの時、彼女の鉄腕の中から血の臭いもしなければ、新品同様の綺麗な状態だった。

最大の疑問は、惚莇はどうやって消えたのか。師匠を含め数人の先達が捜索したが見付からなかった。煙の様に消えた。

いや、本当に見付けられなかったのか?

数人が口裏を合わせたら?

惚莇と師匠にパイプがあったら?

私とラミィちゃんが植物園をくまなく捜して見付からなかったのだから、失踪した娘が身を潜めていた線は無い。

なら、抜け道か。

植物園内に抜け道があり捜索班がグルだった場合、失踪事件に説明はつく。問題は、目的がわからない。組織ぐるみで大規模な誘拐?そんなことしなくても、卒業生は全員部下みたいなものだ。

わからない。何を隠しているんだ。

よし。

本格的な道具を用意して、もう一度あの廃植物園を調べてみよう。

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