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幕間 カトレア①

三人称は書きやすい


 ――アイリスが眠っている。

 胸に大穴が空いていたというのに、すやすやと子どものように眠りこけている。

 しかし、あの忌まわしき竜の一体――『影爪えいそう』によって開けられた胸の穴は、すっかり綺麗に修復されている。


「はぁ……狙いは、【暴食】だけか……」


 アイリスを殺したことを確認すると、『影爪』はどこかへ去っていった。

 けれど、その後カトレアが、駆け寄った時には、血が心臓の形を作って体の修復を開始していた。

 【暴食】の力かと初めは思った。

 でも、【色欲】の力である『魂を掌握する』力によればアイリスの魂はすでにそこになかった。

 だというのに、生きていた。


「不思議ねえ」


 血に塗れているというのに、穏やかにアイリスの頭を撫でるカトレア。

 【暴食】の力は魂に宿るものだ。

 だから、あの回復力はそれによるものではない。


「まあ、気にしても仕方ないわよね」


 アイリスが生きていればそれでいい。

 そう考えて、今までの思考を放棄する。

 ……カトレアの目的のためには、【暴食】の力は絶対に必要だから。

 それに、この子はかわいい。ぜひ、生きていてほしい。

 心のすみでそんなことを願う。


 カトレアにとって、少女の存在は一緒に過ごした時間に関わらず、出会ったときから大きな存在なのだ。

 だから、命がけで守るし、助ける。

 それこそ、カトレアが今を生きる目的なのだから。


 かわいいし……目の保養になる。

 ぼろぼろの布から覗く白い肢体に、軽くウェーブのかかった白い髪。赤い目は、血の色のようで魅入られてしまう。

 カトレアは女の子が好きだ。とくにかわいい女の子は。


「ふふっ、それに食べられるってのは案外……いいものなのよ?」


 理解は……してもらえないだろう。まあ、理解できないといったあの表情を見れることと、この感情を理解してもらえることを天秤にかけると、確実に前者に傾いてしまうが。


 『死』を超越してしまったがゆえに『生』を実感できない今のカトレアにはあれほど、間近で生きていることを感じられる経験はなかった。


 食べることは生きること。それを体現しているのが、この少女……アイリスだった。

 惑わした魂の数だけ、命をストックすることができる。


 それに、命を削る(・・・・)ことで魔術の威力も底上げすることができたりと……【色欲】の力とはどこまでも自己中心的で、他人なんて利用できて自分の欲を満たすための道具でしかないということをとことん突き詰めたような代物だ。



「はぁ……こんなくっだらない世界、全部ぶっ壊してしまいましょう? ええ、あなたと私の二人ならできるわ。きっとね?」


 吐息混じりに秘めた心の内側を吐露する。

 今はまだ明かせないけど……いつか絶対、協力してもらうためにたくさんお世話しよう。たくさん、食べさせて育てよう。

 だから、それまでどうか死なないで……。


 カトレアは、頭を撫でる。

カトレアとアイリスちゃんの相性は抜群ですよ。色んな意味で

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