14.物色
「こんなところかしらねえ」
カトレアが魂を取り込み抜け殻となった死体を埋めて、一汗かいたと額を拭う。
実際は魔術で地面に穴をあけて放り込んだだけなんだけど。
……わたしが食べれば、跡形もなく綺麗にすることができるんだけど、魂がないせいなのか『影』ほどではないにしろ吐き気がするくらいにはおいしくなかった。
だからこうして、勿体ない気もするけど埋めることしかできないんだ。
「じゃあ、改めて街へ向かう――前に、馬車の中身を改めましょうか」
「いいの? そんなこと」
「いいのよ。街の外は危険でいっぱい。だから持ち主が不明の落とし物なんてよっぽどの物じゃない限り見つけた人の自由なのよ」
「へぇー」
というわけで、商人の乗っていた馬車の中を漁ることに。
馬車には、食べ物や服……わたしが着ていたようなぼろ布や首輪があった。
檻や、鎖があるということは本当に捕まえる気だったみたい。
持っていくものはカトレアに任せて、わたしはとりあえず中の物を外に出していく。
価値がよく分からないわたしだけど、カトレアがうれしそうにしているということは相当稼いでいたということなのだろうか。
「あら?」
「? どうしたの」
「いえ……珍しいものを見つけてね。魔道具よ」
「魔道具?」
カトレアが手にしていたのは、二つの指輪で……赤い宝石と青い宝石がそれぞれ取り付けられており、銀色のシンプルなものだった。
「ええ、不思議な力を宿した特別なアイテムのことでね……効果は、赤いほうは『致命回避』で青いほうは『疲労軽減』ね。よかったら使う?」
「うーん……別に、要らないかな。どっちもカトレアが使えばいいと思う」
「そう? でも、私も正直必要ないのよね。とくに致命回避のほうの指輪は、自分でなんとかできるし……疲労軽減も、私って体を動かすことって少ないし。むしろ、空腹になりやすくて、死んでも生き返れないアイリスちゃんが持っているべきじゃないかしら?」
「……そこまで言うなら……」
といって、カトレアから指輪を受け取り右手の人差し指と中指にはめる。
あまりこれといった変化は感じ取れないけど、これでいいんだろうか? それと、大体の物は取り出したので、漁るのはここまでだ。
「じゃ、行きましょうか。もうここには用はないわ」
「うん。荷物たくさんだけど、大丈夫なの?」
「大丈夫よ。これも魔道具だしね」
そう言うと軽々しくリュックを背負ってみせる。
結構詰めたはずなのに、詰める前と変わってないように見えるので本当のことだと思う。
重いならわたしも、と思ったけどその必要はないみたいだ。
***
馬車から離れて、かなり時間が経ったときのことだった。
平地で、見渡す限り何もない景色だったものから、屋根と街を守る壁が見え始めた。
まだ、距離はあるけどもうすぐ目の前と言ってもいいだろう。
この距離でも大きく見えるので、かなり大きい街なのだとうかがえる。
ようやく森から人里へと辿りつくことができたのだった。