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9 聚楽第行楽

昨日テレ朝で戦国大名総選挙なるものが放送されてましたがそもそも戦国大名の定義がむちゃくちゃじゃんと思いました。

長宗我部も三好も入ってないのはマジで台パンしてしまいました。

やっぱこういうのはNHKが1番ですね。

天正16年、聚楽第にて後陽成天皇の行楽が行われることになりそれに俺の父上も呼ばれることになった。

そこで俺は半右衛門と利宗と共に父上を迎えに行くことになった。

辰之助改めて秀俊も父上に会いたいとせがんだのだが彼自身も行列に参加するための準備があるので母上に呼び止められた。

港に俺たちが着くとまもなく巨大な長宗我部が誇る大黒丸がやって来た。


「おお、千王丸!」


「父上!」


俺は我を忘れ父上に抱きついてしまった。


「お会いしとうございました!」


今までの寂しさが込み上げて泣いてしまった。


「すまぬ、千王丸……。大坂には慣れたか?」


「はっ、殿下や北政所様を始め皆様のおかげで快適な生活を送れております。父上の方もお元気そうで。」


兄上が死んで少し覇気が無くなったとはいえ元気そうだ。

とりあえず安心した。


「そうか、それでそちらが義兄上殿の嫡子か。」


「はっ!斎藤利宗でござる。」


「うむ、半右衛門も元気そうじゃな。一度土佐に戻り隼人の墓に参るが良い。」


「ははっ。ご配慮頂き恐れ多きことにございます。」


「ともかく今日はお主らに会えて良かった。今井宗久殿が我らを持て成してくれる故お主も着いてこい。」


「ははっ!ところで兄上は?」


「ああ、千熊丸なら少し船酔いして休んでおる。長宗我部の跡継ぎなのに情けないのう。」


「それをお支えするのが私の役目です。」


「口だけは変わってないな。」


そう言って少し青ざめた顔で盛親がやって来た。

相変わらず腹立つ言い方だな。


「これは飛んだご無礼を。兄上もお元気そうで。」


「これのどこが元気に見える!腹の立つ奴じゃ!」


「やめぬか、千熊丸。千王丸がどれだけ辛い思いをしていたかお主には分かるまい。」


その夜、今井宗久のもてなしを受けた俺たちは翌日秀吉に挨拶するために大坂城に出向いた。

ちょくちょく秀吉には会ってたがやはり緊張する。

俺たちを増田長盛が城門まで出迎えてくれた。


「土佐侍従殿がいらっしゃいました。」


増田が秀吉に言うと秀吉が出てきた。

俺たちは平伏した。


「土佐侍従、遠路はるばるご苦労であった。千王丸とは親子水入らずの時を過ごせたか?」


「ははっ。殿下のご配慮のおかげで久々に実りのある時間を過ごせました。」


「そうか、なら良かったわ。ところで隣の小僧は?」


「4男の千熊丸でございます。亡き信親の娘を嫁がせ後継者と致しました。」


「4男?次男と三男はどうした?」


「次男は病で死に三男は他家に養子に出しておりますので。」


「そうか、ならここにいる長盛を烏帽子親として元服させよ。名前はそうじゃ、盛親にしよう!」


「おお、盛親ですか。良き名でございます。」


「で、千王丸はどうするのじゃ。いずれ嫁を決めなければならぬ。」


「それはまだちと早いかと……。」


今だ、今しか言うチャンスはない!


「おっ、恐れながら!私は細川丹後侍従殿の姫を頂きとうございます。」


「丹後侍従じゃと!?」


秀吉は一瞬で意味を理解したようだ。

同様に父上もなんて事を……って顔をしてる。


「おめえ、それがどういうことか分かってるか?」


「足利幕府に仕えた名門の細川家と土岐家の血筋を持つ姫が頂きたいのです。盛親兄上が信親兄上の娘と婚儀を行ったのなら名家の血を長宗我部に入れるにはそうするしかないと考えました。」


「うーむ、丹後侍従が首を縦に振るかは分からんがワシは良いぞ!」


やっぱフッ軽だ!

それに母上のおかげで最近、秀吉は俺の事をめっちゃ可愛がってくれる。


「で、殿下がそう仰せならわしも構いませぬが……。」


父上は冷や汗を流している。

盛親の方はつまらなさそうだな。

まあとりあえずミッションクリアだ。

あとは忠興の許可を得るだけ。


「ただし、わしの馬廻りとなってからじゃ。忠興を烏帽子親に元服すると良い。」


「恐悦至極に存じ奉りまする。」


俺が感謝して頭を下げると父上も続く。


「じゃあ明日、京でな。千王丸は秀俊に着いてやれ。」


「えっ?秀俊様ですか!?」


父上が驚いて聞く。


「うむ、秀俊が千王丸を大いに気に入っておっての。そなたは跡継ぎの盛親を連れていけば良い。」


「ははっ!」


んー、あいつの家来として行くのかー。

まあ出れるだけ感謝だな。


廊下に出たあと、父上は俺を怒らなかった。

呆れているのか正しいと思ってるのかは分からないが俺は父上たちと別れ母上の屋敷に戻ろうとした。

すると盛親が追いかけてきた。


「お前あまり図に乗るなよ!」


そう言って盛親が俺の顔面にグーパンを喰らわせる。


「なんだと!兄とはいえ許せぬ!」


俺は盛親にタックルする。

とはいえ体格は盛親の方がでかいので逆に押し返された。


「殿下の前で大口を叩き父上を困らせたな!貴様など長宗我部の恥じゃ!」


馬乗りになった盛親は俺を何度も殴る。


「何とでも言え!全てはお家の為じゃ!」


「黙れ、黙れ黙れェ!」


「何も変わってねえじゃねえか!」


俺は盛親を押し返し懐からリボルバーを取り出す。


「きっ、貴様!」


「ワシは全て長宗我部のためを考えて行動しています。少なくとも兄上よりは。」


俺はそう言いながら銃をしまい半右衛門達と共に走って逃げていった。

さすがに弟に銃を向けられてびびったのか盛親は追いかけてこなかった。

そして屋敷に辿り着いた時にはヘトヘトになっていた。


「ちょっと、千王丸……!どうしたの!辰之助、水と手ぬぐい持ってきて!」


血だらけになった俺を見た母上はすぐに手当をしてくれた。

そのおかげですぐに痛みは引いたがそれよりも盛親があそこまで短気なのに腹が立った。


「なぁ、千王丸……。」


悔しくて泣く俺に秀俊が話しかけてくる。


「悔しいのはわかるが明日は早いから早く寝ろ。とびきり目立ってお前のバカ兄貴を見返してやろうぜ。」


そう言って秀俊は南蛮製の甲冑を差し出してくれた。


「ふん!おもしれぇ!」


俺は布団から顔を出して涙を拭ってそれを受け取った。


翌日……。

京の町衆達はみんな俺たちを指さしてザワザワしていた。

俺と秀俊は金ピカの南蛮製の甲冑に真っ赤なマントを身に付けまるでかつての織田信長の様な風貌で京を歩いた。

これを見た秀吉は大喜び。

豊臣家の後継者の威光を知らしめたとして俺と秀俊に褒美を沢山くれた。

さらに公家たちは秀俊宛に誓書を出したので親友の俺も鼻が高かった。

こうしてパフォーマンスは大成功に終わり悔しがる盛親の顔を浮かべニヤニヤしながら俺と秀俊は京の町を散歩していた。


「なぁ、お前ここに来たことがあるのか?なんか知ってる風に歩いてるが。」


ええ、昔ここに住んでましたから!


「そっ、そうか?1度来てみたいと思っていたからだよ。」


「ふーん。にしてもお前のバカ兄貴だけでなく叔父上(秀長)も秀次様も内府(織田信雄)もびっくりしてたな。」


「ああ、お前天才だよ。」


「父上は目立ちたがり屋だからな。喜ぶことがわかるんだよ!」


なるほど、この時点で秀俊は秀吉のことが好きだったんだな……。

先のことを考えると少し悲しくなる。

少し俯きながら歩いていると聞き覚えのある声が聞こえた。


「おい、蝙蝠小僧!俺の娘が欲しいらしいな!」


「これは丹後侍従殿。お耳が早いようで。」


「殿下から昨日聞いたのじゃ。どうせ舅殿の血が欲しいのだろ?くれてやるさ。」


えっ?軽くね?


「よっ、よろしいのですか?」


「構わん。俺も長宗我部との繋がりはあって損がないからな。元服したら忠の字もやろう。

忠親でどうだ?」


「良いじゃないか、千王丸。」


秀俊が肩を叩く。


「有り難き幸せでござる。舅殿。」


それを聞くと忠興はニヤッと笑い


「泣かせたら殺すからな。では侍従様、ワシはこれにて。」


忠興は秀俊に一礼すると馬に乗って駆けて行った。


「まだとは言えお前も名を改めて良き機会じゃ。明日は宴を開こう!」


秀俊が嬉しそうに言う。

俺たちは笑いながら帰り道を遠回りせずに屋敷を目指した。


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