5 雑賀衆からの贈り物
よく考えたら人質は大坂じゃね?
翌日、仁右衛門との手合せをするため俺は城の庭に出た。
「では早速お手合わせ願おうか。」
そう言って仁右衛門が木刀を投げる。
現代では武道も運動もクソもないがこの世界に来てからは兄上や隼人から武道全般を習ってたんだ。
負ける訳には行かない。
「覚悟!」
そう言って仁右衛門が刀を振りかざしてくる。
俺はそれを後ろに下がって避けると抜刀の姿勢に入った。
これぞまさに緋〇〇刀斎の飛〇御〇流じゃ!
俺は仁右衛門の隙を見逃さず腹に1発喰らわせた。
「ぐぁぁぁぁぁっ!」
仁右衛門が悲鳴をあげて崩れ落ちる。
こいつ年上なのに弱いな。
「ほっほっほっ!見事な一撃じゃな。流石は宮内少輔殿のご子息じゃ。」
それを見た高虎殿が笑いながら満足そうに言う。
「それよりお主が喜びそうな男を連れてきた。鈴木孫市じゃ。」
孫市!?もしかして雑賀衆の孫市か?
「鈴木孫市でございます。以前千王丸様の兄上より鉄砲を送らせて頂きました。」
「ああ、あの鉄砲の……。その節は世話になり申した。」
「それでな、千王丸殿。この者をお主につけるゆえ鉄砲の全てを学ばれるが良い。」
「人質の私がそのようなことをしても?」
「人質とはいえお主はもはや家族同然。これくらい当たり前じゃ。」
高虎殿の優しさに俺は目をうるうるさせながら感謝した。
「孫市は全ての武道に通じておる故仁右衛門もこの者より色々と学ぶと良い。ではワシは宰相様に呼ばれておるので。」
高虎殿が去っていくと孫市が早速鉄砲を持ってきてくれた。
「以前お送りしたものと同じ型でござる。最も扱いやすく普及しております。」
「しかし孫市よ。これでは肩に銃を当てられず狙いづらいでは無いか。」
前の小説でもストックつけたしレプリカの鉄砲は何度も持ったことがあるがやはり使いにくい。
「それに照準器も小さすぎる。もう少し大きくしたら良かろう。」
「なるほど、作ってみましょう。それからお近付きの印にこちらを。」
孫市は小型の鉄砲を手渡ししてくれた。
子供の俺にも扱いやすいように軽く設計されている。(とはいえ子供にはやはり重い。)
というかこれリボルバーじゃね?
「南蛮の者より手に入れた珍しき銃でござる。ここの部分が引き金を引くと回転して弾を撃ちだします。発射方式も扱いやすく連続で撃てるのでお喜びになるかと。」
この時代でもこんな感じの銃があるんだと感心しながら俺はシリンダーを回した。
これで昔モデルガンぶち壊したの忘れてた……。
「では早速撃ってみるか。」
そう言って俺は射撃場に向かい弾を装填してハンマーを引いた。
照準で的に狙いを定め引き金を引く。
肩に反動が走りリボルバーが跳ね上がる。
「おお、見事に命中しましたな。流石千王丸様でございますな。」
弾丸は見事に的の中央を貫いていた。
仁右衛門は口をポカーンと空けて驚いている。
「仁右衛門殿もやるか?」
「いや、私は遠慮しておこう……。」
にしても肩痛てぇ。
やっぱ体は5歳なんだなよな……。
そして仁右衛門と稽古をしたり藤堂殿から軍略などの学問を学び半年が経った。
藤堂殿も紀伊での仕事が終わり大坂城の屋敷に移ったので俺もそれについて行くことになった。
「またどこかで会えるまで死ぬでないぞ。」
「お前こそな、仁右衛門。」
すっかり仲良くなった仁右衛門に別れを告げ藤堂殿と俺たちの一向は大坂城へ向かった。
「紀伊での暮らしはどうだったかな?」
「藤堂殿や仁右衛門のおかげで良き日々が過ごせました。かたじけのうございます。」
「そうか、なら良かった。大坂にはお主と同じくらいの年頃の大名の子が多くいるであろうから安心致せ。」
「今から会えるのが楽しみでございます。」
これから出会うであろう未来の将達に思いを馳せながら俺は大坂城への道を歩いた。