エピローグ 暴食の権化
――わたしという、餌に食いつく獲物は多かった。
適当にふらついていればわらわらと虫のように集ってくる。
それを虫けらのように食い散らかすのは、気持ちよかった。
踏みつぶして、口に放り込んで……それで。
「――はぁ……」
ため息が漏れる。
でもそれは、後ろ向きな理由からじゃない。
満足のため息。
ああ、楽しい。楽しいと思うことができている。
食べたい、満たしたい……空っぽで、なにもないわたしはただ食べることでしか満たすことを知らない。
食べて、食べて……食べつくす。
乱暴で苦手な男の人も、汚い老人も、幼い子供も。
わたしのことを「人型の魔物だ!」とか言って襲いかかる冒険者も全部、全部食べる。
怪我をしても、すぐには治らない。だけど、失った力は食べて治す。
そのうち、冒険者じゃないたくさんの人がわたしをやっつけにくる。
キラキラして、きれいな人が先頭に立って――わたしに剣を向けてくる。
一斉に向かってくる鎧の人たち。
でも、無駄。
今のわたしは空腹なんだ。
だから、黒い粒子が襲いかかるよ。
「うん、おいし」
カトレアにもらった真っ白な服は返り血で染まり、全身血なまぐさい。
でも、わたしにはこれが心地よくて……
とうとう街に食べるものがなくなってしまった。
だから、わたしは人が多そうなところを探して歩き回る。
ある村は、流行り病で苦しんでいた。
――食べる。
たくさんの欲望と、人がにぎわう王都? というところにも行ってみた。
そこには、たくさんきれいなものと汚いものがあって……食べ応えがあった。
――国が一つ、滅んだ。
ときおり、邪魔が入る。
それは、金色の雷と、灰色の剣。
うっとうしい。
ああ、うっとうしい。
そうして、わたしの旅は続く。
あてもなく、目的もなく、ただおいしいものを食べるだけの……そんな旅路。
世界を渡り歩いて……わたしは、食べつくす。
この世の果てまで、ずっと。
終わりませんよ?
次章から視点が変わるけど




