49 集結
実はこの前にもう1話あるのですが完全に消えてしまい書いたのも2ヶ月くらい前なので忘れやした。
1週間後、家光軍の出陣の知らせを受けた忠長は大坂城に諸大名を集めた。
「皆の者、よう集まってくれた!臆病者の兄とは違い余はお主らに戦を丸投げするつもりは無い!余が総大将を務め逆賊を討ち果たすぞ!本隊は東海道を進み先鋒は前田殿と水野殿、福島殿に任せる!」
「おう!」
3人が威勢よく応える。
「九鬼殿は長宗我部殿の別働隊と共に海路より江戸を目指せ!越前殿、京極殿、有馬殿は越後を落としそのまま南下せよ!」
「ははっ!」
「東山道は織田内府殿、丹羽殿、羽柴殿、宇喜多殿、仙石殿らに任せる!」
「承知!」
織田信雄は秀吉に追放されてから隠居していたが嫁が孫の忠長に呼ばれ内大臣に復帰し美濃を代理で統治していた。
「残る長宗我部殿、毛利殿、島津殿、立花殿、黒田殿、細川殿ら西国勢は余の本隊に加われ!」
「ははーっ!」
「それでは皆の者、出陣じゃ!」
とても力強い声で忠長は拳を振り上げた。
「父上じゃ……父上にそっくりじゃ。」
隣いた信雄がそう漏らしていた。
やっぱ信長に似てるんだな。
大坂城を出立した俺たち本隊は岐阜城、名古屋城を超え三河に侵攻した。
水野勝成らの奮戦によりあっという間に三河は陥落、そのまま先鋒隊は遠江の家光軍も制圧した。
「やはり経験の差が出ていますな。前田殿はともかく水野殿と福島殿にそんじょそこらの武将じゃ勝ち目はありませぬ。」
本陣にて地図を眺めながら正純が言う。
「当たり前だろう。現代どころか戦国を通してあそこまでの猛将はなかなかおらぬぞ。」
いやまじであの二人はチートだからね。
特に水野勝成は。
「上杉と佐竹はどうだ?」
「どちらもこちらの味方になると言ってくれました。こちらが江戸勢を破れば呼応して攻め込んでくれるそうです。」
そう俺が説明すると忠長は嬉しそうな顔をしている。
「申し上げます!北陸勢、越後を制圧。信濃を経由して上野に入るそうです。」
「うむ、ご苦労。東山道の方は?」
「現在木曽付近にて保科正光率いる江戸勢と交戦中とのこと。」
「保科正光か……。強敵だな。」
保科正光は元は武田勝頼の家臣である。あっち側の数少ない戦国を知る勇将だ。
「ご安心くだされ。丹羽殿と宇喜多殿の所に戦上手の明石が戻っているそうなので。」
「先鋒隊より報告、敵勢を富士川以東にて確認!攻撃すべきかと。」
「どうするべきじゃ中納言殿。」
「ここは迎え撃ちましょう。川を挟んでの戦いなら島津殿が得意ですので。」
対する江戸側は……。
「ここは先手を打ち先発隊を壊滅させれば味方の士気も上がるというもの!」
「馬鹿め!川を渡れば敵の的になるわ!こちらが迎え撃つべきじゃ!」
渡河をするべきという真田信之と迎え撃つべきという伊達政宗で意見が割れていた。
ほかの武将は大半がこういう戦いを知らないので黙ってそれを見ている。
「戸次川の戦いをそなたは知らんのか?ノコノコと渡ればあれと同じ事になるぞ。」
「あの戦では島津軍が豊臣軍の倍以上の兵力だった。しかし今回はわれらは12万、向こうの先鋒は1万程度。何を恐れておる!」
「伏兵がおるかもしれんではないか!それでは弟の左衛門佐の足元にも及ばんな。」
「くっ……。」
政宗の煽りを信之は必死に耐えた。
元々大胆な政宗と慎重な信之は馬が合わなかったのだが2人の対立は深刻な問題だった。
「土井殿、ここは迎撃の準備を!」
「ははっ!全軍、迎撃の準備を始めよ!」
ボケがよぉ……。
そう思いながら信之も防衛体制を取り始めた。
「はっはっはっ!連中我らに恐れを成して攻めてこんではないか!」
福島正則は満面の笑みで言う。
「かと言ってこのまま攻める訳にはいかねえだろ。」
と案外冷静な水野勝成。
「じゃあ本隊待つか?」
「ちょっかい掛けて敵にチクチク被害与えようぜ。」
「なら俺に任せてくれ。杭瀬川の要領でやってくらあ。」
そう言って福島勢四千が動き始めた。