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帯屋中編 ハッピーエンドと見せかけて……

なんとか悪役母子おとせと儀兵衛を追い出して夜になりました。

養父繁斎も仏間に向かいようやく長右衛門とお絹、夫婦二人だけの会話になりますが、長右衛門はうつむいて何も言えません。そりゃそうだよね。

「そんなに申し訳なさそうな顔をしないで下さいな、私が姑たちから苛められても我慢できるのは十年も一緒だったあなたがいるからなんですよ。それに多少の女遊びなんて男の甲斐性でしょう」

……なにこの女神。長右衛門は大量の使途不明金を出して、隣家の小娘と不倫している様な男ですよ。

「こんな馬鹿な女でも妻だと思ってくれて、お半ちゃんの事は私に黙っていてくれたんでしょう?」

段々と風向きが怪しくなってまいりました。

「愚鈍なものでも女房じゃと思うての心遣い」って、この桂川連理柵の中で断トツの知恵者のあなたが自分で言いますか。

「年端のいかぬあの子でも、もしやお前の楽しみになりもせうかと心の奉公」

もうやめてください。長右衛門の精神力がゴリゴリ削られています。

こんな事言われるくらいなら、小さい子に手を出してロリコン気持ち悪いとかの方がよっぽど気が楽です。

ただお絹さん、ホントに女神な訳で

「私だって女の端くれだもの、大事なあなたを寝取られた悔しさや嫉妬はあるのよ、でもあなたに気苦労を掛けたくないから、ひたすら夫婦円満だけを祈ってお百度参りしていました」

ここまで言われたら長右衛門も黙っている訳にはいきません。

「これだけは言わせてくれないか。百両の使い道はお絹お前の弟を助けるため。五十両を盗んだ人もわかっているが、その名前を言えば俺は親不孝者になってしまう」

なんと!今までただのダメ人間だと思っていた長右衛門の株が急上昇、爆騰です。

百両はお絹の弟の恋人が売り飛ばされるのを買い戻すため使った、五十両をおとせ母子が盗んだのも分かっているんだと。

ここで長右衛門の性格が少し分かってきました。この人優しいんです。

だいたい世間一般の優しい色男ってのは、若くて可愛い女の子にだけ優しいもんです(偏見)

一方この長右衛門は嫁の弟が愛した女の子が売られそうになっていればポンと店の金を使い、自分を散々に陥れた継母であっても攻撃しません、そう言えば石部の宿でもお半に夜這いを掛けた長吉の事を気遣っていました。

汝自らの敵を愛せ。なかなかにできる事ではありません。

しっかり者のお絹さんからすれば、私が付いていなきゃいけない人に見えるんじゃないでしょうか。

「あと、お半ちゃんとのことは……石部の宿でつい布団に入れちゃって、まだ子どもだと思ってたんだけど……ええと申し訳ないご免なさい、でもあの子もすっぱり道理が分かってくれれば、どこか余所に嫁入りすると思うんだ」

前言撤回。やっぱ長右衛門はダメ人間でした。長右衛門株再び暴落、空売りしときゃよかった。

いくら嫁さんの手前とは言え、自分が手を出した女の子にこんなこと言うかぁ。

でもこれでお絹さんは長右衛門を許してくれます。それどころか「二人で一杯呑んでこの話はもうこれっきりにしましょう」と台所におつまみを造りに行きます。何回でも言いますマジ女神。

こんな女神を妻にして浮気まで許されたのに、一人になった長右衛門は暗い眼をしています。さて。


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