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02.到着

 ――歩き続けて、どれくらいしたか。

 もうかれこれ二日は日の光に当たっていない。

 三日前だとずっと曇りが続いているだけだったんだけど、いまは土砂降り。あまり、寒さは感じないけど、服が濡れて動きにくい。

 ザーザーと雨の音が耳に残る。


 でも、どこかに雨宿りしようにも都合のいい洞窟だったり家があるわけもない。

 だからどうしたってわけじゃないけど。


 もし天気を操れたら、いますぐにでも晴れにしたいとは思う。


「あ」


 濡れる服と、びしょぬれの地面の感触を味わいながらわたしは道を進み続ける。

 それがうまいこと血の不快感を洗い流してくれることに気が付いて、ちょっとは雨もいいなと思えた。……さっきから、感情がいったりきたりで忙しい。


「まあ、でも、カトレアは――」


 だけど、行きつくところは変わらず――結局はカトレアのことばかり。

 もしかしたら、そうすることでカトレアのことを忘れたくない。足枷だと思いたくないだけかもしれない。

 そのことに気付かないわたしは、ただただカトレアを思い続ける。


 わたしは、一生カトレアのことを引きずり続けるだろう。


「大丈夫。今のわたしは、力持ちだから」


 誰に話しかけるわけでもない、むなしい独り言。

 でも、わたしは居もしないカトレアに語り掛けるように、話しを続ける。

 傍から見れば、わたしはどんな風に映ってるんだろう。……どうでもいっか。


「それより、あれは町かな?」


 歩き続けて、ようやく見えてきた街並み。

 前いたところとは違って、大きな壁はないけど、門はあるみたいで――ヒトは並んでいなかった。あんまり栄えてそうにもないけど、ヒトがいるなら、わたしにとってそれだけで価値はある。


「ふふ……」


 食事の光景を想像しただけで、お腹の音と笑みが出てしまう。

 幸い、近くに誰もいなかったからよかったけど、町中となるとちょっとだけ我慢しないといけない。


 すぐにでも食いつくしたいけど、もしかしたら『影』のことが分かるかもしれないし……わたしを刺したあの『灰色』もいるかもしれない。

 だから、しばらくは潜んで……情報を集める。

 わたしで、うまくできるかわからないけど――でも、やらないよりはずっといい。



***



 門の前まで行くと、門番に呼び止められる。


「おい、ここを通りたくば許可証か、身分証を示せ」

「……これで、いい?」


 槍と鎧を装備した青年と反対側に同じ装備をしたおじさん。

 青年は、少し強い口調で話しかけてくるのに対して、おじさんはたしなめるようにその青年へと、近づいて肩に手を置く。


「まあ、落ち着け。こんな小さな嬢ちゃんに強く当たるな。……すまないな。ここ最近、近くの街が『魔獣』に襲われたらしくてな。ピリピリしてんだ」

「そう、なんだ。それで、わたしは通ってもいいの?」

「ん、ああ。そうだったな。

 ……。冒険者だったか。なら通ってよし」


 おじさんはわたしが渡した冒険者証を見て、少しおどろいたけどあっさりと認めてくれた。

 そのことに青年は不満そうにしているけど、冒険者証を偽装することは難しくて、これさえあれば特別な許可がいる町以外には入ることができる――とカトレアが言っていた。


「……気をつけろよ、最近はなにかと物騒だし」

「そう」


 門をくぐる直前に青年が警告してくれるけど、その『物騒』はわたしなんだけどね……と思わずにはいられない。


「ふぅ、とりあえず入れた」


 これで野宿することもない。

 どこか宿を見つけて、普通に料理が食べたい。

 お金は、たんまりだし。

一体どこから資金を調達したんでしょうね?(

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