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『毒蛾転生〜仲間と共に異世界巡り〜』  作者: ユーキ
第1章『始まりの森』
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異世界で生きる

 もし、外を這って移動している時に襲われていたら勝てるか分からなかったな。たが、わざわざ自分からこんな狭い所に飛び込んできてくれるなんて――。


 『食べて下さい』……って、お願いしにきたようなもんだろ?それにしても……さっきの雛よりも食べ甲斐がありそうだな。


 そんなことを考えていた直後、顔を翼で叩かれた。


 『ビギャッ!?』


 痛っ!何しやがるんだ、このクソ鳥がぁ!!


 俺は怒りに任せて胴体を振り回す。[復讐の一撃]が発動し、鳥は吹き飛んだ。


 壁に打ち付けられた鳥はぐったりとしており、力なく倒れ込んだ。……しかし、まだ生きているのか震えている。


 トドメを刺すために近付いた時、鳥は頭を上げてじっと俺を睨み付けてきた。


 ……そんな目で、……そんな目でオレのことを見るな!!この世界は弱肉強食なんだろ!?オレだって、卵から孵化した途端に死にかけたんだ!


 ……俺は睨み付けてくる鳥の目から逃れるため、突進し息の根を止めた。


【スキル:[体当たりLv1]を獲得しました】


【経験値を23得ました】


 気分が悪い。……俺がした行為は、間違っていたのだろうか?生物は己が生きる為に他を殺す。……食べる為に殺し、居場所を作る為に殺す。……それは、自然であり当然の筈だ。……いや、筈だった。


 抵抗してきた相手を殺したのは初めてのことだ。俺は今までどこか夢を見ている、ゲームをしている感覚でしかなかった。……だが、今回の件でこれは現実なのだと思い知らされた。


 覚悟を決めなければならない。俺がこの世界で生きる為には、これからも他の命を奪い続けなければならないことを。


 今思えば元の世界では、本当は身近にある筈の死が意図的に隠されていたと思う。例えばスーパーで肉を買ったとき、死を感じるだろうか?殆どの人は気にしないだろう。手に取った肉は血を抜かれたり、切り分けられたりといった処理を既にされているのだから。


 だが、この世界では違う。人間だった頃とは比べ物にならないほど、死が身近にある。……死を覆い隠してくれていた布切れは、剥ぎ取られてしまったのだ。


 ……だけど、俺は死にたくない!弱い者が死に、強い者が生き残る世界だというのなら。……山程の屍を積み重ねたとしても、俺は生きたいんだ!!


【称号:[頂きを目指す者]を獲得しました。】


 俺は誰よりも、……何よりも強くなることを決意した。そうすれば俺は大事な物、つまり命を奪われることがない筈だ。


 強くなる為に今の俺にできることは、進化やレベルアップ、有用なスキルや称号を集めることだ。


 俺は[糸吐き]で木の穴を塞ぎ、壁を糸で補強した。倒した親鳥と雛が邪魔にならないようにアイテムバッグに仕舞っておく。そういえば、何気にアイテムバッグを使うのはこれが初めてだな。


 色々あって保留していたが、落ち着ける拠点も確保したので進化しよう。



――――――――――――――――――――――――


【進化可能先を表示します】


ヒュージラーヴァ/ランク:G+

 大きなラーヴァ種。その丸々と肥えた体は、ジューシーで甘い。珍味として美食家が高値で買い取ってくれる。


ヒュージミュータントラーヴァ/ランク:F+

 異常進化したラーヴァ種が肥大化した姿。回復が身体の変質に追い付かず、体液が傷口からドロドロと溢れ出る姿はとても痛々しい。


ミミックラーヴァ/ランク:E−

 様々な物に擬態し、油断している獲物に奇襲を掛けることを覚えた芋虫。暗殺の名手。


プレデーションラーヴァ/:E−

 獲物を見つけたら死ぬまで追い続けるほど、強い闘争本能を持っている芋虫。


イビルラーヴァ/ランク:C

 他者を殺すことや痛め付けることに愉悦を感じる芋虫。糸で獲物を生きたまま縛り付け、その悲鳴と恐怖をスパイスに捕食する。知能が高い生物はより上質な恐怖の感情を持っているので大好物。


コクーン/ランク:F+

 通常のコクーン種。ラーヴァ種の一般的な進化先。


ミュータントコクーン/ランク―

 異常進化した個体が、そのままコクーン種に進化しようとした存在。身体を再構成する際に失敗し、永遠の眠りにつく。


――――――――――――――――――――――――



 今回もまた随分と多いな、……ゲテモノも。ヒュージラーヴァは食用、ヒュージミュータントラーヴァは常に出血でスリップダメージを受けるみたいだ。さらに、ミュータントコクーンを選んでしまったら死亡って……どんな地雷物件だよ。


 取り敢えず進化するとしたら、ミミックラーヴァかプレデーションラーヴァ、イビルラーヴァのどれかだな。……それぞれの利点を考えてみよう。


 ミミックラーヴァは奇襲を掛けて暗殺するスタイルか。ステータスは低そうだが、擬態で補っているのだろう。


 次はプレデーションラーヴァだな。……コイツは素のステータスが高そうだ、ある程度の小細工は力で跳ね除けてしまえる筈。


 ……最後はイビルラーヴァか。一気にCランクまで上がるのは大きいな、……でもコイツを選んだら討伐隊とか組まれそうだ。俺は人間を殺せるのか?盗賊みたいな悪党は別として、普通の冒険者を?


 ……今回の進化は、今後の行く末を左右するだろうから慎重に選びたい。ひとまず今日は寝て、明日どれに進化するかを決めるとしよう。

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