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序章

 ……それはありふれた夏の夜だった。

 

 大学から家に帰宅する青年。彼は大学受験に失敗し、滑り止めとして受けた大学に通っていた。


 まあ、それも当然のことだ。アニメやゲームといったものにハマってしまった彼は、ろくに勉強をしなかったのだから。そしてなんとなく入学した大学でも、相変わらず怠惰な生活を続けていた。


 彼は親に罪悪感があるのか、小遣いを強請ったりはしない。金は殆ど使わずに家と大学を往復する日々。家ではいつも自分の部屋に篭り、ベッドに寝転がってスマホを弄るのが日課。大学でつくった数少ない友人とも、学外では全く関わらないほどの薄い関係しか持っていない。


 親からは『何故もっといい大学に行かなかったの』から始まり『もっと勉強しなさい』、果てには『早く家を出て行ってくれ』といったお小言を口煩く言い詰められる日々に嫌気が差していた。

 

 『もし、自分に物語に出てくる英雄みたいな力があったなら。……そうでなくともその脇役でもいいから』なんて下らない事を考えては、自分のつまらない妄想に嫌悪してしまう。

 


 橋の上に差し掛かった頃、ふと空を見上げる。薄く雲の掛かった三日月が、嘲笑うかのように見下ろしていた。


「はぁ、こんな生活でもいつまで続くだろうか?親が死んでしまったら……。ろくにバイトさえした経験のない俺は、すぐにのたれ死んでしまうんだろうな」


 そんな、ろくでもないことを呟いた彼はふと言った。


「特別なナニカを持っていれば別だが、平凡かそれ以下の俺はどうせつまらない人生を送って死んでいくんだろうな。それなら……なんにでもいいから、生まれ変わって生き直せればいいのになぁ」


《イイヨ。……丁度ボクガ管理スル世界ニモ、イイカゲン変化ガ欲シイト思ッテイタトコナンダ。セイゼイ足掻イテ、ボクノ無聊ヲ慰メラレル娯楽ヲ提供スルンダヨ。フム、簡単ニ死ンデシマッテハ面白クナイナァ。……ソウダ!助ケトナル特典ヲ付与シテヤルトシウ。失望サセテクレルナヨ……》


 その直後、彼はガードレールを突き破ってきたトラックに轢かれて吹き飛ばされた。彼の体は手摺りを超え川に落ちる。……潰されなかっただけまし?彼の体は全身の骨が折れ、手足はあらぬ方向に曲がっている。

 

 荷物を背負っていた彼が水に浮くことはない。息をしようとすると生温い川の水が入ってくる。そして暗い水底に沈み、薄れゆく意識の中で彼は思った。


 『俺は今まで十分に幸運だったんだな』……と。

登場人物紹介 序章『プロローグ』


【主人公】

 受験に失敗し、なんとなく滑り止め校に通っている大学生。変化のない日々に安心すると同時に、退屈だとも思っていた。[死因:溺死]


【???】

 主人公を異世界に転生させた張本人。分かっている情報は、異世界を管理している存在ということのみ。

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